最もヤバい生物学ニューストップ7
最もヤバい生物学ニューストップ7 / Credit:川勝康弘
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最もヤバい生物学ニューストップ7

2023.12.30 Saturday

コロナ渦の記憶が薄れつつある今日この頃。

世界中でストップししていた生物学の研究も再開され、次々に面白い研究成果が発表されはじめました。

そこで今回は2023年に発表された生物学研究の中で特に興味深いものを独断と偏見と反響をもとにランキング形式で紹介したいと思います。

まずは「脳がないのに学習するクラゲ」からです!

ヤバすぎる生物学研究トップ7

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘

デンマークのコペンハーゲン大学(KU)で行われた研究によって、のあるなしにかかわらず、神経系そのものに学習を行う仕組みが存在している可能性が示されました。

研究者たちは、学習や記憶といった基本的な仕組みの起源が、脳を持つ生物が誕生する以前から存在しており、現代のクラゲにも引き継がれていると述べています。

この結果は非常に重要です。

私たちは脳ができて、その後学習がはじまったと考えていました。

第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!
第7位:脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明! / Credit:川勝康弘

しかし研究結果は、神経系そのものが学習機能を元々有していることを示しています。

またこの発見は、神経の進化と学習の本質について全く新しい洞察を提供します。

脳がなくても高度な学習が成り立つなら、高度な意思や高度な思考も同じようなことが言えるのでしょうか?

脳がないクラゲでも高度な学習ができると判明!

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中
第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中 / Credit:川勝康弘

米国のCDC(アメリカ疾病予防管理センター)はマダニに刺されることで牛や豚など哺乳類の肉や乳製品を食べられなくなる「アルファガル症候群」が増加していることを受けて、医師たちの症例にかんする知識を調査しました。

「孤独の星」の名前を持つマダニに刺されると、哺乳類の肉(牛肉、豚肉、鹿肉など)、乳製品、ゼラチン、一部の薬剤に対してアルファガル症候群 (AGS)という危険なアレルギーを引き起こす可能性があります。

「肉の部品(アルファガル)」は単体では無害ですがマダニの唾液と一緒に入り込むことで免疫系が勘違いを起こして敵と認識し、次回以降にアルファガルを含む哺乳類の肉を食べると、免疫反応が体を駆け巡りアレルギーを起こしてしまうのです。

不良(マダニの唾液)と一緒にやってきたことで何の害もない真面目な学生(アルファガル)も不良の一味とし警察(免疫)に認定されてしまうようなものです。

この症例で最も一般的にみられるのが胃腸症状で下痢や嘔吐などが起こります。

また蕁麻疹が出る患者も報告されています。

しかし反応が激しいとアナフィラキシーを発症する患者もおり、呼吸困難など深刻な状態に陥ることもあります。

第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中
第6位:刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中 / Credit:川勝康弘

ですが最も大きな問題は、現在のところアルファガル症候群の治癒法がないことです。

そのためアルファガル症候群になってしまった患者は哺乳類の肉や乳製品全般の摂取を避ける生活をはじめることになります。

ただアルファガルは哺乳類ではない鶏肉や魚肉には含まれていないため、ある程度の代用は可能です。

(※なお余談ですが人間の肉にもアルファガルは含まれていません)

また幸いなことに、一度噛まれただけならば症状は5~6年かけてゆっくりと収まっていきます。

これはアルファガルを敵と認識する免疫細胞の記憶がその期間しか持続しないことに起因します。

しかし二度目に噛まれるとアルファガルに対する免疫記憶が一生涯続くようになり、多くの人は二度と哺乳類の肉を食べられなくなってしまいます。

牛肉や豚肉やミルクを愛する人々にとっては残酷な結末と言えるでしょう。

刺されると「お肉」が食べられなくなるマダニが急増中

第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!

第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!
第5位:がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発! / がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発! / Credit:Martyna W. Sroka . Myo-differentiation reporter screen reveals NF-Y as an activator of PAX3–FOXO1 in rhabdomyosarcoma . PNAS (2023) . SQUARE ENIX

「殺せないなら、仲間に加えればいい」

米国のコールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)で行われた研究により、増殖力が高い危険な肉腫細胞を、普通の筋肉細胞に変化させる技術が開発されました。

これまでがん治療は、腫瘍を手術で取り除いたり抗がん剤などでがん細胞を殺すことで「体からの排除」が行われていました。

ところが新たな方法ではがん細胞に「がん」という属性を捨ててもらい、普通の細胞として生きていく共存共栄が目指されています。

人間社会で例えるならば、社会(体)に巣くうマフィア(がん細胞)たちに健全な職場を斡旋し、普通の社会人(普通の細胞)になってもらう方法と言えるでしょう。

マフィア構成員もがん細胞も同じく「しぶとい」性質があり、無理矢理排除しようとしても上手くいきません。

しかし普通の細胞に戻るという選択肢は、がん細胞も生存を約束され、体も健康を取り戻すことができるため、WIN‐WINの関係を築くことが可能になります。

コールド・スプリング・ハーバー研究所(CSHL)では、がん細胞を「転職」させて普通の細胞に戻す技術について6年間にわたり研究を続けており今回、肉腫細胞を筋肉細胞に変化させることに成功しました。

がん細胞を「普通の細胞」に転職させる新たな方法を開発!

第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情

第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情
第4位:オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情 / Credit:川勝康弘

思春期の男子の多くはある日を境に、自分が自然と女子を目で追っていることに気が付きます。

そして遅かれ早かれ、女性をみることが性欲を搔き立てることを自覚します。

同様の現象はマウスなど人間以外の哺乳類でも観察されており、オスマウスもメスマウスを認識することで、交尾したいという欲求にスイッチが入ります。

今回、スタンフォード大学の研究者たちは、オスマウスがメスを認識した時の脳内の様子を調査し、認識を性欲に変換する脳回路を発見します。

脳回路を強制的に活性化すると、オスマウスは相手がオスでも無生物でも、ありとあらゆるものと見境なく交尾行するようになりました。

(※ビーカーやチューブが相手でも交尾を試みようとしました)

この結果はサブスタンスPの直接注入で発生する性欲は極めて純粋な存在であり、相手を選ばないものであることを示します。

さらに脳回路の強制起動によって不応期(賢者タイム)を40万分の1以下に短縮することに成功しました。

オスの性欲を支配する脳回路を発見!強制活性化で無生物にも欲情

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