古代パタゴニアの人々は気候変動によって食べ物を変えていたと判明。 捨てられた「魚の骨」から当時の環境が分かる!?

history_archeology 2020/07/22
Credit: Akshay Nanavati via Unsplash / phys
point
  • 完新世には激しい気候変動が起こっていたが、先史文明の狩猟民族はこれにうまく対応していた
  • 新たな研究は、南米パタゴニアに残る貝塚などから気候変動に応じてどの様に食事が変わったかを分析
  • 寒冷化が進むと漁業への依存度が高くなり、温暖になると陸生の動物を追いかけたことを明らかにした

現代は激しい気候変動の潮目にあたっていると思われます。

気候変動は天候だけでなく、さまざまな生態系の変化も引き起こし、地域の環境を激変させていきます。

氷河期が終わり人類が本格的に繁栄を始めた完新世(約1万年前から現代)は、非常に気候変動の激しかった時代でもあります。

先史文明の狩猟中心の生活をしていた人類は、一体この時代の環境激変にどのように対応していたのでしょう?

新たな研究は、南米パタゴニアで見つかる貝塚の調査から、そうした古代の狩猟民の生活の変化などを調査し報告しています。

気候変動に対応してきた古代の人類の生活は、もしかしたら新たな気候変動の時代を迎える現代の人々にとっても有益な情報をもたらしてくれるかもしれません。

パタゴニアの狩猟民族

オレンジの地域がパタゴニア。/Credit:Wikipedia

パタゴニアはチリとアルゼンチンの国境に位置する、南米大陸最南端の地域です。

この地域には、およそ6500年以上前から多くの狩猟民族が生活していました。彼らの食生活は、ゴミ捨て場にあたる貝塚の調査から、かなりよくわかっています

パタゴニアは南から来る冷たいフンボルト海流(ペルー海流)が大陸沿岸の温かい海水に流れ込むことで、非常に海洋資源の豊富な地域です。

海水は地上と異なり冷たい方が栄養が豊富です。日本も寒流が流れ込む潮目にあるため、海洋資源が豊富ですが、パタゴニアも似たような環境が整っています。

貝塚の調査から、パタゴニアの狩猟民は、主に漁業と、海鳥やアザラシなどを獲って食べていたことがわかっているそうです

しかし、完新世の時代は、氷河期が終わり比較的温暖だった時代ですが、5500年前から4500年前の間には新氷期という寒冷期も存在していたと考えられ、気候変動の激しい時代でした。

こうした気候変動や環境変化に彼らはどのように対応していたのでしょうか?

今回の研究チームは、パタゴニアに残る完新世中期(6500年前)から完新世後期(2500年前)にかけての4つの貝塚を調査して、彼らがどのように生活を変化させて環境変化に対応していたかの調査を行ったのです。

貝塚の調査

アルゼンチンで見つかった貝塚。/Credit:Wikipedia

研究チームが着目したのはこの地域でよく獲れていた魚「ベニダラ」です。

魚の骨には、耳石という年輪のような骨があり、そこから魚がどの様な環境にいたのか、どのような時期に獲られたものかなどが推測できるのです。

成長の鈍化している冬などの季節だと年輪の層は薄くなり、暖かく豊かな季節は年輪が厚くなります。

研究チームは、貝塚からこのベニダラのサンプルを255個収集しました。また現代で漁獲されるベニダラも比較サンプルとして69個集めて分析を行いました。

すると完新世中期の貝塚から見つかったベニダラは、温暖な時期に獲られたものであることがわかりました。この貝塚からは寒冷期には見られない鳥の骨なども見つかっていて、この時代が温暖だったことを示しています。

しかし、それ以降の時代では、ベニダラが非常に寒い時期に獲られた痕跡があり、寒冷化が進んでいた可能性があります。5000年前から4000年前あたりの時代は、ちょうど新氷期と目される時代と一致しています。

そして、こうした寒冷期には、狩猟民の漁業への依存度が増していたこともわかりました。

寒冷化で、地上の食料が十分ではなかったため、この時代の狩猟民は釣りで食べ物を確保していたのでしょう。

そして、漁業への依存は完新世後期(2500年前)あたりから減少していきます。

これは再び地上の温暖化が進んできたことで、豪雨の増加や、氷河が融解して海に流れ込むなどの要因で海水の塩分濃度が下がり、植物プランクトンが影響を受けて海洋生物が減少したためと考えられます。

こうしてパタゴニアの先住民族は、漁業を諦め地上の動物たちを追って移動していったようです。

古代の人々も環境の激変にうまく生活を変化させることで対応してきたようです。

私達の生活も、大規模な気候変動を機に、大きく様変わりする時が来るのでしょうか。

この研究は、チリのマガジャネス大学の考古学研究者Jimena Torres氏を筆頭著者として、フランスの考古学者との研究チームより発表され、論文は『The Journal of Island and Coastal Archaeology』に6月1日付けで掲載されています。

Characterizing seasonal fishing patterns and growth dynamics during the Middle and Late Holocene in the Strait of Magellan (Chilean Patagonia): Sclerochronological analysis of tadpole codling (Salilota australis) vertebrae
https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/15564894.2020.1755393?journalCode=uica20

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reference: phys,sciencealert/ written by KAIN
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