”ブラックホール級の磁場”を地球上に生成できる可能性あり!「現在の技術で実現できる」との研究結果

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磁場の可視化。
磁場の可視化。 / Credit:depositphotos

強力な磁場は、地球上でどの程度まで作り出すことが可能なのでしょうか?

これまで実験で作り出された磁場は、最高で約1200テスラ(1キロテスラ強)程度です。

しかし、科学誌『ScientificReports』に10月6日付けで掲載された研究では、メガテスラ(100万テスラ)級の磁場生成を可能にする方法が報告されています

現在はコンピュータシミュレーション上で確認されている方法ですが、これは技術的に実現可能なものだといいます。

メガテスラレベルの磁場は、中性子星やブラックホール周辺の磁場に匹敵する強力なものです。実現すれば、人類史上最大の磁場が地球上に発生することになるでしょう。

一般的な磁場の強さってどのくらい?

磁石。
磁石。 / Credit:depositphotos

磁場は普段私たちの身近に発生しているものです。

しかし、その力は非常にわずかなもので、例えばコンパスの針を北へ向ける地磁気は0.3~0.5ガウスほど、100均などで売られている強力磁石だと1400ガウス~2500ガウス程度で、医療現場で使われている核磁気共鳴画像(MRI)の使用する磁場は約1テスラ(1万ガウス)が一般的です。

ちなみに磁場の単位にガウスとテスラがでてきますが、正確にはどちらも磁束密度を表す単位で、単位面積当たりの磁束(磁界の強さ)を表します。

時代とともに使われる単位が変わってきたのですが、10000ガウスが1テスラに相当します。

今まで実験室で生成された最大の磁場は、レーザーを使用した方法で約1200テスラ(1キロテスラ強)です。

1200テスラを発生させた実験の様子が動画で公開されていますが、キロテスラレベルでも、かなり強力な磁場であることがわかります。


しかし、新たな研究ではそれを3桁も上回るメガテスラ(100万テスラ)レベルの磁場生成が実現できるというのです。

髪の毛ほどのチューブを使いブラックホール級の磁場を生成

マイクロチューブに強力なレーザーパルスを照射する説明図。
マイクロチューブに強力なレーザーパルスを照射する説明図。 / credit: M. Murakami,大阪大学Resou

その強大な磁場の発生に使用するのは、なんと人の髪の毛の10分の1ほどの太さの非常に小さなプラスチック製マイクロチューブです。

このチューブ内に強力なレーザーパルスを照射すると、超高温電子が空洞内で膨張し爆縮を起こして真空を生成します。

この真空と荷電粒子が相互作用して強力な電流(電荷の流れ)が発生し、その結果超強力な磁場が生成されるのです。

ここで発生する磁場は約10ナノ秒という瞬く間に消失してしまいますが、物理実験を行うには十分な長さだといいます。

大阪大学の研究者村上氏を始めとした研究チームは、これをスーパーコンピュータシミュレーションし、現代技術で実現できる可能性を確認しました。

この実験を行うには総出力が10~100ペタワット(1ペタワットは1000兆ワット)のレーザーシステムが必要ですが、10ペタワットのレーザーはすでに欧州の一部で実用化。100ペタワットレーザーの開発計画は、中国などが行っていると2018年に科学誌『Science』で報告されています。

ブラックホールに匹敵する極端な磁場を何に利用するのか?

ブラックホールのイメージ。
ブラックホールのイメージ。 / Credit:depositphotos

メガテスラレベルの磁場は、ブラックホール中性子星などの特殊な天体の周りに発生している磁場に匹敵していると考えられています。

そんな強力な磁場を作ってどうするのか? と一般目線には疑問に感じてしまいますが、こうした極端に強力な磁場が作り出せれば、中性子星やブラックホールの周辺で起きる物理現象を実験室の中で理解できるようになります。

そして次世代のエネルギー源として期待されている核融合炉などでも、小さな領域にプラズマを閉じ込める方法として、強力な磁場の生成が必要になっています。

この研究は、宇宙の理解からエネルギー問題まで幅広くカバーする重要な技術になりうるものなのです。

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