動物の脳を破壊する病気の原因を解明
動物の脳を破壊する病気の原因を解明 / Credit:Depositphotos
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ヒトが放出した「臭素」がバクテリアに毒を生成させ、動物の脳を破壊していたと判明

2021.03.27 Saturday

1994年、アメリカ・アーカンソー州デグレイ湖で29頭のワシの死骸が発見されました。

これは「液胞脊髄症(VM:vacuolar myelinopathy)」または「鳥類液胞脊髄症(AVM:Avian vacuolar myelinopathy)」という脳が破壊される病気が原因であり、年々広まっています。

この病気の原因は長年謎でしたが、25年越しに解明できました。

ドイツのマーティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク製薬研究所に所属するステファン・ブレインリンガー氏ら研究チームは、VMが外来水草とバクテリア、そして化学物質の3つの要素が絡まり合って発生していたと報告しました

研究の詳細は、3月26日付けで科学誌『Science』に掲載されています。

“WE ALL TEAMED UP TO HUNT THE EAGLE KILLER!” https://www.inverse.com/entertainment/how-one-los-angeles-based-creative-turned-his-love-of-special-effects-into-a-wild-career-in-film
Hunting the eagle killer: A cyanobacterial neurotoxin causes vacuolar myelinopathy https://science.sciencemag.org/content/371/6536/eaax9050

動物の脳を破壊し奇行に走らせる原因不明の病気

最初に発見されて以来、VMは米国の湖全体で急速に広まっています。

少なくとも9つの州でVMが発見されましたが、その正確な範囲は把握できていません。

ちなみに2019年までにジョージア州のたった1つの湖だけでも合計105頭のワシの死骸が見つかっています。すべての死骸が回収されるわけではないため、実際の合計数はさらに高いと考えられます。

VMに感染すると液胞ができたり穴が開いたりする
VMに感染すると液胞ができたり穴が開いたりする / Credit:Steffen Breinlinger

VMに感染すると、と脊髄の神経細胞に「液胞」と呼ばれる小さな塊がつくられます。ときに穴が開くことさえあると言われています。

これにより鳥たちはさまざまな奇行に走るようになります。

あるワシは自ら岩壁に衝突したり、泥酔しているかのように何もない場所で転倒したりします。

また水鳥であれば、その泳ぎ方がぎこちなくなり、空を飛ばなくなります。時には背泳ぎすることもあるのだとか。

頭の痙攣や音に対する無反応といった症状もあり、最終的に死んでしまうこともあります。

VMは当初、鳥類のみに感染すると考えられていましたが、次第に魚、カエル、カタツムリ、カメ、ヘビなどにも影響を与えていると分かってきました。

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