なぜアリの群れは交通渋滞を起こさないの?

animals_plants 2019/10/25
Credit:depositphotos

Point

■人間は交通量が道路容量の4割を越えると渋滞し始めるが、アリは8割を越えてもまったく渋滞しない

■実験によると、アリは混雑しそうになる道を回避し、別ルートを探す

■アリが混雑しない1番の理由は、全員の目的が共通しているから

通勤ラッシュや人混みなど、「渋滞」は現代人の大きなストレス源のひとつ。

人間社会では、交通量が道路キャパシティの40%を越えると渋滞が発生し始めるといわれています。しかし、動物界には交通量が道路容量の80%を越えても、まったく渋滞しない生き物がいます。

それが人間にも身近な「アリ」です。

アリの交通整理力は非常に高く、集団行動の模範例と言えます。

今回、アメリカのトゥールーズ大学とアリゾナ大学の新たな研究により、アリの渋滞回避能力を支える「精神的なつながり」が発見されました。

研究の詳細は、10月22日付けで「eLife」に掲載されています。

Experimental investigation of ant traffic under crowded conditions
https://elifesciences.org/articles/48945

混雑ルートはただちに回避

アリの優れた集団行動の一つに、「渋滞しそうなルートは即座に回避する」ことがあります。

2008年にドイツの研究チームが、ラボ内にアリ専用の小さな高速道路を特設し、食料の置いてある場所とコロニーの巣を繋いで実験を行いました。2点間には、インターチェンジも完備されています。

実験前は、人と同じようにインターチェンジ付近で渋滞が発生すると予想されていました。しかし、アリたちは、渋滞が発生しそうになると、一部が巣に戻って、出発しようとするアリたちに別のルートを探すよう誘導したのです。

Credit:arstechnica

また昨年には、ジョージア工科大学により、アリが狭いトンネル内での作業をいかに能率化するかについて実験が行われました。

トンネルは2匹のアリがかろうじて通れるほど狭いのですが、渋滞は起きませんでした。なぜなら、すでに仲間が働いているトンネルに遭遇すると、アリはすぐに後退して別のトンネルを探し始めたからです。

やはり「渋滞する道は通らない」が、集団行動の鉄則と言えるでしょう。

渋滞知らずは「共通目的」のおかげだった

トゥールーズ大学とアリゾナ大学の最新研究では、アルゼンチン・アントを用いて、交通渋滞への順応性が調べられました。

まず、アリの各コロニーと食料のある場所とを橋で繋ぎます。コロニーの大きさ(400匹〜2万5600匹)に合わせて、橋の幅を5mm、10mm、20mmと使い分けます。これは表面積あたりのアリの密度を等しくするためです。

その後チームは170回の実験を通して、コロニーの「交通流(単位時間あたりの所定の距離を占めるアリの数)」「速度」「衝突回数」の3つを記録しました。

橋をわたるアルゼンチン・アント/Credit:arstechnica

すると、アリは橋を占める人口密度が80%を越えてもまったく渋滞を起こしませんでした。その差は人と比べると一目瞭然です。

下のグラフを見ると、人は道路上の密度が増加するにつれて、交通流とスピードが落ち、衝突回数も大幅に増えています。

対してアリは、密度が増えても交通流はスムーズに保たれ、速度も落ちにくく、衝突回数もある時点から一定になることが判明しました。

交通流(左)、速度(中)、衝突回数(右)/Credit:arstechnica

研究チームによると、これはアリたちが「食料を獲る」という共通目的を持っているからだと言います。

交通渋滞が起きてしまうのは、個人がそれぞれの目的に合わせてバラバラの行動を取るために生じるのですが、アリにとっては、全員の目的が一致しているために渋滞が起きないというわけです。

アリは「One for all, All for one」の精神を完璧に実践している生き物なんですね。

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reference: arstechnica / written by くらのすけ

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