ジェット推進で泳ぐクラゲには「スピードモード」と「効率モード」があった!
ジェット推進で泳ぐクラゲには「スピードモード」と「効率モード」があった! / Credit: National Science Foundation – Kevin Raskoff/Wikimedia Commons
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What this jellyfish-like sea creature can teach us about underwater vehicles of the future https://www.popsci.com/technology/marine-animal-siphonophore-design/ Squishy critters are inspiring underwater vehicle design https://around.uoregon.edu/content/squishy-critters-are-inspiring-underwater-vehicle-design
Distributed propulsion enables fast and efficient swimming modes in physonect siphonophores https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2202494119

2022.12.03 Saturday

複数の個体が連結してあらゆる方向への「ジェット推進」を可能にしたクラゲ!

クダクラゲ目の一種「シダレザクラクラゲ(学名:Nanomia bijuga)」は、十数個あるベルのような器官を使って、水中を遊泳します。

その泳ぎ方は、ベルの中に取り込んだ水をポンプのように噴出して前進力を得る、いわゆる「ジェット推進」です。

しかもそれぞれのベルは個別に制御され、すべての動きを同期させることも、あるいはバラバラに機能させることもできます。

米オレゴン大学(University of Oregon)の研究チームは今回、この2種類の異なる泳ぎ方を詳しく調査。

その結果、2つの泳ぎ方は「速度」と「エネルギー効率」の面で違いがあり、その時々のニーズに合わせて使い分けられていることが確かめられました。

この発見は、水中遊泳型のソフトロボットの設計や開発に役立つと期待されています。

研究の詳細は、2022年11月28日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されました。

シチュエーションに応じて「泳ぎ方」を使い分けている

本種を含むクダクラゲ目は、正確にいうとクラゲとは別グループに分けられます。

クラゲは主に、一つの傘状ボディからなる「単体」ですが、クダクラゲは、多数の個体からなる「群体」です。

なので、シダレザクラクラゲの紐状部分に連なるベルのような器官は、一つ一つが生きた個体と言えます。

このベルのような器官は「ネクトフォア(nectophore、水泳ベル)」と呼ばれ、ジェット推進を生み出す重要な部分です。

ネクトフォアは柔軟な開口部から海水の流れを取り込み、ポンプのように伸縮させることで後方への噴流を生み出し、その反動で前進力を得ています。

(ちなみに、後方に付いている触手は摂食や繁殖の役割を担っている)

シダレザクラクラゲ(前半部にネクトフォア、後半部に触手)
シダレザクラクラゲ(前半部にネクトフォア、後半部に触手) / Credit: Sutherland Lab – University of Oregon(phys, 2022)

イカやクラゲなど、ジェット推進を利用する海洋生物はたくさんいるものの、ほとんどは1つのジェットしか持っていません。

一方でシダレザクラクラゲは、10〜20個ほどのネクトフォアを備えており、しかもそれぞれを個別にコントロールできるのです。

たとえば、すべてのネクトフォアの動きをシンクロさせることも、片側(あるいは一部)だけを起動させて、体の向きを回転させることもできます。

ヨットの乗り手が片方のオールだけを動かして、向きを変えるイメージに近いでしょう。

研究チームは今回、これら2種の異なる泳ぎが遊泳スタイルにどんな影響を与え、いかなる進化的利点を持っているかを明らかにしたいと考えました。

そこでチームは、野生のシダレザクラクラゲを捕獲して研究室の水槽内に移し、ビデオ撮影とコンピューターモデルを使って遊泳パターンを分析。

その結果、2種の泳ぎ方はそれぞれ異なる状況に適していることが判明しました。

シダレザクラクラゲの泳ぎをモデリング
シダレザクラクラゲの泳ぎをモデリング / Credit: University of Oregon – Squishy critters are inspiring underwater vehicle design(2022)

まず、すべてのネクトフォアを同期させる”シンクロ泳法”は、スピードに特化しており、速く前進させることで、捕食者から素早く逃げるのに適していました。

しかし、シンクロ泳法は突発的な推進力を生み出すため、多大なエネルギーが費やされます。

一方で、ネクトフォアを個別に動かす”バラバラ泳法”は、より柔軟でコントロール力に優れており、泳ぎにかかるエネルギー効率も非常に良いことが分かりました。

またスピードとエネルギー効率の両方は、ネクトフォアの数が多いほど向上し、およそ12個でプラトー(グラフ上で数値の上下変動がなくなる平坦域)に達しています。

水深50〜600メートルまで移動できる
水深50〜600メートルまで移動できる / Credit: MBARI – Weird and Wonderful: This little siphonophore has a big impact on deep-sea food webs(youtube, 2022)

以上のことから、シダレザクラクラゲはシチュエーションに応じて、スピードに特化した泳ぎエネルギー効率に特化した柔軟な泳ぎを使い分けられると結論されます。

ジェット推進を持っている他の海洋生物では、大抵そのいずれかにしか特化していません。

よってシダレザクラクラゲの複雑かつ精巧な動きは、自然界にインスピレーションを求めるエンジニアにとって有益な情報となるでしょう。

研究主任のケビン・デュクロ(Kevin Du Clos)氏は、こう話します。

「シダレザクラクラゲは、多様な遊泳能力を持つロボットを開発するためのフレームワーク(枠組み)を提供してくれます。

たとえば、水中ロボットに複数の推進器を搭載し、推進タイミングを変えるだけで、効率的に移動させたり、突発的なスピードを生み出すことも可能でしょう」

人類がかつて鳥を見て飛行機を思いついたように、未来的な乗り物の発明には、まだまた生き物から学ぶことがありそうです。

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