クジラは癌の発症リスクが非常に低い。
クジラは癌の発症リスクが非常に低い。 / Credit:canva
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細胞をたくさん持つクジラが「がん」にならない理由を解明! 人間の治療にも役立つ発見

2021.02.26 Friday
WHY DON’T WHALES GET CANCER? https://www.inverse.com/science/why-dont-whales-get-cancer-study
Positive selection and gene duplications in tumour suppressor genes reveal clues about how cetaceans resist cancer https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2020.2592

「がん」という病気は細胞分裂時のコピーエラーによって発生します。

このため普通に考えれば、細胞の数が多くて、長寿の生き物はがんになりやすいはずです。

ところがクジラのような大きな生き物は、ほとんどがんにかかりません。

2月24日に科学雑誌『Proceedings of the Royal Society』に掲載された新しい研究は、この理由を明らかにするべくクジラの遺伝子調査を行い、クジラ類が他の哺乳類と比較して特定のがん抑制遺伝子(TSG)の代謝回転率が2.4倍も高くなっているという事実を報告しています。

代謝回転率が高いというのは、進化の速度と関連しています。

クジラのがんを抑制する独自の進化の証拠は、人間のがん治療の研究にも役立つ可能性があります。

大きな生き物のがん発症リスクが低い「ピートのパラドックス」

がんは細胞分裂の際に起こるコピーエラーが原因。
がんは細胞分裂の際に起こるコピーエラーが原因。 / Credit:canva

がんは細胞のコピーエラーから起こっています。

このため、細胞分裂の機会が増えれば、その分がんになるリスクも増加することになります。

実際、同じ種の中で比較した場合、身長の高さ(体の大きさ)とがんの発生率は関連性があることが示されています。

そうなるとマウスと人間、あるいは人間とゾウやクジラを比較した場合、細胞数の多い体の大きな生き物ほどがんのリスクが高くなるはずです。

科学者の中には、「クジラは生まれたときからがんにかかってしまい、存在することさえできないはずだ」とジョークを飛ばす人もいるくらいです。

ところが実際のところ、クジラはほとんどがんにかかりません。それ以外でもネズミに比べて人間ががんになりやすいということもなく、ゾウにおいても同様です。

なぜかネズミよりゾウのほうががんになりやすいという事実はない。
なぜかネズミよりゾウのほうががんになりやすいという事実はない。 / Credit:canva

種を超えた場合、体の大きさとがんの発症リスクの関連性は失われてしまうのです。

この問題は1977年に統計学者であり疫学者であるリチャード・ピートによって指摘され、以来ピートのパラドックス」と呼ばれています

ではこの矛盾を生み出す原因はなんなのでしょうか?

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