偶然もたらされた発見
セルデン氏は、クモが湖へ流された際に、何らかの理由で酸素量の少ない水底に沈み、バクテリア分解を免れたのではないかと推測しています。あるいは、クモが発見された頁岩の周囲が小さな甲殻類や小魚で覆われていたことから、藻の一種である青粉がクモを絡め取り、水底に沈めた可能性も。正確な原因は分かりませんが、湖の周辺で大量の生き物が一度に死滅するような出来事が起きたことは間違いなさそうです。
今回の発見は、建設工事中に偶然もたらされました。韓国には建設に適した平らな土地が少なく、丘陵地帯を削って平らにならすのが一般的です。その過程で一時的な発掘作業が行われることは珍しくありません。
さらに、頁岩の中で化石化していたことが、Lagonomegopidaeがタペタムを持っていたことに気づかせる役目を果たしてくれました。黒い頁岩が、クモの大きく光る瞳を際立たせたのです。もし普通どおり琥珀の中で保存されていたら、そのことは見落とされていたかもしれません。セルデン氏は、琥珀の中で見つかったクモの化石について、タペタムの構造を持つものがないかを再調査したいと考えています。
偶然に偶然が重なってもたらされた今回の発見。三日月のように煌めく大きな瞳が最期に目にした地球の風景とは、一体どんなものだったのでしょうか。