うつ病発症は幼少期の逆境体験が原因だった 「脳の抑制機能が減退」

life 2019/01/05
Point
■幼少期に逆境体験をしていると、後にうつ症状を発症する可能性が高い
■うつ症状の発生には、反射的な意思決定を制御する「抑制機能」という神経ネットワークに変化が見られる
■うつ病再発の予防対策として、医師たちの間では「バイオマーカー」という身体の状態の客観的診断が重要となっている

子どもの頃に体験した虐待やトラウマは、大人になっても忘れられず、いつまでも頭に刻みつけられるものです。

今回、幼少期の逆境体験はその後のうつ病発症に繋がっているという研究結果が発表されました。詳細は“Social Cognitive and Affective Neuroscience”に10月3日付けで掲載されています。

発表を行ったユタ大学のスコット・A・ランゲネッカー氏は、今回の研究目的について「患者に対する医療措置の意思決定にバイオマーカーがいかにして使用されうるか」ということにあると言います。「バイオマーカー」とは精神的な因子ではなく、身体の状態を客観的に測定するための指標であり、血液検査やMRI画像など多数の方法があります。

Cognitive control and network disruption in remitted depression: a correlate of childhood adversity
https://academic.oup.com/scan/article/13/10/1081/5114640

「バイオマーカー」を使用した実験では「うつ病の発症」と「認知ネットワークの変化」との密接な結果を示すものとなりました。調査には、実際にうつ病を発症した53名の患者と健康な認知機能を持つ40名の人に参加してもらい、認知制御における「抑制機能」の測定をするために「ゴー・ノーゴー課題」を実施しました。

「ゴー・ノーゴー課題」とは、例えば画面上にQ,P,Tの文字が出れば素早くボタンを押し(ゴー)、Xの文字が現れればボタンを押すのを抑制する(ノーゴー)といったテストで、「抑制機能」が正常に機能しているかを判断します。

また被験者は、幼少期に不幸な出来事を体験しているかということや現在の私生活でのストレスを報告した上で、脳内の安静状態を測定するためにfMRIスキャンを受けました。

すると、うつ病を発症していた人の多くが、幼少期に逆境を体験しており、同時に脳の「抑制機能」が減退していることが確認されたのです。

この結果について、ランゲネッカー氏は「抑制機能」は性急で反射的な意思決定を押しとどめる機能を持っており、それを請け負う認知ネットワークが障害を被ることでうつ病の発症に繋がっているのだと説明します。

これを証明するものとして、幼少期に逆境を体験していた被験者の脳内にはある変化が起こっていたのです。その変化は、脳に関する3つの重要なネットワークである「認知制御ネットワーク」「顕著性ネットワーク」「デフォルトモード・ネットワーク」に見られました。

「認知制御ネットワーク」は先程指摘した「抑制機能」に関する部分で、「顕著性ネットワーク」は視覚・聴覚刺激の分析を行う部分、そして「デフォルトモード・ネットワーク」は思考などの活動せず安静状態にある脳であり、自己認識をする機能に関与しています。

つまり、身体的なネットワークの変化が、うつ病の発症に大きく関わっており、この「バイオマーカー」を考慮することでうつ病の予防的な治療に役立てることができるとランゲネッカー氏は言います。

というのも、一度うつ症状を発症した患者のおよそ半分は、1年か2年以内に再発するおそれがあるため、適切な予防対策が必要となるのです。

もしも間違った医療措置を行ってしまうと、うつ病は慢性的なものとなり、ひいては「対人関係の崩壊」や「仕事意欲の減退」「自殺リスクの高まり」といった最悪の結果を生みかねないのです。

幼児期の逆境体験が青年期における自殺に繋がっているという研究結果もあり、客観的方策としての「バイオマーカー」を用いた医療措置の判断は、医師たちのあいだでますます重要性を増しています。

ランゲネッカー氏によると、うつ症状は立ち直った後にも、体験エピソードが蘇ることで再発するおそれもあるため、高いレベルでの追跡治療と予防対策が必要になるのです。

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via:psypost.org / translated & text by くらのすけ

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