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歩くだけで発電できる! 菌の力で木を「発電床材」に変えることに成功 

2021.03.12 Friday

その上を歩くだけで発電できる「床材」が誕生するかもしれません。

スイス・チューリッヒ工科大学は、木材に圧力を加えることで、圧電効果として知られる発電が可能かを研究。

その中で、腐朽菌により木材の成分を分解させることで圧縮性をもたせ、発電効果を高めることに成功しました。

研究は、3月10日付けで『Science Advances』に掲載されています。

Wooden floors rotted by fungi generate electricity when walked on https://www.newscientist.com/article/2270527-wooden-floors-rotted-by-fungi-generate-electricity-when-walked-on/?utm_campaign=RSS%7CNSNS&utm_source=NSNS&utm_medium=RSS&utm_content=news
Enhanced mechanical energy conversion with selectively decayed wood https://advances.sciencemag.org/content/7/11/eabd9138

菌の力で木材の「発電力」を高める

木材を使って圧電効果を発生させるアイデアは、1940年代から議論されてきました。

圧電効果とは、固体に圧力を加えることで生じる内部の「ひずみ」によって、電圧が発生する現象です。

具体的には、固体の結晶内にあるイオンの位置が圧力によって大きくずれ、結晶の一方の端がプラスの電荷を、もう一方がマイナスの電荷を帯びて(=電気分極)、電圧が発生するという仕組み。

圧電効果のメカニズム
圧電効果のメカニズム / Credit: TECH-MAGより

しかし、これまでの実験によると、木材の圧電効果は微々たるものでしかなく、実用化の可能性もゼロに近いとされていました。

そこで研究チームが、木材の圧電効果を高める方法として着目したのが「菌」の利用です。

研究チームは「コフキサルノコシカケ(学名:Ganoderma applanatum)」という木材腐朽菌の一種をバルサ材に付着させて、数週間放置しました。

腐朽菌のはたらきにより、木材に含まれる難分解性のリグニン、セルロース、ヘミセルロースが急速に分解され、最終的にほぼ半分の量にまで減少しています。

さらにチームは、木材の強度を失わせることなく、圧縮性だけを高めるのに最適な処理期間が6週間であることを特定しました。

菌によって木材の成分を分解させる
菌によって木材の成分を分解させる / Credit: advances
圧縮性の高い木材に
圧縮性の高い木材に / Credit: advances

こうして、圧力を加えたときのプレス&リリースの効果が高まり、従来の約55倍の電圧を発生できる木材が得られています。

チームはその後、木材を15ミリ四方のキューブ型に切り分け、9ブロックをワンセットとして試作品の「エネルギーフロア(発電床材)」を組み立てました。

実験での発電量はわずか0.85ボルトと実用化にはまだ程遠い数値でした。

しかし、研究主任のインゴ・バーガート氏は「本研究はエネルギーフロア開発のほんの一段階であり、その可能性は十分に示すことができた」と話します。

ベニヤ(茶)、銅箔(黄)、木材(緑)、ワイヤ(赤青)
ベニヤ(茶)、銅箔(黄)、木材(緑)、ワイヤ(赤青) / Credit: advances

研究チームはすでに、エネルギーフロアが発電分野で大きな利益を生み出すことを想定し、商業化について企業と話し合いを進めているとのことです。

今後の改良次第では、自宅の床材やダンスフロアなどに応用されるかもしれません。

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