味覚には食事のペースを落とす役割もあった
味覚には食事のペースを落とす役割もあった / Credit:Canva
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私たちの満腹感は「味覚」からも制御されていた

2023.12.02 Saturday

誰もが、「ご飯が美味しくて、ついつい食べ過ぎてしまった」と後悔したことがあるはずです。

思い返してみると、私たちは常に満腹感だけを手がかりに食事の量を調整しているわけではありません。

人は、満腹過ぎて食べすぎることもあれば、どんなに美味しいものを食べるとしても、食事のペースをある程度保てるときもあります。

最近、アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)生理学部に所属するザカリー・A・ナイト氏ら研究チームは、食事のペースや量が胃の満腹感だけでなく味覚などから生じる口の刺激による信号でも制御されていることを報告しました。

胃が膨れて食欲が収まるメカニズムはよく知られていましたが、実は味覚にも食事ペースを調整する機能があったのです。

研究の詳細は、2023年11月22日付の科学誌『Nature』に掲載されました。

From the First Bite, Our Sense of Taste Helps Pace Our Eating https://www.ucsf.edu/news/2023/11/426631/first-bite-our-sense-taste-helps-pace-our-eating The role of the brainstem in appetite suppression https://www.news-medical.net/news/20231128/The-role-of-the-brainstem-in-appetite-suppression.aspx
Sequential appetite suppression by oral and visceral feedback to the brainstem https://www.nature.com/articles/s41586-023-06758-2

食欲を司る脳幹を紐解く

私たちの食欲と食事ペースを制御しているのはです。

食事によって胃腸に食物が送られると、胃から脳に信号が送られ「満腹感」を感じるのです。

多くの人は、人間の食欲を制御するプロセスはこれだけだと考えています。

食欲を抑制するプロセスは、脳幹の奥に秘められている
食欲を抑制するプロセスは、脳幹の奥に秘められている / Credit:Canva

しかし実は、科学者たちによって、「味覚が食べるスピードを制限している」可能性も示唆されてきました。

食事のペースを落とすメカニズムは、「胃から脳に信号が送られる」だけでなく、「味覚から脳に信号が送られる」というプロセスも関係しているかもしれないのです。

ところが、これらのプロセスを制御する脳細胞は、脳幹(大脳を支える幹のような形をした部分)の深いところに位置しており、食事中の脳活動を研究することは難しく、長年放置されてきました。

今回、ナイト氏ら研究チームは、最新の技術を用いたマウス実験によって、食事中のマウスの脳活動を画像化および記録することに成功しました。

これにより、食事ペースを抑制する2つの脳細胞「PRLH(prolactin-releasing hormone)ニューロン」と「GCG(glucagon gene)ニューロン」がどのように活性化するか知ることができました。

次ページマウスの摂食行動を抑制する「口」と「胃腸」のプロセス

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