最新の輸送船は「帆船」!? 現代に蘇った風力利用の新しい船舶デザイン

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Credit: Wallenius Marine

風を受けて海を進む帆船は、海賊や大航海時代を連想させる海のロマンにあふれていますが、現代では実用性が薄い船と考える人は多いでしょう。

しかし、このアンティークな乗り物が最新の商業輸送船のデザインとして返り咲こうとしています。

スウェーデンに拠点を持つ海運会社Wallenius Marine(ワレニウスマリン)は、スウェーデン海洋調査センタ(SSPA)、スウェーデン王立科学アカデミーとの共同プロジェクトで開発中の最新自動車輸送船「Oceanbird」のデザインを公開しました。

それは意外なことに現代版の帆船です。

CO2削減が課題となっている現代に置いて、この史上最大の帆船は従来の輸送船と比べ排出量を90%も削減できるというのです。

海運業界に求められる環境に優しい輸送船

優雅に見えるクルーズ船も排出量は多い。/Credit:NABU,Wattenrat,E.Voss

クウェートで発見された紀元前5000年頃の円盤には、すでに帆の姿が描かれていました。

人類は実に7000年前から帆船を使っていたのです。

この伝統的な船の推進技術は、蒸気機関の登場によって世界から消えていき、現代ではレジャー目的以外で使われることはほぼありません。

現代の世界をつなげる貿易のネットワークには、大型の貨物船が不可欠で、これらの多くは汚染物質の排出量が多い安価な燃料に頼って運行されています。

現在、商業海運業界のCO2排出量は世界の約3%を占めています

3%なら大したことないと考える人もいるかもしれませんが、これは大きな数字です。国連の国際海事機関は、地球温暖化への懸念から今年の10月末までにこうした排出量の40%を削減する目標を掲げています。

こうした機運の高まりから、海運会社も環境に優しい輸送手段を検討し始めています。

そこで目を向けられたのが、海を進む伝統技術「帆船」だったのです。

現代に蘇った帆船

Credit: Wallenius Marine

そこで海運会社「Wallenius Marine」がデザインしたのが、現代の帆船というべき風力船「Oceanbird」です。

もちろん現代の帆船は、布の帆を張って海を航行するわけではありません。

それは金属複合材で作られた、高さ80メートルもある飛行機の翼のような5枚の帆です。

この帆は高さの調節が可能で、最小で20メートルまで短くなり、嵐の中や運河の橋の下でも安全に航行できます。

最新のコンセプトでは、北大西洋を最大7000台の車を積んで平均10ノットの速度で横断できるとのこと。

10ノットという速度は、現在運行されている輸送船としては遅い部類です。通常8日で行う航海に12日を要してしまう計算になりますが、排出量は90%削減できるといいます。

通常のエンジンも搭載されますが、それは港湾内外の移動や緊急時に限った運用になるようです。

完成すれば船の全長は200m、幅40mになり、世界最大の帆船となります。

2025年に運行開始の予定

Credit: Wallenius Marine

現在「Oceanbird」はコンセプト段階のもので、全長7mの模型を使って海上でテスト中です。

生産の準備は2021年末までに完了し、2025年には最初の運行を開始する予定とのこと。

現在は自動車の輸送船として設計されていますが、この船はゆくゆくはもっと多くの船に拡張していくことを考えています。

Wallenius Marineの最高執行責任者であるPer Tunell氏は、「これは競争のためではなく、今後われわれの取るべき方向性である」という考えを示していて、この船の詳細をより多くの会社と共有しプロジェクトに参加してもらうことを目指しているそうです。

ただ、この技術はデッキ表面を占領してしまうため、コンテナを大量にデッキに積む必要があるコンテナ船には適用できそうにありません

今回の技術を適用するのは難しそうなコンテナ船。/Credit:depositphotos

ここにはまた、別の新しい技術が必要になってくるでしょう。

CO2排出量を削減するため、今後はこんな風にロマンあれるアンティークな古いデザインが見直され、現代に蘇ってくるのかもしれません。

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