原始宇宙のインフラ網「ゴズミック・ウェブ」を初観測!

space 2019/10/08
発見された宇宙網。(青い部分が水素ガス)/Credit:Hideki Umehata/PA

Point

■約115億光年離れた遠方銀河の集団から、それぞれを繋ぐ水素ガスのネットワーク「宇宙網」を観測することに成功した

■初期宇宙においては、銀河やブラックホールの成長材料となるガスの供給路が存在すると予想されていたが、観測による確認は実現していなかった

■今回の発見は、銀河やブラックホールが例外なく宇宙網に沿って分布していることを明らかにするもので、宇宙進化の過程を解明するための重要な手がかりとなる

なぜ宇宙の「銀河ネットワーク」と「人間の脳」はそっくりなのか?

宇宙に浮かぶ天体の数々は、何もない空間に孤独に浮かんでいるように見えます。

しかし、銀河もブラックホールもその形成過程では多量の塵やガスを必要するため、宇宙で孤立無援に存在しているだけでは成長できません。

初期の宇宙では、こうした天体の材料となる水素ガスが、現代の道路網のように各銀河やブラックホールと繋がっていて、材料の供給されていたと考えられているのです。

これを「宇宙網(コズミックウェブ)」と呼びます。

これは理論上は存在が予想されていましたが、初期の宇宙を見るためには遥か遠方の銀河集団を観測するしか無く、非常に弱い水素の輝きを捉えて宇宙網の存在を確認することはとても困難なことでした。

今回研究を報告した国際研究グループは、世界中の大型望遠鏡を利用し、様々な波長で多様な観測を行うことで、世界で初めて遠方の銀河を結ぶ宇宙網の姿を確認することに成功しています。

この研究は、日本の理化学研究所、東京大学、国立天文台、名古屋大学、英国ダーラム大学の研究者らによる国際研究グループにより発表され、米国の科学雑誌『Science』に、10月4日付けで掲載されています。

Gas filaments of the cosmic web located around active galaxies in a protocluster
https://science.sciencemag.org/content/366/6461/97

銀河を結ぶ宇宙のネットワーク

宇宙網のシミュレーション。/Credit:Cosmic Web

100億年以上前の太古の宇宙では、銀河が活発に生まれ育つ時代があったとわかっています。そうした初期宇宙では、私達の住む天の川銀河の数100倍から数1000倍という速さで星を生み続ける銀河も存在していました。

また、銀河の中心では太陽の約1億倍という超大質量の巨大ブラックホールが凄まじい勢いで成長していたと考えられています。

こうした初期の宇宙で銀河やブラックホールが急成長を遂げられたのは、水素を主成分としたガスが「宇宙網」と呼ばれるクモの巣状のネットワークを形成していたためと考えられています。そのガスが凝集して銀河やブラックホールを形成し急速な成長を助けたのです。

宇宙網は地球から100億光年以上離れた活発に星を生み出している銀河集団から確認できると考えられます。宇宙網を観測できれば、そこから初期宇宙の銀河やブラックホールの形成・進化の過程を解明する重要な手がかりが得られるでしょう。

しかし、宇宙網の放つ輝きは非常に微かなもので、最大の集光力を持つ望遠鏡をもってしても観測することは困難なものでした。

複数の望遠鏡を駆使した観測

今回の研究チームはみずがめ座方向の地球から115億光年離れた原始銀河集団SSA22に注目し、宇宙網の検出に挑戦しました。この領域は、活発な銀河やブラックホールが確認されており、宇宙網の検出にも良い候補なのです。

最初にチームはミリ波、X線による観測を行い、活発な銀河やブラックホールの分布を確認しマップの作成を行いました。

観測領域である約400万光年の範囲。18の活発な銀河と巨大ブラックホールが存在している。/Credit:Hideki Umehata/PA

宇宙網は、主成分が水素ガスです。これは銀河などの天体の光を受けて紫外線波長で発光することが知られています。宇宙は膨張しているので、遠方から届く光は、ドップラー効果によって波長が伸びる赤方偏移を起こしています。

つまり、これら水素ガスの輝きは可視光域で観測が可能と予想されるのです。この観測にはすばる望遠鏡が利用されました。すばる望遠鏡は日本の国立天文台がハワイにある富士山よりも高いマウナ・ケアの山頂に建設した望遠鏡で、広視野の可視光観測に威力を発揮します。

しかし、これによって確認できる光は非常に微かなものであるため、さらにヨーロッパ南天天文台がチリの高所に建設したVLT望遠鏡による観測も行われました。これは可視光から近赤外線域で観測を行う望遠鏡です。この望遠鏡の装置では、面分光によって、3次元的な情報まで得ることができます。

こうして、複数の望遠鏡による様々な波長域での多様な観測が実現し、これらの情報を統合して宇宙網の姿がおぼろげながらも明らかになって来たのです。

宇宙網の3次元分布。弱い輝きは青。比較的明るい部分が紫。銀河やブラックホールは赤点。/Credit:Hideki Umehata/PA

こうして確認すると、活発な銀河や巨大ブラックホールは宇宙網のガス分布に沿って存在しており、宇宙網から流れ込んだガスを材料に天体が成長するという宇宙進化モデルの予想は、観測からも支持できることがわかります。

銀河由来の光の照り返しで、宇宙網の水素ガスを見つけるという極めて繊細な観測の成果が、今回の宇宙網初観測を成功させた決めてだといいます。

宇宙でもっとも微弱であり最大の構造と考えられる宇宙網の観測は、宇宙進化の理解に重要な鍵となります。しかし、今回観測されたものは、広大な宇宙網のほんの一部に過ぎないものです。

かつてハッブルは、宇宙が膨張している事実を遠方銀河の赤方偏移を観測することで証明しました。天文学において観測で予想を確認するというのは、非常に重要なステップです。

微弱な宇宙網の光を捉えた今回の観測も、天文学史に刻まれる偉大な功績なのでしょう。

天の川銀河の中心は、すでに人類も存在した300万年前に大爆発を起こしていた

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