爆発物を検出したホウレンソウ
爆発物を検出したホウレンソウ / Credit: youtube/MIT
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爆発物を検出して、メールで知らせてくれる「ホウレンソウ」が話題に(MIT)

2021.02.05 Friday

先日、アメリカのSNS上で「科学者がホウレンソウにメール送信の仕方を教えた(英文)」と話題になりました。

この元ネタは、マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した「爆発物を探知できるホウレンソウ」にあります。

このホウレンソウは、地中の爆発物を検出すると、それを電子メールで知らせてくれるのです。

どうしてそんなことが可能なのでしょうか。

研究の本論文は、2016年に『Nature Materials』に掲載されています。

MIT Scientists Hack Spinach Plants to Send Emails https://wordpress.futurism.com/scientists-hack-spinach-plants-send-emails Scientists Create Spinach That Can Test For Bombs https://newsforkids.net/articles/2021/02/03/scientists-create-spinach-that-can-test-for-bombs/ Scientists Have Finally Taught Salad To Send Out Emails https://www.iflscience.com/plants-and-animals/scientists-have-finally-taught-salad-to-send-out-emails/
Nitroaromatic detection and infrared communication from wild-type plants using plant nanobionics https://www.nature.com/articles/nmat4771

根っこから吸収した爆発物に反応して、メール送信!

MITのストラノ・リサーチ・グループは、ホウレンソウに爆発物の探知機能をもたせるため、ナノテクノロジーを応用しました。

ナノの世界は非常に小さく、1ミリの1000分の1が1マイクロメートル、それをさらに1000分の1したのが1ナノメートルとなります。

ここでは主に2つのナノテクノロジーが使われており、1つは、地中の爆発物に反応するための「ナノセンサー」、もう1つは、探知を知らせるための「カーボンナノチューブです。

ナノセンサーは、ホウレンソウの葉にナノ粒子を埋め込んで、爆発物の主な原料である「芳香族ニトロ化合物」に反応します。

カーボンナノチューブは、葉裏の葉肉層に配置され、ニトロ化合物に反応すると特殊な光(信号)を放ちます。

研究チームは、ホウレンソウの近くに赤外線カメラを設置し、この信号を捉えると自動で電子メールを送信してくれるシステムを作りました。

検知〜送信までの流れ(上)、化合物に反応した光信号(下)
検知〜送信までの流れ(上)、化合物に反応した光信号(下) / Credit: nature
ホウレンソウから送られてきたメール
ホウレンソウから送られてきたメール / Credit: youtube

実証テストでは、ピクリン酸というニトロ化合物を用いて実験されています。

結果、ホウレンソウはピクリン酸を含んだ地下水を吸収して、約10分でナノセンサーのある葉っぱまで運び、異物検出をメールで送信することに成功しました。

しかし、なぜホウレンソウでなければならなかったのでしょう?

研究主任のマイケル・ストラノ氏は植物は土壌の小さな変化にも敏感に反応し、化合物の検知に優れた化学アナリストだから」と話します。

「中でもホウレンソウは、地中に根を張る範囲が広く、絶えず地下水を吸収して葉っぱに運んでいるので、爆発物の探知に最適である」と続けます。

また、訓練された犬やラットに比べてホウレンソウは軽いので、地雷に引っかからないという利点もあるでしょう。

植物とナノテクを融合した技術は「植物バイオニクス」と呼ばれ、爆発物以外でも、さまざまな土壌汚染の検知に有用です。

ストラノ氏は「植物バイオニクスは、人と植物との間に立ちはだかるコミュニケーションの壁を超える技術として、今後さらに発展していくでしょう」と述べています。

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