豪ニューサウスウェールズ州の町マニンディーの川を覆い尽くす大量の魚の死骸
豪ニューサウスウェールズ州の町マニンディーの川を覆い尽くす大量の魚の死骸 / Credit: Chris O’Keefe(Twitter, 2023)
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何が起きた?オーストラリアの川が数百万匹の「魚の死骸」で埋め尽くされる

2023.03.22 Wednesday

「川一面が魚の死骸に覆い尽くされる」

そんな地獄絵図が今、オーストラリアで起こっているようです。

ニューサウスウェールズ州政府は先日17日、同州の最西端の町メニンディー(Menindee)を流れるダーリング川で数百万単位の魚が大量死していると発表しました。

SNSに投稿された動画には、何十キロにもわたって川を覆い尽くす大量の魚が映されています。

一体なぜこのような事態が発生したのでしょうか?

Millions of Dead Fish Blanket Australian River in Hypoxia Disaster https://www.sciencealert.com/millions-of-dead-fish-blanket-australian-river-in-hypoxia-disaster ‘One million fish’ dead on the Darling River in outback NSW https://www.news.com.au/technology/environment/one-million-fish-dead-on-the-darling-river-in-outback-nsw/news-story/dba797cd3b95a5282d3f720e9638f335 How did millions of fish die gasping in the Darling – after three years of rain? https://theconversation.com/how-did-millions-of-fish-die-gasping-in-the-darling-after-three-years-of-rain-202125

地元住民「マスクをしなければ立っていられないほどの悪臭」

こちらが先日17日(金)にTwitter上に投稿されたダーリング川の状況です。

一面に魚の死骸がぎっちり詰まっており、川がほとんど見えなくなっています。

州政府の漁業報道官であるキャメロン・レイ(Cameron Lay)氏は「見渡す限り魚がいる場所が何十キロも続いていおり、非常につらい光景です」と話しています。

メニンディーは都市部から離れた田舎町であり、人口は約500人と少ないですが、住民はこの地獄絵図に不安の色を隠せません。

地元の自然写真家であるジェフ・ルーニー(Geoff Looney)氏は、先週16日(木)に現場で魚の大量死を目撃し、「悪臭がひどく、マスクをしなければ立っていられないほどでした」と話します。

また「ダーリング川の上流の水は町のポンプ上にも流れ込んでいるため、自分の健康が心配になりました」と続けます。

数百万匹におよぶ魚の大量死はなぜ起こった?

こうした野生下での魚の大量死は、現地で「フィッシュキル(Fish kills)」と呼ばれています。

フィッシュキルはどの時期でも発生する可能性がありますが、過去のデータによると、夏場の猛暑や気温の急激な変化で最も発生率が高まるという。

南半球に位置するオーストラリアは北半球とは季節が逆になり、12月〜2月が夏で、3月に入っても十分な暑さが残ります。

特にメニンディーは近年、干ばつと洪水の両方に見舞われており、同地域でフィッシュキルが起きるのは2018年以来3度目です。

2019年には、長引く干ばつと川面に大量発生した有毒藻類が原因で、約40キロメートルにわたり数十万匹の魚が死んでいます。

州政府は当時「残念ながらこれが最後にはならないだろう」と警告していましたが、まさにその予感は的中してしまいました。

しかも今回のケースは、前回の規模をはるかに上回る数百万匹の魚が被害を受けています。

ダーリング川を覆う魚の死骸(『Al Jazeera English』ニュースより抜粋)
ダーリング川を覆う魚の死骸(『Al Jazeera English』ニュースより抜粋) / Credit: Al Jazeera English – Millions of dead fish clog up Australian river near remote town(youtube, 2023)

州政府によると、マニンディーでは2月下旬から3週間ほど大雨が続いたことで、町が洪水に見舞われていたといいます。

そのせいでダーリング川が増水し、川魚たちが一挙に大繁殖していました。

ところが大雨が止み、洪水が引いたことで、川の水位が大幅に下がり、一転して大量の魚たちが死んでしまったのです。

州政府は「今回の魚の大量死は、洪水が引いたことによる水中の酸素濃度の低下(低酸素症)が関係している」と指摘。

加えて「暖かい水は冷たい水よりも酸素を保持しにくく、魚は温度が高いほど多くの酸素を必要とするため、現在も続くマニンディーの暑さが川の低酸素症を悪化させている」と説明しました。

それまで豪邸に住んでいた大家族が突然、四畳一間に押し込まれるようなものでしょう。

左:ボニーブリーム、右:マーレーコッド
左:ボニーブリーム、右:マーレーコッド / Credit: en.wikipedia(左)、ja.wikipedia(右)

ダーリング川では、ボニーブリーム(Bony bream)といった小型の淡水魚から、マーレーコッド(Murray cod)などの大型魚まで被害を受けています。

ニューサウスウェールズ州西部の全域ではまだ暑さが続くため、今後もしばらく被害が拡大すると懸念されています。

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