“火星生命発見”のために、地球で「火星にそっくりな砂漠」を調査する理由

研究の舞台となったチリのアタカマ砂漠。火星初期の荒野に近い環境と考えられている。
研究の舞台となったチリのアタカマ砂漠。火星初期の荒野に近い環境と考えられている。 / Credit:Alberto Fairén,Cornell University

南米チリのアタカマ砂漠というと、大型望遠鏡などが建設されていて天文学の重要拠点になっている地域ですが、天体観測以外でも宇宙の研究にとって重要な土地になるかもしれません。

11月5日にオープンアクセスジャーナル『Nature Scientific Reports』で発表された新しい研究では、乾燥したアタカマ砂漠の粘土層で発見された微生物が、火星地表下にある同様の堆積層からも発見できる可能性を報告しています。

NASAを始めとした研究機関は、現在火星の地下を掘削して、微生物を調査することができる探査機を送り込んでいます。いよいよ、火星でも生物の痕跡が発見できるかもしれません。

>参照元はこちら(英文)

火星にそっくりの地球の砂漠

火星ゲイルクレーターにある荒野。地球の乾燥した砂漠と地下の土壌構成が近いかもしれない。
火星ゲイルクレーターにある荒野。地球の乾燥した砂漠と地下の土壌構成が近いかもしれない。 / Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS

火星に生命が存在する場合、その痕跡は地下に保存されている可能性が高いと考えられています。

この調査をするためには、具体的にどういった土壌のどういう部分を注意して見ればいいのかという指標が必要になってきます。そこで役立つのが火星とよく似た環境を地球の中から見つけ出し、微生物の生息可能な場所を探し出す研究です。

火星の地表は非常に乾燥していて、ここに生命が存在することは困難です。

火星と同様の非常に乾燥した過酷な環境は、地球の南米チリにあるアタカマ砂漠にありました。そのため、科学者たちは50年以上に渡って、この地域を研究してきたのです。

乾燥した砂漠から見つかった湿った場所

aは土壌層の構造や組成を示す。bはサンプルのとられた最初の地点。c,dは掘削地点の様子。
aは土壌層の構造や組成を示す。bはサンプルのとられた最初の地点。c,dは掘削地点の様子。 / Credit:Armando Azua-Bustos et al.,Scientific Reports(2020)

今回の研究では、アタカマ砂漠の地表から約30センチメートル下に、湿った粘土が豊富な層があることを発見しました。これは乾燥したこの地域で、初めての発見です。

この層は地表の非常に乾燥した大気からは、完全に隔離されていました。

そしてここからは少なくとも30種におよぶ好塩性(塩のある環境でも生きられる)の代謝活性細や古細菌が見つかったのです。

地下粘土サンプルから発見された細菌凝集体の蛍光顕微鏡画像。
地下粘土サンプルから発見された細菌凝集体の蛍光顕微鏡画像。 / Credit:Armando Azua-Bustos et al.,Scientific Reports(2020)

地球でもっとも乾燥した場所でも、地下には湿った粘土層があり多様な微生物が生息しているというのは、これまで報告のない新しい事実です。

この発見は、火星で同様の浅い粘土堆積物に、生物の痕跡を発見できる可能性を示唆しています。

火星の地下を調査する探査機たち

2021年に火星着陸予定の探査機「パーセヴェランス」。
2021年に火星着陸予定の探査機「パーセヴェランス」。 / Credit:NASA/JPL-Caltech

火星地表下の粘土層を調査できる火星探査機は、今後数年以内に複数稼働する予定になっています。

すでにNASAは火星探査機「パーセヴェランス(英: Perseverance、『忍耐』を意味する単語)」を打ち上げていて、2021年2月に火星着陸予定になっています。

欧州宇宙機関(ESA)もロシアと共同で火星探査機「ロザリンド・フランクリン(英: Rosalind Franklin、DNA構造の解明に貢献した英国の科学者が由来)」を2023年に火星へ着陸させる予定で、ミッションを進めています。

これらの調査には、今回の研究で示された新たな情報が役立つだろうと研究チームは語っています。

火星初期の正確な環境条件はほとんどわかっていません。しかし、アタカマの非常に過酷な表面環境でも、わずか30センチメートルの地下に微生物の多くが保護されて生息している事実が示されました。

火星の歴史の最初の10億年間は、このアタカマに見られる状況と同様の条件で生命の存在がサポートされた可能性はかなり高いだろうと研究者たちは考えています。

いよいよ、宇宙に生命を発見するときが近づいているのかもしれません。

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