頭突きする動物の脳はやっぱり損傷していた
研究チームは、自然死した野生のジャコウウシ3頭とビッグホーン4頭の脳を薄くスライスし、状態を検査しました。
比較対象として、アルツハイマー病を患っていたヒト患者の脳と、慢性外傷性脳症を患っていたヒト患者の脳も使用されました。
その結果、ジャコウウシの脳には、「リン酸化したタウタンパク質」が特定のパターンで蓄積していると判明。
このパターンは、アルツハイマー病患者や慢性外傷性脳症患者においてしばしば見られる特徴です。
研究チームも、ジャコウウシで見つかったパターンについて、「軽度の外傷性脳損傷、または初期の慢性外傷性脳症を連想させる」と指摘しています。
つまり頭突きで戦う動物ジャコウウシの脳は、やっぱり損傷していたのです。
ただ、ビッグホーンについては明確な損傷パターンを見つけることはできませんでした。
興味深い報告を行った今回の研究ですが、内容にはいくつもの限界や疑問点があります。
そもそもサンプル数が少なく、同じ頭突き動物であるビッグホーンに脳損傷の兆候がなかった理由も不明なままです。
研究チームは、「ビッグホーンの脳損傷が少ない理由を解明することで、外傷性脳損傷の新しい治療につながるかもしれない」とも考えているようです。
とはいえ現段階で引き出せる教訓は、次のようなものでしょう。
屈強な頭突き動物であっても脳を損傷するのであれば、私たち人間は、頭部への衝撃に対してもっと慎重にならなければいない、というものです。