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科学史上、最も「偉大」な失敗とは

2021.01.28 Thursday

2018.03.30 Friday

科学はその歴史の中で多くの間違いを犯しています。今日の私たちが聞くと奇妙に思えるようなことを、1,2世紀前の科学者は信じていました。

例えば以前の科学者は、原子の状態をぶどうパンのようなものだと考えていました。それは、原子に含まれる電子が散らばって存在しているという考え方です。

その後科学者たちは、実験を積み重ねて新しい理論を作り上げ、今日の私たちが知っている科学の知識にまで発展させています。

これまでの歴史上、最も革新的な実験の1つにマイケルソン・モーリーの実験というものがあります。この実験は、実は何か発見によって注目を浴びたのではなく、逆に何も発見されないことで注目を浴びたのです。

昔の物理学者は、時空間を満たす唯一のものをエーテルと名付けていました。エーテルというものは、目に見えず、何かに相互作用を及ぼすことはありませんが、光が伝わるために必要なものとして考えられていました。

そして19世紀になると、光が波のように反射したり干渉したりしているということから、光は波であるという考えが浸透します。

なので、音のように光も波ならば、上下に波打ちながら一様に拡がって進むものとして予想されていました。

また、波である音が空気を媒質にもつので、光は目には見えない何かを媒質として動いていると想定されていました。物理学者たちはその見えない何かをエーテルと呼びました。

エーテルを詳しく知るために、1880年代後半にオハイオ州のクリーブランドでアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーが実験を企てました。その実験は、「エーテルの風」と呼ばれる現象を確かめるものでした。

エーテルの風について説明しましょう。

あなたは、非常に強い向かい風が吹いている場所にいるとしましょう。そこで叫ぼうとしてもあなたの声は遠くへ届きません。なぜなら、媒質となる空気が風によって押し戻されるからです。では、追い風が吹いている中で叫べば声をより遠くへ飛ばすことができるのでしょうか?

科学者たちは、エーテルを媒質とする光にも同じ現象が起こっているのではと考えました。地球はエーテルの中を動いているので、空気抵抗のように、地上ではエーテルからの風を受けることになります。

なので、マイケルソンとモーリーは、光は向かい風か追い風かで速さが変化するという仮説を立てました。

実験は、光をハーフミラーに投射して2つの光に分けて、同じ長さで別々の経路を進み、最終的には分割された光が同じ地点に届くというものです。マイケルソンとモーリーは、エーテルの風による影響で光が早くなったり遅くなったりするので、分割された光が到着する時間はそれぞれ違うだろうと予測していました。

しかし、結果は、史上稀に見る偉大な失敗に終わりました。

分割された2つの光の到着には、全く違いが見られなかったのです。これは、地球がエーテルの中を動いていないということを示しています。

この実験から数年間、物理学者はこの結果を理解するのに苦労しました。

物理学者の中には、実験が正確でないから失敗にしたのだと言って実験器具も揃えて実験し直してみましたが、それでも失敗に終わりました。

結局、物理学者たちはエーテルのような物質は存在しないことを受け入れるしかありませんでした。その代わりに、光は他の波とは違うものだと考えられるようになりました。

そして、アインシュタインが登場します。アインシュタインの相対性理論によって、光の速さはエーテルの影響を受けず、真空の中を進む光の速さはいつも等しいという考え方が広まりました。また、エーテルがなくても物理法則は不変であるということを示しました。

この理論は、時の進みが遅れたり空間が歪んでいるということを意味しています。

そして、エーテルのときとは違い、実験によってアインシュタインは正しかったことが証明されました。

しかし、エーテルが存在しないなら、媒質を失った光はどのようにして進むのかという問題が生じました。

この問題を解決するために物理学者たちは数多くの実験を行いました。そして、光について、これまでの考え方をひっくり返すような事実が判明しました。光は波のように振る舞ったり、粒子のように振る舞ったりと2つの特徴を持ち合わせていました。つまり、この2つの性質を持つことで、光は進んでいるのです。この性質は、粒子と波動の二重性として知られています。

これは、研究者たちにとって、度肝を抜かれるような発見でした。そしてこの発見は、物理学で量子力学という新たな領域を築き上げるまでに至ります。

マイケルソン・モーリーの実験が失敗に終わることで、科学は大きく進歩したのです。

via:YouTube/ translated & text by Nazology staff

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