魚卵は鳥に食べられても生きたまま糞から出てくると判明! 魚は糞によって別の湖に移動していた

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鳥に食べられることで植物の種のように、の卵は別の湖に拡散する/Credit:PNAS
point
  • の卵は鳥に食べられても生きたまま糞と一緒に排出される
  • 排出された卵を育てたら稚がうまれた
  • 鳥はを別の湖に運ぶ箱舟だった

植物の実が鳥に食べられて、種を遠くに運ぶことはよく知られています。

しかし新たにハンガリーで行われた研究では、の卵もまた、鳥に食べられることで別の湖に運ばれることが示唆されました。

鳥に大量の卵を食べさせる実験を行った結果、の卵は鳥の消化機能を生き延び、糞として排出された後に孵化することが確認されたのです。

食べられたの卵が特殊だったのか、鳥の消化機能が「ガバガバ」だったのか……いったいどうしてこんなことが起きたのでしょうか?

完全に外部から孤立した湖に住んでいるたちの謎

標高の高い位置にある、完全に孤立したカルデラ湖やクレーター湖にはどうやってやってきたのだろうか?/Credit:depositphotos  National Park, Oregon, United States

淡水湖の生態系を調べている研究者にとって、孤立した湖に存在するの存在は長い間、謎でした。

特に標高の高い場所にあり、他の湖と川で繋がっていないカルデラ湖のような湖は、外部からが侵入する余地はありません。

しかしどんなに孤立した湖にも、近くの淡水系と遺伝的に近いが住み着いています。

これまでは、そのような「不思議な拡散」は鳥が咥えていたを落としたり、足や羽に付着した卵が水鳥によって空輸されるなど、イレギュラーの結果であると考えられていました。

ですがハンガリー、ドナウ研究所に勤めるÁdámLovas-Kiss氏は既存の説に納得できませんでした。

これらの説はいわゆる俗説であり、どれ一つとして科学的に証明されたものではなかったからです。

そこでÁdámLovas-Kiss氏は、植物の種の拡散を模倣した、独自の仮説を構築しました。

すなわち、の卵も植物の種のように、鳥に食べられることで他の湖に拡散している…とするユニークな説です。

しかし問題は、どうやってそれを証明するかでした。

鳥に卵を食べさせる

仮説を証明するには鳥に卵を食べさせ糞を探せばいい/Credit:PNAS

仮説の証明にあたり、ÁdámLovas-Kiss氏は最もシンプルな方法を試みました。

の卵を500個集め、8羽のカモに食べさせたのです。

食べさせた卵は侵略的外来種として知られている2種類のコイ科の(ギベリオブナとヨーロッパ鯉)であり、全て人工受精後に食べさせました。

そしてカモが糞をするのを待ちました。

幸い、予想より早く食後一時間ほどで糞が排出されはじめます。

ÁdámLovas-Kiss氏はさっそく糞から卵を探す作業を開始しました。

結果6匹のカモから18個の形状的に無傷な卵の採取に成功し、そのうち12個は十分生存に足る状態にあることがわかります。

また興味深いことに、オス鳥はメスより多く無傷な卵を通したことがわかりました(メスの5倍)。

ÁdámLovas-Kiss氏は集めた12個の卵を孵化チャンバーに移し、成長を促しました。

すると、12個の卵のうち2個から稚がうまれてきました。

2匹のうち1匹はギベリオブナで、もう1匹はヨーロッパ鯉の稚であり、生存率を計算したところ0.2%であることがわかりました。

この数値は決して高くはありませんが、長い時間を考えれば、孤立した湖に卵を運ぶには十分な数値です。

また一部のコイは単為生殖を行うことが知られており、1匹のメスの稚から多くの子孫をうみだすことが可能とされています。

食べられることで繁殖する能力は卵の耐久力が進化した結果

メダカの卵。メダカやコイは分厚い卵膜をもっており、干ばつや天敵の消化液から卵を守ってくれる/Credit:jstage

今回の研究により、食べられることで繁殖する能力が、脊椎動物でも確認されました。

鳥の体(消化器官)はの卵を湖から他の湖に運ぶ箱舟としても機能していたのです。

ですがこの拡散の貢献度は鳥だけにあるものではありません。

近年の研究により、メダカなどの卵は、休眠状態(仮死状態)に入ることで干ばつの間にも無酸素・高塩・乾燥に耐えて土に埋まったまま生き延びることが知られており、以前考えられていたより遥かに高い耐久性を持つことが明らかになりました。

コイの卵が鳥の消化機能における無酸素と高酸性を生き延びて生きたまま排出されたのも、卵の耐久性があってのことなのです。

あるいは、生息地を拡散するために、コイの卵はあえて鳥類に食べられることを前提に進化したと考えることもできます。

そうなれば、コイの卵はカモに短期間・限定条件で寄生していたと考えることもできます。

もしかしたらコイの卵とカモは共生関係にあるといえるかもしれませんね。

研究内容はハンガリー、ドナウ研究所のÁdámLovas-Kiss氏らによってまとめられ、5月27日に学術雑誌「PNAS」に掲載されました。

Experimental evidence of dispersal of invasive cyprinid eggs inside migratory waterfowl
https://www.pnas.org/content/early/2020/06/17/2004805117

フンコロガシが糞を目的地へ運べるのは「月の光」の偏光のおかげだった

reference: buradabiliyorum / written by katsu
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