人類がAIに挑戦!VRドッグファイトで「人工知能」が米軍パイロットに圧勝

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人類とAIの空戦勝負はどうなるか?/Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

reference: AIR FORCE

模擬空戦でAIが人間を圧倒しました。

米軍の国防高等研究計画局(DARPA)が主催した空戦AIの性能試験「アルファ・ドッグファイト」が今週行われ、AI同士及びAIと人間に模擬空戦が繰り広げられました。

試験には8つの異なるAIが参加しており、最初にAI同士の戦いが行われ、チャンピオンになったAIと米空軍の現役パイロットの戦ったとのこと

AIと人間の戦いは合計5回に及びましたが、人間は全ての戦闘において完敗し、そのうち3つの戦いでは人間側が1分しか生存できなかったのです。

いったいどのようなルールで空戦が行われ、AIのどこが人間に勝っていたのでしょうか?

2021年に「AI搭載の無人戦闘機」と有人戦闘機が模擬空戦を行う予定(米軍)- ナゾロジー

人間への挑戦権をかけた「AI vs AI 」 チャンピオンAIは何が特別だったか?

/Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

今回の試験には8つのAIが参加し、最初にAI同士で人間への挑戦権をかけた戦いが行われました。

空戦ルールは単純で、重力など現実世界の物理法則の元に、バルカン砲(M61)のみを用いたドッグファイトをするというものです。

ミサイルは使われず、使用する戦闘機も全て同じ性能のF16(ファルコン)に統一されています。

今回の試験は、あくまでドッグファイトの性能を追い求めているからです。

結果、チャンピオンに輝いたのは、メリーランドに拠点を置くヘロン・システムズでした。

ヘロン・システムズのAIも他のAIと同じく基本は深層強化学習によって力を身につけましたが、1つ大きな違いがあったのです。

他のAIは深層強化学習を行う前に、あからじめ事前にパッケージ化された、上昇・下降・旋回など、ごく基本的な構成要素が情報としてAIのメモリーバンクに組み込まれていました。

しかしヘロン・システムズのAIの育成にはこれら基本的要素を事前に含まず、完全にまっさらな状態からAIに学習を行わせたとのこと。

そのためヘロンのAIは最初は飛ぶこともままならない状態でしたが、学習を重ねるにつれ、プリセットの情報に囚われた他のAIを凌駕しました。

他のAIと最も顕著な違いが出たのは「判断力」です。

他のAIは1秒に50回に上る判断更新をする必要に迫られましたが、ヘロンのAIは1秒に10回程度しか自分の判断を更新しませんでした。

これは初期を含む各判断が他のAIよりも優れていることを示します。

このヘロンAIの滑らかさはAI vs AIの決勝戦で、今回使用した軍用機「F16」の製造元ロッキード・マーティンに挑んだとき、特に顕著でした。

ヘロンのAIは多くの場面で優位な位置をとり、ロッキード・マーティン(のAI)を倒すことができたのです。

チャンピオンに輝いたヘロン・システムズのAIは人間への挑戦権を獲得しました。

「人間 vs AI」 1回戦から5回戦の結果

人間側のパイロットはVRゴーグルをかけて参戦する/Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

次はいよいよ、人間とAIの戦いです。

戦いは様々な条件において行われ、先に5勝したほうが勝ちとなります。

人間側はF16に2000時間以上の搭乗経験を持つ米空軍の精鋭パイロットが、身元を隠して「バンガー(Banger)」の名で参戦しました。

相手はもちろんヘロン・システムズのAIです。

対戦はバルカン砲(M61)のみを武器として使い、先に相手のHP(耐久値)を削った方が勝ちです。

格闘ゲームと同じく、HPが減ったことでのペナルティーはありません。

人間のバンガー氏はVRヘッドセットをつけて参加し、AIはシミュレーション世界の中で待ち受けます。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

第1回戦(開始高度4880m)は動画の4時間40分13秒あたりからはじまりました。

しかしこの時点で既にAIは人間とは異なる挙動をみせています。

人間のパイロットが曲線的な動きをとる一方で、AIの操るF16はより鋭角な軌道を描きました。

結果、バンガーは一度もAIに攻撃を命中させられず、逆に撃ち落されてしまいました。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

第2回戦(開始高度3700m)では人間側パイロットも果敢に攻めて行きます。

しかしAI側は常に人間側よりも高いGでの機動を行うだけでなく、人間側の動きを読むようにして正確にバルカン砲をあててきました。

結果、勝負は59秒で決着がつきます。人間はまたもや負けました。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

