乳酸には抗うつ作用がある
乳酸には抗うつ作用がある / Credit:Depositphotos
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「乳酸」に抗うつ効果があると実証される

2021.06.04 Friday

乳酸は運動後にたまる物質として知られています。

以前は「乳酸は疲労物質である」と考えられていましたが、現在では「疲労の直接原因ではない」との見方が広まっており、むしろ疲労回復効果があるとさえ言われています。

さらに、スイス・ローザンヌ大学病院(CHUV)に所属するアンソニー・カラード氏ら研究チームは、乳酸に抗うつ作用があることをマウス実験で実証しました。

新しい研究ではそのメカニズムが解明され、乳酸にはうつ病患者に見られる「海馬の神経細胞が新しく生成されにくくなる現象」を改善する効果があると判明。

研究の詳細は、5月14日付けの学術誌『Molecular Psychiatry』に掲載されました。

Antidepressant Power of Lactate Revealed in New Research https://scitechdaily.com/antidepressant-power-of-lactate-revealed-in-new-research/
Role of adult hippocampal neurogenesis in the antidepressant actions of lactate https://www.nature.com/articles/s41380-021-01122-0

抑うつ症状に運動が効果的な理由の1つは乳酸だった

現在、世界の2億6400万人がうつ病に苦しめられており、その治療には抗うつ剤や心理療法が用いられます。

しかし、うつ病患者の約30%は抗うつ剤に反応しません。

また運動による抗うつ作用が長年にわたって知られてきましたが、科学者たちはそのメカニズムの解明に苦労しています。

こうした背景にあって、研究チームは運動中に生成される「乳酸」に注目してきました。

運動によって抑うつ症状を緩和できる
運動によって抑うつ症状を緩和できる / Credit:Depositphotos

彼らの研究では、マウスに運動時と同程度の乳酸を投与し、実際に抗うつ作用を確認できたとのこと。

うつ病になると、以前楽しんでいた活動に対する興味や喜びが失われます。

これは「快感消失」と呼ばれる症状ですが、乳酸がこの快感消失を緩和させると判明したのです。

そして新しい研究では、乳酸の抗うつ作用のメカニズム解明に焦点が当てられました。

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