ワンちゃんって本当は何歳? ゲノム解析から「犬の1歳は人の30歳に相当する」と判明

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  • と人間の年齢を正確に比較する新たな方法が開発された
  • ゲノムに含まれるメチル基のパターン変化に基づき、犬と人間の老化速度を比較する
  • この結果イヌは予想以上に老化が進むとわかり、1歳はヒトの30歳に相当している

多くの動物は人間より短命です。

犬を飼ったことがある人なら誰でも、この子は人間にしたら今何歳くらいなんだろうか? という疑問を抱いたことがあるでしょう。

一般的な計算方法では、犬の年齢を7倍すると、その犬が人間だった場合の年齢になると言われています。

4歳の犬はだいたい28歳の人間と生理的に同じ状態というわけです。

しかし、実はこの計算法にはあまり根拠がありませんでした。

そこで新たな研究は、エピジェネティクス(後天的な要因で起きる遺伝子スイッチのオンオフ)に基づいて、より正確に人間と犬の年齢を比較する数式を作成しました

この研究によると、犬は4歳辺りまでに急速に成長・老化していて、その速度は7歳辺りから遅くなるのだといいます。

獣医などが使うより正確な年齢診断法では、これまで犬は1歳半で人間の成人(20歳)に達するとされていましたが、新たな研究は犬が1歳ですでに遺伝子的には人間の30歳に達していることを報告しています。

あなたの飼い犬は、想像している以上に、実際は年老いている可能性があるのです。

イヌの年齢 ヒトの年齢

ヒトとイヌの成長比率が1:7という通説は、イヌが生後9カ月程度ですでに子犬を生むことが可能という事実からも誤りであることはわかっていました。

犬は生後数年で急速に成長・老化が進むため、獣医などはより正確な計算をするために、小型犬の場合1歳で人間の17歳で以後4歳ずつ、大型犬だと1歳で人間の12歳となり、以後7歳ずつ年を取るという計算方法を使っています。

しかし、これも経験論的な計算で、あまり明確な根拠のある年齢比較ではありませんでした。

新たな研究は、より正確で根拠のある年齢比較を行う数式を開発するため、犬と人間のゲノムに含まれるメチル基のパターン変化から、それぞれの細胞の老化を測り年齢の比較を行ったのです。

こうして作られた比較グラフが下の画像です。

Credit:Wang et al., Cell Press,(2020)

驚いたことに犬年齢の1歳は人間の30歳にあたっており、2歳ですでに40歳を越え、4歳のときには50歳を越えた人間に相当していたのです。

これは数式で表すと「犬の年齢の自然対数に16を掛けてから31を加える」という計算になります。

犬の人間換算の年齢 = 16 × ln(犬の年齢) + 31     lnは自然対数

こうしてみると、1歳だからまだまだ子犬と思って飼っていた犬でも、実は自分より年上状態だったという飼い主さんもいるのではないでしょうか。

エピジェネティクスに基づいた計算

この研究で利用されたのが、エピジェネティクスという後天的に変化する遺伝子スイッチの発現です。

遺伝子はすべてが親からの継承によって性質が決まっているわけではありません。環境など後天的な要因によっても変化を起こします。

これを調べる際に深い関わりがあるのがDNAのメチル化です。DNAメチル化は遺伝子発現のオンオフのスイッチに影響を与えていて、ガン細胞の発生などとも関係しています。

DNAメチル化の変化を調べることで、顔のシワが年齢の手がかりになるのと同様に、細胞の年齢を知る手がかりが得られる、と今回の研究者Ideker氏は語っています。

Ideker氏はがんセンターの研究員で、もともとはアンチエイジング(抗加齢)という科学的に根拠が曖昧な医療製品に対して、その効果を調べるためにDNAメチル化という年齢調査方法を研究していました。

アンチエイジングは最近よく聞く単語だと思いますが、老化や加齢を抑制することを目指している医療製品です。

その製品に本当に効果があったかどうか知るために、何十年も待って寿命が伸びたか確認するのではお話になりません。

そのため、Ideker氏はアンチエイジング製品を使用する前と後の遺伝子のメチル化パターンの変化を測定することで、老化の状態に変化が起きたかを調べていたのです。

ただ、ずっと人間を眺める研究に飽きてしまったそう。そんなとき、研究室の大学院生だったTina Wangが、犬の老化と比較する研究を提案してくれたのだといいます。

面白いアイデアだと考えたIdeker氏は、獣医学博士の Danika Bannasch氏と、犬のゲノム配列を初めて決定した研究者である国立ヒトゲノム研究所の主任 Elaine Ostrander博士を仲間に引き込んで、共同研究を開始しました。

Bannasch氏は、この研究のために105頭のラブラドールレトリバーの血液サンプルを提供してくれ、その解析にOstrander博士も貴重な情報を提供してくれました。

こうしてゲノム解析から遺伝子の年齢を測定するという方法で、人間と犬の年齢比較が実現したのです。

犬からヒトへの老化の定量的翻訳の手法。/Credit:Wang et al., Cell Press,(2020)

犬は思ったより年寄り?

新しい年齢比較を聞いて、犬は人間の50歳と比べるとかなり活動的だと感じる人もいるかもしれません。

遺伝子、細胞レベルの年齢比較と運動が特異な犬と人間の年齢別の能力比較は、また別の問題になるのかもしれません。

また今回の研究はラブラドールレトリバー1種を調査して行われています。犬はサイズによっても寿命に大きな変化があるため、他のサイズの犬種で今回の年齢計算が適用可能なのかについては、さらなる研究が必要になります。

こうした研究は獣医師の治療などにとっても有用なツールになる可能性があります。

さらに、もともとのIdeker氏の研究である抗加齢治療の評価についても、メチル化ベースの年齢測定が種を超えて有効である事実は、重要な知見となるでしょう。

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Ideker氏は自身も6歳になる犬(メス)を飼っていて、今では次のように考えてしまうそうです。

「彼女は今でも私と一緒に走り回っていますが、私が思っていたほど若くはないんだなあ」

たぶん、今回の研究を聞いて、同じことを思う飼い主は多いことでしょう。

この研究は、カルフォルニア大学サンディエゴ校遺伝学部の研究者Tina Wang氏を筆頭著者とした研究チームより発表され、論文は生物学に関する査読付き科学雑誌『Cell Systems』に7月2日付けで掲載されています。

Quantitative Translation of Dog-to-Human Aging by Conserved Remodeling of the DNA Methylome
https://doi.org/10.1016/j.cels.2020.06.006

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reference: phys/ written by KAIN
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