「アインシュタインがスマホを持っていたなら」AIアートがスマホ依存症のリスクを警告
「アインシュタインがスマホを持っていたなら」AIアートがスマホ依存症のリスクを警告 / Credit:Alex Wadelton
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歴史上の偉人がスマホ依存症だったら!?「生産性のないスマホ利用」への警告

2023.10.12 Thursday

日常的にスマホを使用することは、今や「ごく普通」のことです。

しかし、オーストラリアのスウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)コンピューティング技術学部に所属するサキブ・ナワズ氏は、インタビューの中で、「現代の人々は容易にスマホ依存症になってしまう」と述べています。

そしてスマホへの依存が、「単なる使い過ぎ」ではなく、他の依存症と同じく「臨床的な依存症」として認識されるべきだと訴えています。

また同様の訴えは、オーストラリアのアーティストであるアレックス・ウェイデルトン氏によってもなされています。

彼は画像生成AIを用いて、「スマホをぼんやりと眺める歴史上の人物」を描写し、こう問いかけました。

「もし彼らが私たちのようにスマホを使っていたら、果たして偉業を成し遂げただろうか」

Dependent on your phone? It could be the gateway to addiction https://www.scimex.org/newsfeed/dependent-on-your-phone-it-could-be-the-gateway-to-addiction AI-generated portraits question the influence of historic figures in an era of smartphones https://www.designboom.com/art/ai-generated-portraits-historic-figures-smartphones-alex-wadelton-what-could-have-been-10-09-2023/
Rethinking classifications and metrics for problematic smartphone use and dependence: Addressing the call for reassessment https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S245195882300060X

オーストラリアの研究者とアーティストが改めて「スマホ依存症」の危険性を訴える

私たちは、「スマホ依存症」という言葉をよく知っています。

とはいえ、単に「スマホを長時間使用すること」が問題なのかと問われると、そうではないように思えますね。

なぜなら仕事や生活にパソコンや他のデジタル機器が欠かせないのと同じように、スマホもまた欠かせない道具となっているからです。

一方、スマホを使ったSNSやゲーム、動画、ポルノなどがやめられないケースも増えており、それらは医学的に「依存症」とされる状態のようです。

スマホ依存症の子供たち
スマホ依存症の子供たち / Credit:Canva

しかし現在のところ、「スマホ依存症」は公的に認められた病気ではなく、明確な定義が存在しません。

これはスマホ依存症に問題が無いという意味でなく、研究が十分に進んでいないためです。

そのため、スウィンバーン工科大学の研究者であるサキブ・ナワズ氏は、2023年9月に発表された論文の中で、何をもって「スマホ依存症」と呼ぶのか、分類や指標を再評価する必要があると述べています。

そして彼はインタビューの中でも、スマホへの依存が他の依存症と同じく、正式な「依存症」として認められるべきだと訴えています。

スマホへの依存は、それだけ私たちにとって有害であり、容易に重症化してしまうというのです。

実際、ナワズ氏によると、「経験豊かな多くの研究者が、物質関連障害(物質に関する依存・病的な行動パターン)嗜癖(しへき:有害な結果を被っているにも関わらず、それをやめられない状態)と、スマホ依存症との顕著な類似点を指摘している」ようです。

そしてスマホ依存症の恐ろしさを改めて伝えているのは、ナワズ氏のような研究者だけではありません。

オーストラリアのアーティストであるアレックス・ウェイデルトン氏は、画像生成AIを用いた「What Could Have Been」と題するシリーズを公開しています。

そこでは歴史上の偉人たちがスマホを持っている場面が描かれています。

虚ろな目でスマホをスクロールし続けるアインシュタイン。AIアート
虚ろな目でスマホをスクロールし続けるアインシュタイン。AIアート / Credit:Alex Wadelton

虚ろな目でスマホを眺める姿は現代の私たちそのものですが、歴史上の偉人たちに当てはめると、大きな教訓が得られます。

世界中の人々は、毎日4時間近くスマホの画面を見つめています。

もし、アルベルト・アインシュタインがスマホで画面をスクロールし続けることに1日4時間以上も費やしていたらなら、果たして相対性理論を発表することができたでしょうか。

夜な夜なスマホをいじるナポレオン。AIアート
夜な夜なスマホをいじるナポレオン。AIアート / Credit:Alex Wadelton

もし、ナポレオン・ボナパルトがスマホを触り続けていたなら、ヨーロッパ大陸の大半を勢力下に置くことができたでしょうか。

世界地図をひたすら眺めたり、侵略ゲームに熱中したりするだけで、行動することをあきらめたかもしれません。

写真の加工に忙しいモネ。AIアート
写真の加工に忙しいモネ。AIアート / Credit:Alex Wadelton

もし、クロード・モネがスマホ依存症だったなら、代表作の「印象・日の出」は生まれていなかったかもしれません。

それどころか、撮った写真をいろんなフィルターにかけることに忙しく、絵を描くこと自体やめていたかもしれません。

スマホに生涯を費やし、片手間で人々を助けるマザー・テレサ。AIアート
スマホに生涯を費やし、片手間で人々を助けるマザー・テレサ。AIアート / Credit:Alex Wadelton

マザー・テレサも睡眠不足でそれほど多くの人々を助けられなかったでしょう。

これらのアートから分かるのは、生産性のないスマホの使用が今と将来を台無しにするということです。

では、スマホ依存症の定義がはっきりとしていない現代で、依存とその最悪の結果から、どのように身を守れるでしょうか。

バランスが大切。仕事以外で「ダラダラとスマホを見る」ようなことは控えるべき
バランスが大切。仕事以外で「ダラダラとスマホを見る」ようなことは控えるべき / Credit:Canva

研究者のナワズ氏は、スマホのメリットとデメリットを意識し、バランスをとることが大切だと指摘しています。

「単にスマホを使わない」のではなく、デメリットになりえる場面での使用をあらかじめ制限しておくべきなのです。

そしてもし「スマホをチェックできないとイライラしたり不安になったりする」など依存の傾向があるなら、次のような対策をとるよう勧めています。

  • 「1日○時間まで」など、スマホの使用時間に制限を設ける
  • 愛する人と顔を合わせて過ごす機会を作る
  • 朝や夕方など電子機器を使用しない時間を決めておき、スマホ以外に使う時間をあらかじめ計画しておく

結論としてナワズ氏は、「現在にもっと集中することで、ストレスの軽減、生産性の向上が得られ、社会的つながりが深まる」と述べています。

将来、私たちは、アインシュタインやモネのように、偉業を成し遂げるかもしれません。

大きな可能性に満ちているのです。

ただし、スマホ依存症でなければ、の話ですが。

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