メガロドンが人間を襲ったとしたら……
メガロドンが人間を襲ったとしたら…… / credit:Pixabay
paleontology

実は泳ぐのが遅かった?!メガロドンが絶滅した理由

2023.09.03 Sunday

映画にもなっている巨大な古代サメ「メガロドン」は、かつて食物連鎖の頂点でした。

しかし、圧倒的に大きく、強かったにも関わらず、メガロドンは260万年前に絶滅したとされています。

絶滅の理由は一体何なのでしょうか?

メガロドンの化石を分析すると、意外なメガロドンの「弱点」が明らかになりました。

この記事ではそんなメガロドンの弱点と、絶滅した理由をご紹介します。

Tiny scales reveal Megalodon was not as fast as believed, but mega-appetite explains gigantism https://resources.depaul.edu/newsroom/news/press-releases/Pages/megalodon-scales-2023.aspx Is Megalodon alive? How we know the biggest shark is extinct https://www.zmescience.com/feature-post/pieces/is-megalodon-alive-or-extinct/
Tessellated calcified cartilage and placoid scales of the Neogene megatooth shark, Otodus megalodon (Lamniformes: Otodontidae), offer new insights into its biology and the evolution of regional endothermy and gigantism in the otodontid clade https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08912963.2023.2211597 Endothermic physiology of extinct megatooth sharks https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2218153120

メガロドンは泳ぐのが遅かった?

メガロドンの楯鱗(じゅんりん)
メガロドンの楯鱗(じゅんりん) / credit:DePaul University

サメは軟骨動物であるため、化石が歯や鱗しか残っておらず、それらを分析することで体長や生態などの推定が行われています。

アメリカ・デポール大学の島田健州氏らの研究グループは、メガロドンの楯鱗(じゅんりん、サメやエイなどで見られる歯に似た形状の鱗)の化石から、メガロドンの遊泳速度が遅かった可能性を指摘しました。

この論文はHistorical Biologyに2023年6月23日付けで掲載されています。

メガロドンの「小さな」鱗からわかる真実

突起間距離と遊泳速度の相関。Omがメガロドン、Ccがホホジロザメ
突起間距離と遊泳速度の相関。Omがメガロドン、Ccがホホジロザメ / credit:Historical Biology

楯鱗は画像のように3つの小さな突起を持っており、この突起間の距離と遊泳速度には負の相関があると言われています。

突起間の距離が狭いほど遊泳時の水の抵抗を受けずに済み、速く泳げるというわけです。

メガロドンは巨大なサメですが、楯鱗の大きさに関しては他のサメとあまり変わりません。

このため、現代を生きるサメたちと同様、楯鱗の突起間の距離によって遊泳速度が推定できると考えられます。

メガロドンの楯鱗の突起間から遊泳速度を算出したところ、時速0.9~3.0kmとなり、高速で泳ぐサメではなかったことが明らかとなったのです。 

メガロドンの遊泳速度はジンベエザメ以下

上からメガロドン、ホホジロザメ、ジンベエザメ
上からメガロドン、ホホジロザメ、ジンベエザメ / credit:Wikipedia

メガロドンの体の大きさは10~20mと言われ、ジンベイザメと同程度ですが、ジンベイザメの平均遊泳速度は時速3.1kmと言われています。

水族館などのジンベイザメを思い描いてみると、それよりも遅い時速0.9~3.0kmで泳ぐメガロドンはかなりゆったり泳いでいたことがイメージできます。

しかし、この結果はメガロドンが大きいだけのノロマなサメだったということを示すものではありません。

メガロドンはジンベイザメのようにプランクトンなどの小さな生き物を食べていたわけではなく、クジラやイルカなどの大型海洋哺乳類を食べていたことは、それらの噛み跡の化石などからも証明されています。

イルカの泳ぐ速さは最大時速50kmにも及ぶとされていますから、メガロドンもそれくらいの速度で泳げなくてはなりません。

このため、メガロドンは獲物がいたら急加速して噛みつき、それ以外は体力を温存し気配を消すようにゆったりと泳いでいたのだと考えられています。

実際にメガロドンとほぼ同じ食性のホホジロザメも遊泳速度は4km/hですが、獲物を捕らえるときには50km/hくらいまで加速できます。

このように遊泳速度は遅くとも獲物を狩ることにおいては影響がなかったと考えられるメガロドンですが、一体なぜ絶滅してしまったのでしょうか?

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