■テキサス大学の研究により、脳は「覚える」よりも「忘れる」方により大きな労力を使うことが判明
■これは「意識的な忘却」が、忘れたい記憶に向かう注意をそらしつつ抑圧や修正を行うという複雑な作業をするためである
■「忘れよう」とする意識が強すぎると、逆に「記憶」の力が働くため「忘却」には「中程度」の働きが必要
受験シーズンも一段落ついた今日この頃。英単語や世界史の年号などを記憶するのに地獄を見た、という方も多いのではないでしょうか。
しかしテキサス大学オースティン校の脳科学研究チームによると、脳は「覚える」よりも「忘れる」ことのほうが大きな労力を使うことが判明したのです。
研究は、3月11日付けで「Journal of Neuroscience」に掲載されました。
http://www.jneurosci.org/content/early/2019/03/08/JNEUROSCI.2033-18.2019
記憶には流動性があるから「忘れる」ことができる
「記憶」は、常に固定的で安定しているわけではありません。私たちは絶えず新しい人や出来事にめぐり合うため、当然、新たな記憶も増幅していきます。その度に、記憶内容は修正や再構築を繰り返してアップデートされていくのです。
このように、記憶はとても流動的でダイナミックな姿をしています。また脳は必要な記憶を自動的に覚えたり忘れたりしますが、この作業の大半は睡眠中に行われているのです。
ただしこうした自動的な取捨選択は、日常の簡単な記憶に対するもので、トラウマのような強烈に残っている記憶に対しては行われません。トラウマ的な記憶は、想起されると思考や行動に悪影響を及ぼすため、「忘却」はどうしても必須となります。
しかし柔軟で流動的な「記憶」の性質のおかげで修正や変形を行うことができ、「忘却」へとつながります。そして同研究チームが対象としたのは、この「意識的な忘却」のプロセスについてでした。