アンモナイトはかつて「魔法石」として重宝されていた

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先端にヘビの顔が彫られたアンモナイトの化石/Credit: nhm

アンモナイトは、およそ4億年前〜恐竜絶滅の6600万年前まで生きた海洋生物です。

イカやタコの仲間である頭足類に属していましたが、生きた姿よりも化石として残った姿が有名でしょう。

アンモナイトの化石は世界各地で見つかっており、その幾何学的な美しさは、古来より人類の想像力をかきたて、数々の伝承を生み出してきました。

人類にとってアンモナイトは、科学的な探求の対象となる以前に、魔力や薬効を持つ不思議な石だったのです。

「アンモナイト」という名前は神話から生まれた

そもそも「アンモナイト」という名前自体が神話に由来しています。

うずまき状の見た目がギリシア神話の神アンモーンの羊の角に似ていることから、最初は「アンモーンの角」と呼ばれていました。

その後、「アンモーン(Ammon)」に石を意味する「〜ナイト(ite)」をくっつけて、「アンモナイト(ammonite)」となったのです。

羊の角を持つ「アンモーン」の彫像/Credit: ja.wikipedia

古代のギリシアやローマでは、アンモナイトに特殊な力が備わっており、失明や不妊症、不能症に効果があると信じられていました。

またローマ人は「アンモナイトを枕の下に置いて寝れば、自分の未来が予知できる」と考えていたそうです。

「抜けた歯を枕の下に入れておくと、妖精がやってきてコインと交換してくれる」という欧米の伝承に似ていますね。

アンモナイトは「ヘビよけ」に使われた

アンモナイトにまつわる伝承で最も多いのが、「ヘビよけ・ヘビ退治」です。

中世以前のイングランドでは、アンモナイトがとぐろを巻くヘビに似ていることから「スネークストーン(蛇石)」と呼んでいました。よりヘビに近づけるため、アンモナイトの先端にヘビの顔を彫ったりもしています。

先端にヘビの顔を彫ったアンモナイト/Credit: nhm.ac.uk

例えば、ヨークシャー州のホイットビーには「聖ヒルダのヘビよけ呪文」という伝承があります。

7世紀ごろ、ホイットビーの地に修道院を建てることになった聖ヒルダ(614〜680)は、この地に蔓延していたヘビを退治しなければなりませんでした。

初期キリスト教時代において、ヘビは悪魔と結びつく生き物とされていたので、新しい建物を建てる際は必ずヘビの駆除が必要だったのです。

そこで聖ヒルダはヘビを石に変える呪文を唱え、すべて崖から落としました。それがアンモナイトになったのです。

この伝承からホイットビーでは、アンモナイトにはヘビよけの効果があると後世に言い伝えられました。

聖ヒルダの彫像/Credit: nhm.ac.uk

冠婚葬祭、多産祈願、お守りに。万能なアンモナイト

ヒンドゥー教文化において、アンモナイトはヴィシュヌ神の化身として崇められています。

人々はこれを「シャーラグラーマ」と呼び、ヴィシュヌ神を祀る寺院や家庭には必ず置いてあります。家宝として代々受け継がれ、主に冠婚葬祭に用いられました。

ヴィシュヌ神/Credit: ja.wikipedia

北アメリカの先住民ブラックフット族の間では、眠っているバイソンに見えることから「バッファローストーン」と呼ばれます。バイソンの群れを追い詰めるための特別な儀式に使われたそうです。

また、バッファローストーンは、多産の効果があり、「母なる石が子なる石を孵化させ、子孫を生むことができる」と信じられていました。これはおそらく、アンモナイトの内部がいくつかの小部屋に分かれていて、そこからたくさんの子孫が誕生すると考えられたからでしょう。

Credit: Didier Descouens

この他にも、アンモナイトにまつわる伝承は尽きません。

ニューギニア島の先住民にとっては、狩猟や豊作を祈るお守りになっていましたし、ドイツのある地域では、家畜の薬として使われました。乳の出なくなった牛にアンモナイトの石を煎じて飲ませるとすぐに治ったそうです。

その後の科学調査で、アンモナイトが太古の軟体動物であることを知った人々は一体どんな反応を見せたでしょう。

それでも、ことの真相と関係なく、アンモナイトが今も多くの地域で重宝されていることに変わりありません。

なんで!? 太古の樹液から一億年前の海の生き物「アンモナイト」を発見!

reference: nhm / written by くらのすけ
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