第3回戦(開始高度2260m)も熾烈な旋回競争が行われました。

しかし今回は開始高度が2000メートルとかなり低く、空戦が進むにつれ双方の高度が急激に低下し、高度400メートルを切る場面もみられました。

人間のパイロットは墜落を防ぐために、低高度でさらに高度を失うような急激な戦闘機動を避けるように訓練されています。

しかし命を気にする必要のないAIは違いました。

AIはドッグファイトを行うには低すぎる高度でも非常に攻撃的な機動をみせ、人間の後部に食いつき、バルカン砲を発射したのです。

特に最後の場面では、後ろに回り込んだAIによる一方的な攻撃もみられます。

結果、勝負は僅か53秒で決着がつき、AIの圧勝となりました。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

第4回戦(開始高度4250m)ではAIの動きがより攻撃的になり、戦いはより一方的な展開になりました。

結果、勝負は52秒で決着し、またもやAIの圧倒的な勝利で終わったとのこと。

しかし第5回戦は違いました。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

これまで圧倒的な強さをみせつけてきたAIに対してバンガー氏はまともに戦うことを放棄して、降下しつつAI機との距離をとり、時間稼ぎをはじめました。

空戦においては相手にどうしても勝てない場合、そして逃げられない場合、早々に撃墜されてしまうことを避けるのが次善の策になります。

生存時間が長くなればながくなるほど、味方の増援が来る可能性が高くなるだけでなく、相手のミスも誘えます。

人間側の機体は少しでも距離をとるため急降下を繰り返しました。

Credit:AlphaDogfight Trials . youtube

そして高度の余裕がなくなると、円運動をはじめ、敵との距離を稼ぎ続けました。

実際、この戦法は有効にみえました。

逃げに徹する人間に対してAIは攻めあぐねてるようにもみえたからです。

しかし無数の学習をしてきたヘロンのAIは直ぐに判断を修正し、人間側の背後に回り込んでバンガーを撃墜しました。

最終的には負けてしまったものの、人間側の生存時間は最長の165秒を記録しました。

なぜ人間は機械に勝てないのか?

Credit:depositphotos1 . depositphotos2

今回の人間とAIの戦いは人間の完敗という結果に終わりました。

対等の条件にありながら、人間はAIに対して一度も有利な地点を得ることができなかったのです。そのため(当然ながら)、弾を一発も当てられませんでした。

さらに衝撃的だったのは、空戦時間の短さです。

5つの戦いのうち、人間側が1分以上生存できたのは2つのみ、しかもそのうちの1つは勝つことを諦め、最初から逃げに徹したものでした。

なぜ人間はAIに勝てなかったのでしょうか?

第一に原因として考えられるのは、AIだけにみられた安全策の放棄でした。

戦いにおいて、AIは人間が忌避するような低高度でも躊躇なく攻撃的な機動をみせています。

一方、人間側は墜落を恐れて低高度での機動は控えめになり、結果として撃墜されてしまいました。

また人間のパイロットは空中衝突を避けるために敵機との間を150m以上あけるように教育されていましたが、安全策をとる必要のないAIは積極的に距離をつめて攻撃をしていました。

人間のパイロットには他にも、大きすぎるGが禁止されていたり、自分で発射した弾にあたらないように、大きな仰角で弾を発射してはならないなど数々の安全上の制限があります。

ですがこれら命を守るための安全策は全てAIに利用され、人間側の全敗につながったのです。

一方、安全策以外でも人間とAIの差は見られました。

AIは「OODAループ」(観察、方向付け、決定、行動)にかかる時間が「ナノ秒レベル」で調整できる一方で、人間はどんなに早くとも数秒程度はかかってしまうのです。

1ナノ秒は10億分の1秒であり、判断速度の差は圧倒的。事実、人間vs AIの戦闘時間は、多くのAI vs AIの戦闘よりも著しく短かい傾向がありました。

これは、AIの相手をするには、AIを投入するしかないことを示唆します。

またAIと人間では根本的に異なる点がもうひとつあります。

人間は失われると補充がききませんが、AIはプログラムを無限にコピーすることが可能であり、戦闘機を作ればつくるだけ即戦力になるという強みがあるのです。

そのため、もし兵器生産を自動化できれば、資源の続く限り戦力を強化することが可能となるでしょう。

SF世界でのドッグファイトは幻想かもしれない

今回の競争について、DARPAプログラムのマネージャーであるダン・ジャボセク氏は、「パイロットがAIに対して尊敬の念を抱くようになる」と述べています。

かつての空戦AIはお世辞にも褒められた性能ではありませんでした。

シミュレーション空間の中でもまともに飛ぶことができず、中には勝負が起こる前に勝手に墜落してしまうこともあったそうです。

そのためパイロットでなくても、空戦AIについて否定的なイメージを持つ人は少なくありませんでした。

しかし今回、AIが完全勝利したことで、人間のパイロットたちも空戦AIに対する偏見が大きく緩和されると考えられます。

これからは、ドッグファイトなどの人命を損耗する空戦はAIにまかせて、人間は後方でより高度な判断をするといった、新たな空軍の姿を模索していく必要があるようです。

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