宇宙が加速膨張しているのは地球の近くだけ? ハッブルバブル仮説を証明する研究が登場

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バブル星雲NGC 7635の観測画像。ここではハッブルバブルのイメージとして使用している。今回の研究と直接は関係ない。/Credit:NASA, ESA, Hubble Heritage Team
point
  • 宇宙の膨張率を計算すると地球近傍と遠方宇宙(古代の宇宙)では、膨張速度が異なる
  • これは宇宙が加速膨張している証拠だが、実は地球近傍だけ加速しているとする、ハッブルバブルという仮説もある
  • 新しい研究は計算からハッブルバブルの存在を支持しており、暗黒エネルギーなど加速膨張を支える理論は不要としている

宇宙は膨張しています。

この事実はルメートルなどによって最初の提唱がなされ、その後ハッブルの観測によって証明されました。

そして、彼らの功績から誕生した「ハッブル=ルメートルの法則」から、宇宙の膨張率を調べるハッブル定数が登場しました。

このハッブル定数は、地球から数億光年程度の天体の赤方偏移を使って計算した場合と、古代の宇宙から伝わる宇宙マイクロ波背景放射を使って計算した場合だと、10%近く値がズレてしまいます。

これは宇宙の膨張速度が加速しているためと解釈されていて、これを成り立たせるために暗黒エネルギー理論などが登場しました。

しかし、実は宇宙は加速膨張なんてしていなくて、地球の近くだけ膨張速度が早いだけなんじゃないの? という考えを示す学者が登場し、ハッブルバブルというものを使って説明されています。

ハッブルバブルは異なる2つのハッブル定数の計算のズレを完全に説明できる理論ではないため、あまり注目されていませんでしたが、新たな研究は、この誤差をハッブルバブルの理論から正しく導くことに成功したと報告しています。

もし事実なら、宇宙は加速膨張していないことになり、暗黒エネルギーも不要になります。果たして暗黒エネルギーとハッブルバブル正しいのはどちらなのでしょう?

この研究はスイスのジュネーブ大学の研究者Lucas Lombriser氏より発表され、物理学の学術雑誌『Physics Letters B』のVolume 803に掲載されています。

Consistency of the local Hubble constant with the cosmic microwave background
https://doi.org/10.1016/j.physletb.2020.135303

宇宙の膨張率を計算する2つの方法

Credit:Coldcreation,Wikipedia commons

宇宙の膨張率はハッブル=ルメートルの法則によってハッブル定数(H0 )として計算されます

これには現在、2つの計算方法があります。

1つは、宇宙のどこでも光度が一定のⅠa型超新星爆発の「赤方偏移」を測定して計算する方法で、これは比較的地球近傍(といっても数億光年)のローカルな膨張率を測るものです。

もう1つは、プランク衛星の調査によって正確なデータが得られた宇宙マイクロ波背景放射を使って計算する方法で、宇宙全体を広く調べるグローバルな測定です。

宇宙マイクロ波背景放射はビッグバンの残光と表現されるもので、宇宙誕生の37万年後の宇宙が冷えて光が自由に飛び回れるようになった時代の放射光で、現在は宇宙のあらゆる方向から地球に届いています。

宇宙マイクロ波背景放射の画像。137億年前の温度変動を色で表示。/Credit:NASA / WMAP Science Team

これは長い時間が経過する中で波長が伸びて現在は電波波長として検出されます。光であったものが電波になってしまったのは空間が伸びたためで、つまりは宇宙膨張の証拠となるのです。

ところが、この2つの計算結果は10%程度誤差が出てしまうことで知られています。

赤方偏移を使ったローカルな宇宙の膨張率を計算すると、H0は74km/s/Mpcとなります。

(km/s/Mpc:キロメートル毎秒毎メガパーセク)はハッブル定数の単位で、これは1Mpc(326万光年)ごとに宇宙は毎秒74km膨張しているという意味になります。

一方、宇宙マイクロ波背景放射を使った計算では、H0は67.4km/s/Mpcとなります。

なぜ、ローカルな宇宙とグローバルな宇宙では、ハッブル定数に誤差が出てしまうのでしょうか?

ハッブルバブル 対 暗黒エネルギー

Credit:国立大学附置研究所

ローカル(最近の変化)なハッブル定数の測定結果が、グローバル(つまりは古代)なハッブル定数を測定結果より大きくなってしまうということは、つまり昔より宇宙の膨張速度が増していると解釈することができます。

そのため、現在宇宙は加速膨張しているという考え方が主流です。

ただ、内部に多くの物質が存在し内側に向けて重力の働く宇宙が、加速膨張するということは、重力に逆らう斥力の存在が必要になってしまいます。

そうした理由から提唱されているのが暗黒エネルギーという存在です。

ただ、これを証明する手立ては現在のところありません。

一方、これに対抗する理論も登場しています。それがハッブルバブル仮説です。

ハッブルバブル仮説は、宇宙は考えられているほど均一ではなく、地球周辺は外側の宇宙に比べて密度が低い泡のような空間の中にあるとしています

密度の低い空間は、当然密度の高い外側の空間に強く引っ張られます。そのため、地球周辺を包み込む低密度の泡領域だけが加速度的に膨張しているのだというのが、ハッブルバブル仮説の主張です。

低密度の泡空間をさしてハッブルバブルと呼んでいます。

どちらがそれっぽいと感じるかは人によるでしょう。ただ発表当時、ハッブルバブルは直径80億光年と設定されていて、その考え方で計算した場合、2つの計算方法の誤差は4分の1程度しか埋まりませんでした。

そのため、結局あまり信憑性がないのではないかと考えられていたのです。

今回の研究は、このハッブルバブルの距離の設定を再考し、2つの計算結果の誤差を埋めたと報告しています。

研究者によると、ハッブルバブルを直径2億5000万光年と設定し、ハッブルバブル内の密度が外側より50%も低いと設定した場合、2つの計算結果の誤差は、うまく解決するというのです。

このことから、ハッブルバブルはただの論理学者の絵空事ではなくなるといいます。

もし、地球の周辺のローカルな宇宙だけが、外の高密度空間に引かれて加速膨張しているだけなのであれば、暗黒エネルギーも必要なくなります。

研究者はこうした大きな密度差のある領域が宇宙には多く存在するだろうと語っています。

果たして、どちらが事実なんでしょう? 宇宙の地域によって密度差のある泡に包まれているという方が、暗黒エネルギーという謎の存在を持ち出すよりは、それっぽいでしょうか?

皆さんはどちらを支持しますか?

「暗黒エネルギーは存在しない」ことを示す新説が登場

reference: UNIGE / written by KAIN
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