ナゾだった”地球の磁場”を感じ取る動物の「第六感」は、バクテリアに由来しているかもしれない

biology

Credit:depositphotos

ウミガメは産卵の際、必ず自分が生まれてきた砂浜に戻って来ます。

また、渡り鳥も広い地球で迷うことなく目的の土地へ向かって移動できます。

さまざまな動物たちが、自分は地球上のどこにいるのか、どちらへ向かっているのか、迷うことなく感じ取る能力を持っているのです。

これは地球の磁場を感じているためだと考えられていますが、実際それを可能にする器官がどこにあるのかは、50年近い研究が続けられているにもかかわらず、未だに解明されていませんでした。

セントフロリダ大学を始めとした研究者チームが8月10日付けで科学雑誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載した研究によると、動物が磁場を感じる理由は、バクテリアの影響なのではないかとする仮説が発表されました

バクテリアで地球の磁場を感じ取るとは一体どういうことなんでしょうか?

磁石のようなバクテリア「磁性細菌」

磁性細菌の例。/Credit:金沢大学 生体分子生理学研究室

細菌が磁場に関連すると言われても、すぐにはピンと来ませんが、バクテリアの中には外界から鉄イオンを細胞内に取り込み、マグネタイト(磁鉄鉱)の結晶を作り出すものがいます

この磁鉄鉱の結晶は細胞の中心に並んで、まるで棒磁石のようになります。

こうした細菌は磁性細菌と呼ばれ、まるでコンパスのように地磁気を感知し、地球の磁場の影響を受けて運動します。

動物たちの磁気を感知する能力については、50年以上に渡って研究されているにもかかわらず、どのように実現してるのかがわかっていません。

新たな研究は、動物たちが磁性細菌と共生関係を結び、地球の磁場を感じとる能力を獲得した可能性を指摘したのです。

メタゲノミクスで隠された細菌を見つける

この仮説の証拠を探すために利用されたのが、メタゲノミクスという微生物学の研究分野です。

地球上の細菌の99%近くは、単独で培養することが困難だと考えられています。こうした微生物のゲノム情報を入手する方法として、自然の環境サンプルから細菌叢をそのままとってきて、DNAのミックスされた状態から遺伝情報を解析するという研究手法が取られてるのです。

環境サンプルから遺伝子を調べるメタゲノミクス。/Credit:Wikipedia

これがメタゲノミクス解析と呼ばれるもので、海水や土壌の他、生き物の腸内や口腔などさまざまな細菌叢が研究されています。

こうしたメタゲノミクスのデータベースも作られていて、今回の研究チームは、動物サンプルの最大の遺伝的データベース「Metagenomics Rapid Annotation using Subsystem Technology(略称: MG-RAST)」から、磁性細菌の遺伝子が含まれているか調査を行ったのです。

こうしたデータベースでは大規模な細菌叢のパターンや微生物多様性などは調べられていますが、特定の種にスポットを当てて検証されていることが少なく、見落とされていた可能性があると研究者の1人セントフロリダ大学のFitak氏は語っています。

そして調査の結果、ペンギンやアカウミガメ、コウモリやセミクジラから定期的に磁性細菌が発生している証拠を発見したのです。

磁性細菌がどのように作用するかはまだ不明

Credit:depositphotos

磁性細菌が、磁場を感じ取る動物たちの細菌叢で関連を持っていることは確認されたものの、それが動物たちのどこに生息しているのかはまだ判明していません

しかし、目や脳など神経組織に関連している可能性は高いだろうと研究チームは考えています。

この仮説を立証するには、まだまだ多くの調査や証拠が必要になってきます。

具体的にどうやって動物が磁気を感じて、どのように利用しているかは不明ですが、この研究は謎に包まれていた動物たちの第六感を理解する手がかりになるかもしれません。

現在チームは、他の様々な動物、ウミガメや魚、鳥類などで同様の細菌遺伝子の調査が予定しています。

あわせて読みたい

SHARE

TAG