「第六感」は腸から来ていた? 腸細胞にもシナプスが存在することが示唆される

biology 2018/09/27

Point
・腸から脳への情報伝達は、血中のホルモンを通じて時間を掛けて行われるだけではなく、迷走神経を直接経由して瞬間的に行われることが判明
・腸細胞のシナプスがある種の神経回路と接触し、神経伝達物質がメッセンジャーとなって信号を脳へ伝達する
・研究は、脳が空腹や満腹感を感じる仕組みを知る手掛かりになるとともに、”gut feeling(腸の感覚、直感的な感覚)”の存在を裏付ける

大事なプレゼンの前に吐き気がしたり、食べ過ぎた後に頭がぼーっとしたことがある人は誰でも、腸と脳の深い繋がりを意識したことがあるのではないでしょうか。

摂食障害から糖尿病、関節炎、うつ病にいたるまで、あらゆる病気が腸から始まるかもしれないことは、今や多くの科学者が知るところです。しかし、「第二の脳」と呼ばれる腸からの信号が、どのようにして脳へ伝わるかはこれまで明らかになっていませんでした。

これまで科学者らは、血中のホルモンがこの伝達を間接的に担っていると考えていました。しかし今回、デューク大学医科大学院の研究者による研究で、腸から脳への情報伝達は、ホルモンよりももっと直接的かつ迅速な方法で行われることが示唆されました。研究はScience誌に掲載されています。

A gut-brain neural circuit for nutrient sensory transduction
http://science.sciencemag.org/content/361/6408/eaat5236

研究を行ったのはデューク大学の研究チーム。マウスの腸から脳幹へ送られる信号を追跡したところ、わずか0.1秒未満で信号がシナプスを通過することがわかりました。

脳は、皮膚や筋肉の下に存在する長いシナプスを通る電気信号から、五感で受け取った情報を受け取ります。電気信号の動きは速いため、「扉を開けた瞬間に焼きたてのクッキーの香ばしい香りを感じる」という現象が起きるのです。「いつお腹を満たすべきか」が分かることは生存に不可欠なので、腸は目や耳と同じくらい重要な感覚器なのです。

これまで腸の信号伝達は、腸内の栄養に刺激を受けてホルモンが放出され、食事から数分〜数時間かけて血中に入り、最終的に脳へ作用をもたらす、という段階的かつ間接的なプロセスだと考えられてきました。これは部分的には正しく、たとえば食事に含まれるトリプトファンは眠気を誘う脳内物質セロトニンに変化することで知られています。

対してボオルケス氏は、腸内の感覚細胞が、舌や鼻の感覚細胞と同じ特徴を持ち合わせていることに気づき、腸が発信する合図を脳がもっと素早く受け取る方法があるのではないかと推測しました。

研究チームはまず神経回路のマッピングを試みるため、緑色の蛍光塗料で染めた狂犬病ウイルスをマウスの胃に投与し、ウイルスが腸から脳幹に到達する経路を調べました。すると、ウイルスが迷走神経を経由して脳幹に到達することが観察されました。迷走神経が、直接の回路だったのです。

次に研究チームは、マウスの腸の感覚細胞と脳の迷走神経細胞を一緒に培養し、「腸・脳一体型」の神経回路を再現しました。すると、迷走神経細胞が感覚細胞に結び付き、信号を発し始めたのです。さらにそこへ糖を加えると、信号の速度が上昇しました。糖からの情報伝達の速度は、驚くことに0.1秒にも満たなかったのです。これはまばたきよりも速い速度です。

この発見は、感覚の伝達に関与しているグルタミン酸などの神経伝達物質が、メッセンジャーとして働いている可能性を示唆しています。その証拠に、腸の感覚細胞のグルタミン酸放出を遮ると、伝達は止まりました。ボオルケス氏は、この回路の構造や機能はヒトでも同じだと説明しています。

今回の発見は、新しい感覚についての生物学的基礎を成すでしょう。「この研究は、脳が満腹感を感じる仕組みを知る手がかりになるだけではなく、第六感としての”gut feeling(腸の感覚、直感的な感覚)”が確かに存在することの裏付けにもなります」と、ボオルケス氏は研究の意義を語っています。

研究チームは今後、腸の感覚細胞が食物の栄養素とカロリー値を識別する仕組みを解明したいと考えています。

 

私たちの「第六感」や「直感」は、もしかしたら腸から来ているのかもしれませんね。

 

腸と脳の神経系の病気の関係が明らかに。鍵はトリプトファン

 

via: sciencedaily / translated & text by まりえってぃ

 

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