日本人の名前の読み方はなぜ難しい?
日本人の名前の読み方はなぜ難しい? / Credit: 東京理科大学- 近年の新生児の名前を初見で正しく読むことは難しい ~18種類の「大翔」、14種類の「結愛」~(2021)
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「大翔」ってどう読む?近年の日本人の名前が読みにくいのはなぜか

2021.08.06 Friday

近年の日本人の中には、読み方のわからない名前がかなり増えています。

「キラキラネーム」という言葉もすっかり定着しているように、初見で正しく読めないケースが少なくありません。

東京理科大学の研究チームは今回、2004〜2018年に生まれた新生児の名前、およそ8000件を対象に、漢字表記の読み方の種数や、名前を正しく読むことの困難さを調査しました。

実際、日本人の名前の読みはどれほど難しくなっているのでしょうか。

研究は、6月21日付けで学術誌『Humanities and Social Sciences Communications』に掲載されています。

近年の新生児の名前を初見で正しく読むことは難しい~18種類の「大翔」、14種類の「結愛」~(東京理科大学) https://www.tus.ac.jp/today/archive/20210705_2485.html
I know the name well, but cannot read it correctly: difficulties in reading recent Japanese names https://www.nature.com/articles/s41599-021-00810-0

同じ漢字表記で読み方はさまざま

本研究で対象とした名前は、男児3762件、女児4017件の計7779件です。

最初に、各年の人気のある表記ランキングから、とくに多い表記を男女それぞれで4種類選びました。

男児は「大翔」「陽翔」「翔」「颯」の4つ、女児は「結愛」「陽菜」「愛」「杏」となっています。

さて、それぞれの読み方がわかるでしょうか?

同じ表記で読み方がさまざま
同じ表記で読み方がさまざま / Credit: 東京理科大学- 近年の新生児の名前を初見で正しく読むことは難しい ~18種類の「大翔」、14種類の「結愛」~(2021)

研究チームは、これらの名前の読み方を網羅的に調査し、読みの種数と割合を調べました。

その結果、すべての表記で、読みの種数がきわめて多いことが明らかになっています。

「大翔」という表記には、「ひろと」「はると」「やまと」など18種類の読み方があり、「結愛」という表記には、「ゆあ」「ゆいな」「ゆな」など14種類の読み方がありました。

漢字一字の「颯」でも、「はやて」「そう」「はやと」「りく」「いぶき」「りゅう」「そら」と7種類、「杏」では、「あん」「あんず」「もも」「あんな」「こう」と5種類の読み方があります。

また、これらの種数は、あくまでも分析したデータから得られたもので、実際にはより多くの読み方が存在するかもしれません。

「大翔」の読みと割合
「大翔」の読みと割合 / Credit: 東京理科大学- 近年の新生児の名前を初見で正しく読むことは難しい ~18種類の「大翔」、14種類の「結愛」~(2021)

名前の読みが難しい理由については、使用される漢字の読みに制限がないこと一般的な読み方に加えて、自由に読みを当てられることが挙げられます。

これは、ほとんどの漢字が決まった読み方を持つ中国ではありえません。

それから、文字と音が一対一で対応しているアルファベット圏(英語、スペイン語、ドイツ語)でも同じです。

「結愛」の読みと割合
「結愛」の読みと割合 / Credit: 東京理科大学- 近年の新生児の名前を初見で正しく読むことは難しい ~18種類の「大翔」、14種類の「結愛」~(2021)

データを分析した結果、日本漢字の読み方には、

・漢字の意味や連想されるイメージから自由に読みを与えるパターン

・漢字の一般的な読みを短くするパターン

・漢字が持つ意味を英語やフランス語などの外国語にして読むパターン

などがあり、それが個性的な読み方を可能にしていることがわかりました。

たとえば、「大翔」には、「つばさ」という読み方があります。

本来なら、「大」にも「翔」にも「つばさ」という読みは存在しませんが、ここでは「大きく羽ばたく」という連想から「つばさ」を当てはめています。

ほかにも「結愛」を「ゆら」と読むパターンがありました。

これは、「愛」が英語で「Love(らぶ)」を意味するので、そこから「ら」だけを残して、「ゆら」と読ませています。

本研究では、新生児の名前が、一般的な常用漢字を使った表記であっても、読み方に多くの選択肢があるため、それが名前の読みを困難にしていることが示されました。

今回の成果は、日本だけでなく、アジアの漢字文化圏における名前の読みや命名の仕方の理解につながると期待されています。

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