あらゆるものが静止した絶対零度まであと38兆分の1度というところまで近づいた
あらゆるものが静止した絶対零度まであと38兆分の1度というところまで近づいた / Credit:canva
physics

ほぼ絶対零度「0.000000000038K(ケルビン)」まで温度を下げることに成功

2021.10.20 Wednesday

2021.10.19 Tuesday

Physicists Shattered The Record For Coldest Temperature Ever Achieved in a Lab https://www.sciencealert.com/scientists-shattered-record-for-coldest-temperature-ever-recorded-in-a-lab
Collective-Mode Enhanced Matter-Wave Optics https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.127.100401

温度の上限は億に達するほどはるか上まで存在しますが、最低温度についてはマイナス273.15度より下は存在しません。

この理論上到達可能な最低温度を絶対零度といい、原子さえもが停止します。

科学者はこの最低温度にできる限り近づくための実験を繰り返していますが、今回その記録が新たに更新されました。

ドイツのブレーメン大学の研究チームは、実験室で数秒間のみですが、絶対零度よりわずかに高い温度38pK(ピコケルビン)に到達することに成功しました。

この超低温環境では、物質が非常に特殊な振る舞いをするため、量子力学への理解に重要な役割を果たします。

今回の研究の詳細は、8月30日付で科学雑誌『PHYSICAL REVIEW LETTERS』に掲載されています。

理論上もっとも低い温度

普段何気なく温度という言葉を私たちは使っていますが、温度とは原子の持つ運動エネルギーのことです。

温度が高いとき、原子や分子は激しく動いてエネルギーを伝えてくるため、熱いあるいは暑いと人間は感じるのです。

逆に原子が運動をしなくなると、冷たいあるいは寒いと感じるようになります。

温度の物理的な意味とは、原子や分子が持っている運動エネルギー。激しく原子が動くほど熱くなる。
温度の物理的な意味とは、原子や分子が持っている運動エネルギー。激しく原子が動くほど熱くなる。 / Credit:canva,ナゾロジー編集部

ではこの世界に存在するあらゆる原子が停止してしまうとどうなるのでしょう?

それが理論上もっとも低い温度である「絶対零度で、その温度は「マイナス273.15℃」です。

すべての物質が止まってしまうため、物理的にはこれより低い温度は存在しません。

しかし、そんなすべての運動が静止した世界でも量子的なゆらぎは存在しています。

そのため、絶対零度に近づくと物質は通常では見せない非常に奇妙な振る舞いをし始めるのです。

その代表的なものが、「ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)」です。

絶対零度まで冷却されたとき起きるボース=アインシュタイン凝縮のイメージ動画
絶対零度まで冷却されたとき起きるボース=アインシュタイン凝縮のイメージ動画 / Credit:Wikipedia, Jubobroff Jubobroff J.Bobroff and full list in credits

これは固体・液体・気体・プラズマに次ぐ物質の第5の状態とされています。

このとき物質(個々の原子)は粒子の集まりとしてではなく、物質波として1つの波動であるかのように振る舞うのです。

これは重力によって支配される巨視的世界と、量子力学が支配する微視的な世界の境界をまたいだ状態だといわれます。

ただ、この状態を作るにはあまりに必要な温度が低すぎることや、観測行為自体が状態を壊してしまうなど、非常に不安定なため詳しいことはまだわかっていません。

絶対零度に近づいたときの奇妙な現象は、他にもいろいろと報告されていて、2017年に『Nature Physics』に掲載された研究では、が容器に注ぐことのできる液体の状態になると報告されています。

このような不思議な現象を解明するため、研究者たちはできる限り絶対零度へ近づくための試みを続けているのです。

そして今回、ドイツの研究チームは、粒子がほぼ完全に停止する低温からわずかに38pKだけ高いという温度に到達することを成功させたのです。

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