超難問「フェルマーの最終定理」証明の最重要人物である日本の数学者が死去

mathematics 2019/05/06
生前の志村五郎氏 / Credit:fme.upc

Point

■360年間解かれなかった数学の難問「フェルマーの最終定理」は、まったく無関係に思われたある命題を証明することで解決されている

■その重要命題が日本人数学者の提唱した「谷山-志村予想」だ

■そんな世紀の難問の解決に寄与した偉大な日本人数学者、志村五郎氏が5月3日89歳で死去した

平成の終わりと共に、一つの時代を見届けるかのように偉大な日本人数学者がこの世を去った。

志村五郎氏の名を知らなくても、数学の難問「フェルマーの最終定理」を記憶している人は多いだろう。

「フェルマーの最終定理」は1995年にイギリス生まれの数学者アンドリュー・ワイルズによって証明されたが、実は「フェルマーの最終定理」は志村氏の提唱した「谷山-志村予想」を証明することで解決している。

志村五郎氏の死去に伴い、氏が解決に大きな貢献をした「フェルマーの最終定理」という難問について、できるだけ分かりやすく振り返ってみよう。

志村五郎氏の訃報については、5月3日にプリンストン大学より発表されている。

「フェルマーの最終定理」をめちゃくちゃ簡単に説明する


「私はこの命題について、真に驚くべき証明を見出したが、それを記すにはここはあまりに余白が足りない」

360年前、フランスの数学者ピエール・ド・フェルマーはたったこれだけのメモを問題の脇に書き残してこの世を去ってしまった。

このツイッターにも投稿されていそうなフェルマーのメモは大変話題になり、以後この命題は「フェルマーの最終定理」と呼ばれることになる。

「フェルマーの最終定理」は、一見すると義務教育で教わる「ピタゴラスの定理」の拡張版だ。なんだか簡単に解けそうな問題にも見える。

この命題の「n=2」の場合が、直角三角形の辺の長さを求めるいわゆる「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」である。

Credit:Note&Board

しかし「n」が2なら無限に解が存在するというのに、この「n」が3以上の数字になると「x,y,z」を満たす解は一切存在しなくなってしまう。これがいわゆる「フェルマーの最終定理」の命題だ。

この問題を最終的に解いたアンドリュー・ワイルズは10歳の頃、図書館でこの問題を見つけて「俺なら解けるんじゃね?」と思ったようだ。それはそれでとんでもないお子様だが、しかしこれが大きな罠だった。

「n」が3以上の場合というのは、つまり無限に存在する「n」について、それぞれ解が無いと証明しなければならないわけで、これは非常に困難な証明なのだ。

以後30年以上、ワイルズはこの問題の呪縛に捕らわれることになる。

世紀の難問に光を与えた日本人

「すべての楕円曲線はモジュラーである」

またまた一般人には意味不明なこの一文が、「谷山-志村予想」または「志村-谷山-ヴェイユ予想」の主張だ。

ちなみに数学における「予想」とは、真だと考えられるが、証明することはできていない命題のことだ。「予想」が証明されるとそれは「定理」になる。

だから「フェルマーの最終定理」も厳密には「予想」になるわけだが、そこは証明できたと断言したフェルマーに敬意を払っておこう。

楕円曲線とは数論(数の性質について論じる数学の分野)における理論の一つで、解くと解が数列のような形で複数得られる。

一方モジュラーというのは、簡単に言うと四次元空間の無限の対称性について論じたものだ。

そんな説明じゃさっぱり意味がわからないよ! という人は、下のエッシャーの絵画「サークルリミットⅣ」を見てほしい。

Credit:mcescher

この絵はモジュラーの理論を使って二次平面上に複雑な対称性を持つ模様を描いているので、この絵を眺めて「なんかこういう不思議なパターンを定式化するお話なんだ」と思ってもらえればいいと思う。

この楕円曲線とモジュラーはそれぞれの解がよく似た数列のパターンで得られるのだが、「谷山-志村予想」はこのよく似た解が似ているのではなくて、同じなのだと主張したのだ。

数学のまったく異なる領域の問題が、実は同一の概念を論じているというこの主張は、とても大胆で驚くべきものだった。

最初にこのアイデアを閃いたのは、呼称の中に名を連ねる谷山豊だった。しかし谷山はこのアイデアを思いついた数年後に自殺してしまう。盟友の死を嘆きつつ、そのアイデアを定式化したのが志村五郎だった。

「谷山-志村予想」は一般的にはあまり知られる機会のない理論だが、その後の数々の数学者たちのよる研究で、「フェルマーの最終定理」と結び付けられることになる。

フェルマーの最終定理は楕円曲線に変換可能であり、その解に対応したモジュラーは存在しない事が示されたのだつまり「谷山-志村予想」が正しければ「フェルマーの最終定理」はその命題の通りに解を持たないことになる。

二人の日本の数学者によって生み出された数学理論は、このとき長年の数学の難問の解決と直接結びついたのだ。

異なる数学の世界をつなげ、360年来の難問を解き明かした数学者たち

アンドリュー・ワイルズ氏 / Credit:heikegani

無責任なフェルマーの証明宣言から360年。この難問は大勢の数学者たちの努力と挫折の末、1995年にアンドリュー・ワイルズによって「谷山-志村予想」を証明するという形で最終的解決を迎えた。

そこには数学の歴史を彩る様々な深いドラマがあった。

今、そんな数学の偉大な歴史に名を刻んだ一人の日本の数学者の人生が幕を下ろしたのだ。

50年以上前、自殺してしまった同僚谷山豊氏の偉大な閃きを定式化し、「フェルマーの最終定理」という数学の難問解決に寄与した志村五郎。

彼は天国で、谷山氏に良い報告をすることができただろう。

「フェルマーの最終定理」を巡る数学者たちのドラマに興味を持った人は、ぜひこの機会に『サイモン・シン著 フェルマーの最終定理 (新潮文庫)』を読んでみてはいかがだろうか。

 

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