SFに定番のケイ素生命は存在するのか? 研究者が真剣に検証してみた

space 2020/06/28
宇宙生命と出会うスタートレックの1シーン。/Credit:Viacom CBS
point
  • SFの定番、ケイ素生命の可能性を検証する論文がMITの研究者より発表された
  • ケイ素は炭素同様、原子価4で多様な化合物を作るため生命のベースとして着目される
  • 研究は、ケイ素は溶解させる条件の難しさから、生命になる可能性は低いと結論している

地球以外にも宇宙には生命が存在するのでしょうか?

宇宙に目を向けたとき、多くの人々関心はそこに向けられます。

しかし、数々の研究が地球環境がいかに特別なものであり、生命体が宇宙ではいかに珍しいかということを明らかにするばかりで、一向に生命が生活できそうな環境は見つかりません。

こうした状況でよく耳にする意見が、私たちはたまたま地球環境に生まれたからこのような生命なだけで、異なる環境の惑星には、そこに適応した新種の生命がいるんじゃないか? というものです。

地球生命は基本的に炭素をベースに作られています。しかし、「何も生命を考えるとき常に炭素をベースにする必要はないじゃないか」というわけです。

そうした考え方を反映するように、SF作品にもさまざまなタイプの宇宙生命が登場します。

中でも代表的なものがケイ素を主体として誕生したケイ素生命体です。

しかし、MIT(マサチューセッツ工科大学)の科学者による分析の結果、ケイ素生命はやはりありそうもない、という残念な論文が発表されました。

なぜケイ素なのか?

シリコンインゴット。/Credit:depositphotos

ケイ素生命体はSFではわりと鉄板の設定で、海外のSF小説を始め、日本の漫画やアニメ作品でも多く登場します。

炭素に変わる生命のベースとして、ケイ素がもてはやされる理由はなんでしょうか?

炭素が生命のベースになるのは、その化学的な多様性です。

炭素は原子価が4つあり、さまざまな結合を行うことが可能です。そのため、生命のような複雑な有機物の高分子も生み出すことができます。

ケイ素が注目されるのは、ケイ素も炭素と同族であり原子価が4つあるためです。このことから、ケイ素でも炭素同様に生命となる高分子が生み出せるのではないかと考えられたのです。

ケイ素は基本的に地上では二酸化ケイ素などの鉱物の形態をとります。二酸化ケイ素の結晶は石英が有名です。学校のグラウンドなどにも欠片が落ちているので、見つけたことのある人は多いでしょう。

一方でケイ素は、シリコンゴムのような有機高分子も人工的に作り出すことができます。

このため、炭素生物に変わるケイ素生物がいてもおかしくはないのでは? という考えが生まれたのです。

ケイ素生命を有名にしたのは、SF作家のアイザック・アシモフです。彼は自身の短編『もの言う石』の中で、ケイ素生命体を登場させています。

ケイ素生命のイメージとして一般的なのは、岩石のような体で、原子量が増えるため動きが緩慢、高熱の惑星でも生活が可能、といったものです。

そして、空想の中で語られることの多かった、このケイ素生命体の可能性について、包括的な評価を行ったのが今回の研究です。

ケイ素生命は妥当なのか?

化学反応とは、溶けて融合することだと言いかえることができます。

ケイ素は多様な化学変化を起こしますが、果たして自然の中でそれほど多様に化学反応できるのでしょうか?

簡潔にいえば、現実的とは言えません。

有機ケイ素化合物は、自然の中ではあまり多くなく、水中や酸素の豊富な環境では、ケイ素は素早くケイ酸塩の岩石を形成してしまうため、生命に変化することはほぼありえません

しかし、今回問題にしているのは地球とは異なる環境の生命誕生の可能性なので、もっと極端な環境ではどうなのか、考えてみましょう。

タイタン表面のイメージ。/Credit:ESA ,D. Ducros

土星の衛星タイタンのように、酸素よりも炭素が多く非常に冷たい環境ではどうでしょうか?

研究の結果、炭化水素系溶剤はケイ素の溶解に適していることがわかりました。タイタンの表面にはこれに適した液体メタンがあります。

しかし、液体メタンは超低温で、この環境ではどんな化合物でも溶解することが難しくなります。こうなると、タイタンのような低温環境はケイ素生命誕生には不利になってしまいます

高熱の環境ならばどうでしょうか? ケイ素生命はケイ酸塩の岩石に生息する微生物という仮定もされています。

しかし、こうした高熱環境ではケイ素と酸素の結合が壊れてしまうため、やはり化学的にうまくいくとは考えづらいでしょう。

唯一、研究者たちの見つけたケイ素生命をサポートしそうな存在が「硫酸」です。

硫酸は少なくとも理論的には、有機ケイ素の化学的な多様性を引き出すことが可能なようです。

このため、もしケイ素を構成要素とする生命がいるとすれば、彼らは金星の雲や、木星の衛星イオの地下のような硫酸の多い場所に魅力を感じるかもしれません。

なんにせよ、ケイ素は複雑な化合物を生み出すことが可能ではありますが、自然の中ではそれを溶解させる条件を満たすことが炭素に比べて非常に難しいところがネックになります。

研究はさまざまな組み合わせで可能性を探りましたが、ケイ素生命の存在は難しいと言うほかないようです。

真面目に検証した結果、可能性が低いということになりましたが、広い宇宙に、地球生命とは全く異なる形態の理解を超越した生物がいるという空想は止めようがないでしょう。

いつかそんな生命を見てみたいものです。

この研究は、マサチューセッツ工科大学の研究者チームにより発表され、論文は生命科学をテーマにしたオープンアクセスの査読付き科学雑誌『Life』に6月10日付けで公開されています。

On the Potential of Silicon as a Building Block for Life
https://www.mdpi.com/2075-1729/10/6/84/htm

観測可能な宇宙に地球外生命は存在しない? 新しい現実的な生命誕生シナリオが発表される

reference: airspacemag / written by KAIN
ナゾロジーは皆さんの身近にある”素朴な疑問”を解決する科学情報メディアです。
最新の科学技術やおもしろ実験、不思議な生き物を通して、みなさんにワクワクする気持ちを感じてもらいたいと思っています。
Nazologyについて
記事一覧へ
あわせて読みたい

SHARE

TAG