うつになると過度に失敗を恐れ消極的になりがち
うつになると過度に失敗を恐れ消極的になりがち / Credit:depositphotos
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過度に失敗を恐れて消極的になる人の脳で何が起きているか?

2022.03.27 Sunday

過度に失敗を恐れて行動が消極的になりがちな人の脳で何が起きているか? ―行動の動機づけシステムに基づく不安障害やうつ病の治療の実現に有用な知見― https://www.qst.go.jp/site/press/20220322.html
Brain 5-HT 2A receptor binding and its neural network related to behavioral inhibition system https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35006540/

古くから人の行動には、「報酬」と「罰」が関連していると言われています。

そのため消極的な人は、失敗や罰を過度に恐れる傾向があるといえるでしょう。

こうした消極性は、不安や抑うつなど、ネガティブな感情を抱える問題とも関連してきます。

ではこうした消極的になり不安を抱えているヒトの脳内では、何が起こっているのでしょうか?

この問題について、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構らの研究グループは、罰を回避する傾向の強い人は、不安や抑うつなどの負の感情制御に関わる前頭葉脳機能ネットワークの働きが弱く、セロトニン2A受容体密度が低いということを明らかにしました。

こうした人間の行動抑制系に関する脳の働きと、不安症状との関連を示せたことは、これに基づく新しい治療戦略に役立つ可能性があります。

量子科学技術研究開発機構による報告は、2022年1月10日付で科学雑誌『National Library of Medicine』に掲載されています。

消極的な人ほど、「負の感情」を制御する脳内ネットワークが弱い

ヒトを含む動物の行動は、おもに「報酬への接近」「罰の回避」の2つに大きく分かれると古くから言われています。

具体的に、前者は「目標達成や報酬獲得のために行動を活発化する系」、後者は「罰や損害を回避するために行動を抑制する系」というように、2つの動機づけシステムによって制御されます。

このうち、後者の「行動を抑制する系」は、不安や抑うつといったネガティブ感情と関連しますが、それでいて、内で何が起きているかはわかっていません。

一方で、これまでの研究によると、脳内に広く分布するセロトニン2A受容体は、ネガティブ感情の調節に関与していることが報告されています。

(セロトニン:中枢神経系にある神経伝達物質で、ドーパミン・ノルアドレナリンを制御し、精神を安定させる働きをもつ。これが低下すると、不安や抑うつを発症する)

行動抑制系の脳内メカニズムはどうなっているか?
行動抑制系の脳内メカニズムはどうなっているか? / Credit: canva

そこで今回、量子科学技術研究開発機構は、行動抑制系の脳内メカニズムを明らかにするべく、調査を開始。

健康な成人16名に協力してもらい、アンケート検査による罰回避や不安傾向のレベル測定と、PET検査によるセロトニン2A受容体の密度の測定、それからfMRIによる脳活動の測定を行いました。

(PET:ポジトロン断層撮像法。専用の装置で陽電子を検出することで、さまざま病態や生体内物質の挙動を画像化する技術)

アンケート検査では以下のようなことを質問しています。

  • 何かが手に入るかどうか不確かなとき,それについて欲しがらないほうがよいと思いますか?
  • 新しい状況や予期しない状況をよく不安に思いますか?
  • 十分に準備していなかった仕事や課題があるとき、それがうまくいかないかもしれないことがとても気になりますか?
  • 困難な状況下では、あなたはたいてい弱気になりますか?
  • あなたは、自分がやったこと、やらねばならないことについて考えていると、眠りにつけないことがよくありますか?
  • 自分が言ったことや行ったことによってよく心配になりますか?
  • 一般的に、楽しい出来事よりも、良くないことが起きるおそれに、より注意を払いますか?
  • 気恥ずかしい思いをしないように、ものごとを行うことを差し控えることがありますか?

すると、アンケート検査で罰への感受性が高かった人ほど、絶望感と不安が高いことが示されました。

罰回避傾向と絶望感および不安との相関
罰回避傾向と絶望感および不安との相関 / Credit:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

そして、PETおよびfMRI検査の結果、罰回避や不安傾向が強い人ほど、ネガティブ感情を制御する脳機能ネットワークが弱く、前頭葉のセロトニン2A受容体の密度が低いことが判明したのです。

罰回避傾向とセロトニン2A受容体および安静時脳機能ネットワークの関係
罰回避傾向とセロトニン2A受容体および安静時脳機能ネットワークの関係 / Credit:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

これは、行動抑制系に関して、脳内で起きていることを分子レベルで明らかにした初の研究です。

本研究の成果により、不安やうつ症状を緩和するには、セロトニン神経伝達の機能を調節する薬剤が有効であると示唆されました。

よく不安やうつ症状を抱えるヒトは、何をするにも億劫だったり、周りに助けを求めることもできない、という状況が聞かれますが、これも脳で行動抑制系が支配的になっていることに原因があるのかもしれません。

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