1万3000年前の「彗星衝突」が刻まれていた?
同氏がギョベクリ・テペにある別の石柱を調べていたところ、「おうし座流星群」を描いた可能性が高い彫刻が見つかったというのです。
おうし座流星群は約1万3000年前(おおよそ紀元前1万850年前とされる)に始まった「ヤンガードリアス」という寒冷化の原因の一つとされるものです。
彗星はガスや塵などを放出しながら太陽の周りを周回する天体です。そのため彗星の軌跡にはその断片が数多く残っています。そんな彗星の軌跡と地球の軌道が重なると、彗星の断片が地球の大気圏で次々に燃えて流星群という現象を起こします。
ヤンガードリアスについては、おうし座流星群を発生させる原因天体であるエンケ彗星の大きな断片が地球に落下し、これが空中爆発を起こした際に各地で火災や膨大な塵を上空に広げ、地球規模の寒冷化を引き起こしたという説があります。
この影響でアメリカ大陸に生息していたサーベルタイガーやマストドンと言った大型動物が絶滅したとされており、人類のライフスタイルが狩猟採集から農耕牧畜に変化するきっかけにもなったとも言われています。
![ヤンガードリアスを引き起こす原因とな彗星衝突を描いたイメージ図](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/d45319e9b6a56e462a2c1c2b640ba7f1-900x495.jpg)
ただヤンガードリアスの原因は未だ明確ではなく、彗星衝突(おうし座流星群原因説)はあくまでこれを説明する説の1つです。
ヤンガードリアスが彗星衝突によって起こったことを支持する証拠としては、北米を中心とする当時の年代の地層から特殊なナノダイヤモンドや溶融ガラスが見つかっていることが挙げられます。
これらはかなりの高温・高圧の条件下でしか形成されないため、彗星衝突で作られた可能性が高いのです。
その一方で、彗星衝突の説を否定する研究者も多く、火山活動や気候システムの自然な変動からヤンガードリアスが起こったとする意見もあり、議論はいまだに続いています。
しかし今回、ギョベクリ・テペに見つかった彫刻が本当に「おうし座流星群」を示すものであれば、ヤンガードリアスが彗星衝突で起こったとする説を補強するものとなるでしょう。
![調査中のギョベクリ・テペ](https://nazology.net/wp-content/uploads/2024/08/rtam_a_2373876_f0015_oc-799x600.jpg)
ただギョベクリ・テペの彫刻は、実際にヤンガードリアスが始まった時期から1000年ほど後の時代になります。
もしかしたら、当時の人々が祖先から長く言い伝えられてきた「彗星衝突」の出来事を忘れないために石柱に刻んだのかもしれません。
ヤンガードリアスは人々の生活スタイルをガラリと変革させた重大な出来事でしたから、その原因となった彗星衝突イベントを人々の記憶に刻むためにも、彫刻として残すことは理にかなっているでしょう。
スウェットマン氏の主張が正しいかどうかは定かありませんが、ギョベクリ・テペの住人たちが高度な知恵と観察力を持っていたことは確かなはずです。