キナの木は世界情勢に影響を与える
「抗マラリア薬」として、キニーネの原料であるキナの木の需要は大きくなっていきました。
その需要は、特に19世紀に急上昇したとされています。
なぜなら当時、海外の植民地に配備されたヨーロッパ軍はマラリアに脅かされていたからです。
そのためキニーネのような薬は、兵士たちが熱帯の植民地で生き延び、戦争に勝つことを可能にしました。
これにより、キナの木は当時の世界地図を塗り替えるほど大きな影響をもたらしたのです。
当然、キニーネの適切な供給を得ることが、世界支配をめぐる競争において、戦略的な利点となっていきました。
チューリッヒ大学マラリア専門の旅行医学教授であるパトリシア・シュラーゲンハウフ氏は、「今日の国々が競争優位を獲得するために新型コロナウイルスの導入を急いでいるのと同じように、キニーネの取得を急いでいた」と述べています。
この時の「キナ狩り」は世界各地に爪痕を残しました。
例えば、1805年、エクアドルのアンデスには25000本のキナがありましたが、現在同じ場所にはわずか29本しかありません。
このように、世界初の抗マラリア薬は当時の世界情勢に大きな影響を与え、地図をも塗り替えました。
世界初の治療薬とは、世界を揺るがすほどの影響を持つのです。
では将来、世界初の新型コロナウイルス治療薬が開発された時、それはわたしたちと世界にどのような影響を与えるのでしょうか。