16年間正体不明だった「青い環状星雲」のナゾを解明!2つの星の衝突直後の瞬間だった

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青色環状星雲の地球からの撮影画像。青い環と赤い帯が星を囲んでいるように見えるが……?
青色環状星雲の地球からの撮影画像。青い環と赤い帯が星を囲んでいるように見えるが……? / Credits: NASA/JPL-Caltech/M. Seibert (Carnegie Institution for Science)/K. Hoadley (Caltech)/GALEX Team

2004年、NASAの紫外線宇宙望遠鏡「GALEX」は、天の川銀河でこれまで見たことのない不思議な天体を発見しました。

それが上の画像のような青いリング状の星雲です。この天体は発見から16年間研究されてきましたが、調べるほど謎が深まる一方で、一体なんであるのかが不明でした。

しかし、11月18日に科学雑誌『nature』に発表された新しい研究は、ついにその正体を突き止めたと報告しています。

これは2つの星が衝突して1つに融合した天体でしたが、そこには想像を超えた数々の新しい発見が含まれていました。

>参照元はこちら(英文)

謎の青い環状星雲

青いリング状の星雲とその周囲を縁取るような細い赤色の帯が見える。これは紫外線波長の光で肉眼では見えない。
青いリング状の星雲とその周囲を縁取るような細い赤色の帯が見える。これは紫外線波長の光で肉眼では見えない。 / Credits: NASA/JPL-Caltech/M. Seibert (Carnegie Institution for Science)/K. Hoadley (Caltech)/GALEX Team

これは「TYC 2597-735-1」と名付けられた星とその周囲を囲むリング状の星雲の画像です。

青い輝きは遠赤外線の光です。肉眼で直接見ることはできませんが紫外線宇宙望遠鏡「GALEX」の画像では、ぼんやりと青く輝くリングが明るい星を囲んでいるのがわかります。

さらに、その周りには赤い光の帯のようなものも見えます。

見た目には中心の星から急速に離れるように、ガスが膨張してリング状の星雲を作り出しているように見えます。

最初科学者たちはこれが単なる惑星状星雲であると考えていました。

太陽くらいのサイズの恒星は、その寿命の最後に膨張し物質を外側へ放出して環状星雲を星の周囲に作り出します。

惑星状星雲の一例。
惑星状星雲の一例。 / Credit:Wikipedia

しかし、ハワイのケック天文台など複数の望遠鏡から得られたデータは、その可能性を否定するものでした。

惑星状星雲と考えるには、あまりに周囲に破片が多かったのです。

こうなると考えられるのは、2つの星の衝突した残骸だという可能性になります

天の川銀河には2つの星が回りあう連星系が数多くあり、これらの連星はいずれ星同士が接近して合体し終焉迎えることがあるのです。

しかし、単に恒星の衝突と考えた場合にも矛盾するデータがありました。

「TYC 2597-735-1」は水素が不足していてかなり古い星であることが示されているのに、その周りからは多くの赤外線放射が観測されたのです。

これは、若い星の周りによく見られる土星の環のような降着円盤の存在を示唆するもの。

こうした見え方は天体の衝突にも適合しません。

調べれば調べるほど謎が深まる一方で、研究者たちは困惑してしまいました。

青い環状星雲の真の姿

あまりに矛盾するデータが多いため、GALEXの研究チームはこれをなんとか理解するため、コロンビア大学の理論物理学者ブライアン・メッツガー氏をチームに迎え入れました。

「ブライアンは私たちが見ているものがなんなのか、最初から予測していました」今回の研究の筆頭著者、カリフォルニア工科大学の天体物理学者ホードリー氏はそのように語っています。

メッツガー氏は青い環状星雲が恒星の合体からわずか数千年の状態を目撃しているのだと説明しました。

通常、星の合併は爆発の破片が星を覆い隠してしまうため、観測者はそこで何が起こっているのか見ることができません。

そのためチームはこれが星の合併である場合、星を見るために破片の雲が十分薄くなった状態であると考えるしかありませんでした。

すると状況がデータと合わないことになってきます。

しかし、メッツガー氏の理論は、この場合の星の合併は星を見えなくするほど破片が分散しなかったのだ説明しました。

つまり、この天体はまだ天文学者が目撃したことのない、2つの星の合併直後の様子だったのです。

だから、データの示す意味が理解できなかったのです。

具体的にそれはどういう状態なのでしょうか?

メッツガー氏のモデルは、観測された環状星雲が実際はリングでも球体でもないと示しています

メッツガーのモデル。環状星雲は円錐上に広がった破片の重なりがそのように見えただけだった。
メッツガーのモデル。環状星雲は円錐上に広がった破片の重なりがそのように見えただけだった。 / Credit: Geometry of the Blue Ring Nebula (Animation),JPLraw,NASA/JPL-Caltech/R. Hurt

上の動画がメッツガー氏の示した青い環状星雲の正体です。

この天体は確かに恒星の衝突によって生まれたものですが、非常に特殊な破片の広がり方をしました。

連星の大きな主星は寿命の終わりに近づき大きく膨んでいきます。

小さな伴星はそれに引かれて螺旋状に大きな星の方へ落ちていきましたが、途中で外層が重力によって引き裂かれチリの円盤を作り出しました。

その後、チリの円盤を持った伴星が主星に衝突したとき、その円盤は星の反対方向へと吹き飛ばされました。

吹き飛ばされた円盤は外側にいくにつれて大きく広がっていき、最終的に円錐型の破片の雲を作り出したのです。

それらは暗すぎて単独では地球から見えません。

しかし、地球から見て2つの円錐が重なった領域は強い遠紫外線の放射として観測され、青い環状星雲に見えたのです。

青い環状星雲の正体は、中心星から離れる円錐型の破片の雲であり、たまたま地球から見たとき円錐の重なり合う領域が環状に見えただけだった。
青い環状星雲の正体は、中心星から離れる円錐型の破片の雲であり、たまたま地球から見たとき円錐の重なり合う領域が環状に見えただけだった。 / Credits: Mark Seibert

青い環状星雲は、恒星の合併によって生じた特殊な破片の広がりと、地球から観測する角度が生み出した偶然の姿だったのです。

私たちがまだ知らない未知の姿が宇宙にはある

いつか衝突する連星は、天の川銀河の中にもたくさんあります。

天文学者が見ている星の中には数百万年前にすでに合併した星もあるでしょう。

しかし、ぶつかる前とぶつかった後の、その間に何が起こっているのかはデータがほとんどありません。

今回の発見は非常に稀なものですが、似たような天体はまだまだ宇宙にたくさんあると考えられています。

青い環状星雲は、そうした衝突直後の星がどのように見えるかの一片を示してくれました。

「この成果から、今後似たような天体をさらに特定できるようになるでしょう」、とメッツガー氏は語っています。

「今回観測された青い環状星雲は、私たちが探していたわけではありませんでしたが、本当に興味深いものでした。

宇宙を新しい波長や、新しい方法で見ると、想像もしていなかったものを見つけることがあります」

研究チームの1人、カーネギー天文台のマーク・セイバート氏はそのように発見の重要性を語っています。

青い環状星雲は私たちの文明が始まった頃にぶつかった2つの星の姿だったようです。

なお、星雲が青く見えたのは紫外線撮影の着色に青色が選ばれたというだけで、目には見えないものです。

星の周りに見えた赤い衝撃波も破片の中で水素分子が励起した紫外線を着色したものなので、その点は留意しておきたいですね。

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