
- クモ糸は軽い上に鋼鉄と同じ引っ張り強度がある
- しかしクモを大量に飼育するのは難しい
- そこでクモの遺伝子を光合成細菌に組み込み光合成によってクモ糸を作ろうとし、成功した
- 生産されたクモ糸タンパク質を本物のクモがつくるような繊維に加工できた
原始的な光合成細菌にクモの遺伝子を組み込むことで、糸を作らせることに成功しました。
クモが作る生分解性のシルク繊維は軽量でありながら同じ太さの鋼鉄に匹敵する引っ張り耐性(靭性)があり、広い分野で材料としての応用が期待されています。
しかしながらクモを大量に飼育することは、一匹あたりの巣が多くのスペースを取ることや、少量しかクモ糸を作ってくれないため難しいそうです。
そこで日本の理化学研究所の研究者たちは、クモ糸の遺伝子(MaSp1)を、海洋性の光合成細菌に組み込み、海水・光・二酸化炭素・窒素を与えました。
その結果、光合成によってクモ糸タンパク質を生産させることに成功し、加工によってクモ糸様の繊維構造を再現することにも成功しました。
いったい光合成で作られたクモ糸シルクは、どんな手触りがするのでしょうか?
光合成でどうやってクモ糸を作るの?

クモ糸タンパク質を他の生き物に生産させようとする場合、炭素源(C)に加えて窒素源(N)を含んだ栄養を持続的に供給する必要があります。
また、海に生息する海洋性の紅色光合成細菌は、光合成による二酸化炭素吸収能力に加えて、水中の窒素を取り込んで栄養にする能力がありました。
そこで研究者はジョロウグモの細胞からクモ糸を作る遺伝子を切り出して、紅色光合成細菌に組み込み、光合成能力を生かしてクモ糸を生産してもらうアイディアを思いついたのです。
クモの遺伝子を組み込んだ紅色光合成細菌は、上の図のような培養槽の中で、人工海水・二酸化炭素・窒素を与えられ、LEDの光(730nmの近赤外線)を受けながら生育されました。
結果、紅色光合成細菌は栄養豊富な培地で培養した場合の7.5%に相当するクモ糸タンパク質を生産できました。

また研究者は抽出したタンパク質を有機溶媒に溶かして伸ばすことにより、上の図のようなクモ糸の繊維構造を再現することにも成功しました。
このことから、地球に無尽蔵に存在する二酸化炭素と窒素、そして同じく無尽蔵に降り注ぐ光を使って、クモ糸タンパク質を手軽かつ持続的に生産できる可能性が示唆されました。
もしかしたら未来では、天然シルクは海から取るようになっているかもしれませんね。
研究内容は日本の理化学研究所のChoon Pin Foong氏らによってまとめられ、7月8日に学術雑誌「Communications Biology」に掲載されました。
https://www.nature.com/articles/s42003-020-1099-6
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