鳥の肺のデフォルメされたイメージ。青矢印が吸気、赤矢印が排気。
鳥の肺のデフォルメされたイメージ。青矢印が吸気、赤矢印が排気。 / Credit:NYU’s Applied Mathematics Laboratory,eurekalert
biology

100年謎だった「鳥類の肺は空気の流れが一方通行になっている」仕組みを解明 空気が薄い高所を飛べる理由

2021.03.24 Wednesday
Loopy Pipe Network Converts AC to DC(physics) https://physics.aps.org/articles/v14/42
Flow Rectification in Loopy Network Models of Bird Lungs https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.126.114501

哺乳類は基本的に呼吸をするとき、肺内部の気流の方向が、吸うときと吐くときで入れ替わります。

しかし、鳥類は常に肺内部で気流が一方向に流れ続けています

この事実は100年近く前に発見されていましたが、鳥の肺には弁やダイオードに相当するシステムはなく、どうやって実現しているか完全に説明できていませんでした。

3月19日に科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』で発表された新しい研究は、実験とシミュレーションを通じて流体をポンプで送るだけで、流れを制御するスマートな方法を発見したと報告しています。

鳥類の肺は、いかにして一方向の空気の流れを維持し続けているのでしょうか?

驚異的な酸素交換能力を持つ鳥の呼吸器官

鳥の呼吸は常に一方向で流れる。
鳥の呼吸は常に一方向で流れる。 / Credit:morinokuma7,鳥の呼吸(you tube)

哺乳類の奥には細かく枝分かれした肺胞という袋があり、ここに空気が送り込まれて血液中の酸素交換を行っています。

当然、吸って、吐いて、という動作をするとき肺では空気の流れが入れ替わります。いわゆる交流の状態です。

しかし、鳥類の肺に肺胞はなく、代わりに気囊(きのう)という袋を使って、肺の中に常に一方向の気流を生み出しています

つまり、吸うときも吐くときも常に一方向の直流状態で空気が流れているのです。

いちいち、空気の流れが切り替わらないので、鳥の肺は延々と途切れることなく酸素交換を続けることができます

これにより、鳥は強力なエネルギーを得られる他、酸素濃度の薄い高高度でも飛び続けることができます。

飛行旅客機には、各座席に酸素マスクがついていますが、あれは高度1万メートルを超えるような高度では、空気が薄いために人間は呼吸をすることができないからです。

しかし、鳥類は標高8000メートルを超えるエベレストの上も飛んでいることが知られていて、高度1万2000メートルを飛行する飛行機のジェットエンジンに吸い込まれたという記録さえ存在しています。

鳥は人間には呼吸の難しい高高度でも呼吸ができる。
鳥は人間には呼吸の難しい高高度でも呼吸ができる。 / Credit:canva

こうした1方向にだけ空気を流す驚異的な鳥の呼吸器官については、1世紀前から知られていましたが、それを実現させる空気力学的な説明は、実はずっと謎のままでした

口は1つしかないので、呼吸器官のネットワークには必ず接続点があります。

血流のように、逆流を防ぐ弁のようなものがあるならわかりますが、鳥の呼吸器には弁も、整流装置と呼べる器官も存在してはいません。

そこで、これを調査するためニューヨーク大学の研究チームは、鳥の呼吸を模倣した実験装置を作って、一連の空気の流れを実験してみることにしたのです。

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