国内初のサル痘感染者を確認、感染経路の98%が男性同士の性行為
国内初のサル痘感染者を確認、感染経路の98%が男性同士の性行為 / Credit: canva
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「サル痘」感染者の95%で”男性同士の性的接触”による感染が疑われる(ロンドン大)

2022.07.26 Tuesday

今年5月から、欧米を中心に世界各国で急速に感染が拡大している「サル痘(monkeypox)」

感染者はすでに世界75の国と地域で1万6000人を数え、アフリカでは5人の死者が確認されています。

これを受け、WHO(世界保健機関)は今月23日に「緊急事態宣言」を出しましたが、その矢先の7月25日、国内初となるサル痘患者が確認された、と報道がありました。

そのため、サル痘とは一体どんな病気なのか知っておく必要があるでしょう。

症状感染経路ワクチンの有無予防法、さらには、今回の世界的な感染拡大に見られる特徴など、現時点でわかっていることについて解説していきます。

Monkeypox is being driven overwhelmingly by sex between men, major study finds https://www.nbcnews.com/nbc-out/out-health-and-wellness/monkeypox-driven-overwhelmingly-sex-men-major-study-finds-rcna39564 「コロナのような感染はしない」サル痘国内で初確認 致死率は?治療法は?専門家解説 https://www.youtube.com/watch?v=3fzdF_Ir2Aw&list=TLGGaoN8q-xMM-UyNTA3MjAyMg
Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries — April–June 2022 https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2207323

「サル痘」ってどんな病気?

サル痘は、サル痘ウイルスへの感染で発症する急性の発疹性疾患です。

おもに、アフリカ大陸の熱帯雨林に生息するげっ歯類(ネズミやリス)が自然宿主となっており、それらに噛まれたり、感染個体の血液や体液、発疹部位に触れることで伝染します。

人から人への場合は、患者との直接的な接触(血液・体液・発疹部位への接触、および性行為を含む)近距離での飛沫への曝露患者の使用した衣服や寝具に触れることで感染します。

発熱後に発疹が出て、全身に広がる
発熱後に発疹が出て、全身に広がる / Credit: jp.depositphotos

潜伏期間は、およそ7〜14日(最大幅は5〜21日)とされ、発熱や頭痛、倦怠感、筋肉痛、リンパ節腫張が0〜5日ほど続いた後、発疹があらわれます。

発疹は一般に、顔から始まって全身に広がります。

発疹は徐々に水ぶくれに変わり、破裂後にかさぶたとなって、だいたい2〜4週間で治癒します。

基本的には軽症で済みますが、肺炎や敗血症を併発するケースもあり、妊婦や幼児が感染すると、重症化する危険性もあるとのこと。

感染者の98%が「男性同士の性行為」によるもの

一方で、今回の世界的な感染拡大は、従来のサル痘の広がり方とは少し様子が違うといいます。

WHOの報告によると、感染者のほぼ全員が男性で、かつ男性同士の性的接触が原因となっていたのです。

英ロンドン大学クイーン・メアリー校(QMUL)らの国際医学研究チームは、このほど、2022年4月27日から6月24日の間に、16カ国43施設で診断された528人のサル痘患者を調査。

対象となったのは、アメリカ大陸の患者が84人(16%)、ヨーロッパ、イスラエル、オーストラリアの患者が444人(84%)で、75%が白人、年齢の中央値は38歳(18〜68歳)となっています。

分析の結果(New England Journal of Medicine, 2022)、感染者の実に98%がゲイまたはバイセクシャルの男性であると判明したのです。

また、そのうちの41%は、性的接触によるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)にも感染していました。

感染者の95%に、男性同士の性的接触が確認されており、症状としては、95%が発疹、73%が性器病変、41%が粘膜病変を発症しています。

発疹に先行する全身症状としては、発熱(62%)、筋肉痛(31%)、頭痛(27%)、リンパ節腫脹(56%)でした。

感染者の98%が男性の同性愛者と判明
感染者の98%が男性の同性愛者と判明 / Credit: canva

以上の結果から、現在流行しているサル痘は「男性同士の性行為」が主要な感染経路になっていると結論されます。

また、今回のケースでは、発熱なしに発疹が出る事例が多く、知らぬ間に他人にうつしてしまう危険性もあるようです。

患部に激しい痛みを伴うことが多いようですが、重症化する患者はほぼおらず、アフリカ以外では死者はまだ出ていません。

専門家は、重症化ケースが少ない理由について、感染者の多くが比較的若い成人男性だからだと考えています。

しかし、だからと言って、それ以外の人がまったく感染しないとは限りません。

次ページでは、予防法からワクチンの有無、また、WHOが”ウイルスと同等に懸念するもの”について話します。

次ページ「天然痘ワクチン」が有効、「手洗い・うがい」も予防効果あり

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