猛毒植物ギンピ・ギンピから新たな神経毒を発見

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gympie
gympie / Credit:Edward K. Gilding
reference: zmescience

オーストラリアに自生する「ギンピ・ギンピ」と呼ばれる植物は「刺す木」として有名で、その刺が刺さると「死ぬほど痛い」といわれています。

しかしその強力な神経毒の正体ははっきりと解明されていないため、治療も難しく恐れられてきました。

そんな中、オーストラリア・クイーンズランド大学ブリスベン校のエドワード・ギルディング氏ら研究チームが9月16日付けの科学雑誌「Science Advances」に、その痛みの原因がこれまでに知られていなかったペプチドグループ「ギンピタイド(gympietide)」にあると発表したのです。

このギンピタイドは感覚ニューロンを恒久的に変化させるため、長期にわたり痛みを与え続けます。

自殺に追い込む植物「ギンピ・ギンピ」とその仲間

ギンピ・ギンピの痛み
ギンピ・ギンピの痛み / Credit:depositphotos

ギンピ・ギンピ(学名:Dendrocnide moroides)の葉や枝に触れるなら、小さな刺状の毛が皮膚に刺さるでしょう。

この刺には強烈な苦痛を与える神経毒が含まれており、その効果は数か月以上にわたって継続します。

実際にギンピ・ギンピに刺された人は、痛みで「2、3日は眠ることができず、2週間は狂ったように暴れる」との報告もあります。

さらにギンピ・ギンピの葉でおしりを拭いてしまったある人はその痛みに耐えられず自殺してしまったとのこと。

死ぬほどの痛みを与える植物として有名なギンピ・ギンピには同じ呼称をもつ仲間が存在します。

世界的に広く知られているギンピ・ギンピは「Dendrocnide moroides(D. moroides)」ですが、同類の「Dendrocnide excelsa(D.excelsa)」も存在するのです。こちらもオーストラリアで生育しており、同様の刺と神経毒をもちます。

ちなみに、D.excelsaはD. moroidesほど重症化しませんが、同じようにギンピ・ギンピと呼ばれています。

痛みの原因は?

Dendrocnide moroides
Dendrocnide moroides / 死ぬほどの痛みを与えると有名なギンピ・ギンピ「Dendrocnide moroides」/Credit:commons/wikipedia

さて昔から有名なギンピ・ギンピ(D. moroides)の痛みの原因は有機化合物「モロイジン」であり、これはもう一つのD.excelsaにも共通すると考えられてきました。

しかし研究チームが実際に調査したところ、D.excelsaにモロイジンは含まれていませんでした。またD. moroidesから精製したモロイジンでは、強烈かつ持続的な痛みが得られなかったのです。

つまり、「ギンピ・ギンピの毒」として知られる共通の持続性成分は別にあることになります。

Dendrocnide excelsa
Dendrocnide excelsa / 有名なギンピ・ギンピの仲間である「Dendrocnide excelsa」/Credit:Norbert Fischer/wikipedia

この成分を調査するために、研究チームはD. moroidesとD.excelsaそれぞれの化学的構造を比較しました。

その結果、これまでに知られていなかった神経毒ペプチド(アミノ酸の結合)グループを割り出すことに成功。

このペプチドグループは「ギンピタイド(gympietide)」と命名されました。

ちなみに、D. moroidesペプチドとD.excelsaペプチドは全く同じ成分ではありませんが、同じギンピ―タイドのグループに属しています。

ギンピ―タイドは感覚ニューロンを恒久的に変化させる

ギンピ・ギンピ
ギンピ・ギンピ / (左)D. excelsaの刺 , (右)D. moroidesの刺の電子顕微鏡写真 /Credit:Edward K. Gilding

その後ギンピ―タイドをマウスに投入する実験も行われました。

その結果、D. moroidesペプチドとD.excelsaペプチドの両方がマウスに神経毒性効果を発揮し、行動を阻害、持続性も認められたのです。

そして神経毒性をさらに調べるために、研究チームはD.excelsaペプチドに焦点を当てました。

いくつかの実験の結果、このD.excelsaペプチドは感覚ニューロンのナトリウムチャンネルを恒久的に変化させると判明

これにより痛みに関する信号が不安定になり、刺されてから数か月後、数年後でも不意に痛みを感じるのです。

今回の研究でギンピ・ギンピの神経毒成分が明らかになりました。今後ギンピタイトによる新しい治療薬と鎮痛剤が開発されるかもしれません。

また今回の発見では、より強烈だとされるD. moroidesと、D.excelsaの違いは分かっていません。これらの解明も今後の課題となるでしょう。

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