あらゆるものが静止した絶対零度まであと38兆分の1度というところまで近づいた
あらゆるものが静止した絶対零度まであと38兆分の1度というところまで近づいた / Credit:canva
physics

ほぼ絶対零度「0.000000000038K(ケルビン)」まで温度を下げることに成功 (2/2)

2021.10.20 Wednesday

2021.10.19 Tuesday

前ページ理論上もっとも低い温度

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絶対零度に至る方法

今回の実験では、磁場のかかった真空チャンバー内に10万個のルビジウム原子の雲を閉じ込め、これを0.000000002Kまで冷却しました

これ自体が世界記録の低温ですが、チームはここからさらなる低温を目指しました。

しかし、その極端な低温では重力の影響が問題になってきます

重力は物質を引っ張って運動エネルギーを発生させるため、これが邪魔になるわけです。

完全な絶対零度は、深宇宙の状態を模倣する必要があります。

そこで、チームはブレーメン大学の微小重力研究センターにある「Fallturm Bremen(フォールタームブレーメン)」という施設に、この低温実験装置を持ち込みました。

これは高さ122メートルの塔のような施設で、自由落下を利用して無重力状態を生み出します。

Fallturm Bremenの写真。高さ122メートルの塔でここから落下させることで無重力状態を生み出す。
Fallturm Bremenの写真。高さ122メートルの塔でここから落下させることで無重力状態を生み出す。 / Credit:en.Wikipedia

チームは、低温の真空チャンバーをこの施設で自由落下させ、その最中に磁場をオフにしてルビジウム原子を重力に妨げられずにBECの状態で浮遊させ、原子の運動をほぼゼロにしたのです。

こうして達成されたのが「38pK(ピコケルビン)」という超低温で、約2秒間持続しました

これが現在の限界まで絶対零度に近づいた最新記録となります。

研究者によると、これは宇宙のような真の無重力条件下で行えば、17秒間持続させることが可能だとのこと。

なお、現在確認されている自然でもっとも低温の場所は、地球から約5000年離れたケンタウルス座ブーメラン星雲で、その平均気温はマイナス272℃(約1ケルビン)だそうです。

MITの研究者は、こうした超低温がいずれ良い量子コンピュータを構築するために役立つだろうと語っています。

【編集注 2021.10.20 11:10】
記事内容に38pKを38兆分の1と表記している箇所があったため、修正させていただきました。
38pKは0.000000000038Kになります。

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