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鏡像の並行世界、ミラーワールドを証明する実験! この世界裏設定多すぎ…

space 2019/07/06
Credit:@guigurui

Point

■我々の世界には、物質と反物質が存在していると言われるが、さらにこれらと鏡合わせの対称性を持った鏡像物質(ミラーマター)が存在すると言われている

■鏡像物質は、理論上、物理学の4つの力の内、重力以外とは相互作用を持たない、そのため見えない重力源である「暗黒物質」の正体とも言われている

■この不可解な鏡像物質の存在を、中性子の寿命の謎を利用して明らかにしようという実験が、現在計画されている

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量子論によると、我々の世界には鏡合わせの見えない並行世界が存在しているという。

ラノベの設定でも垂れ流してんの? と言いたくなってしまうが、それを真面目に研究している物理学者は大勢存在している。

こうした考え方は、鏡に写した場合の量子現象が実は現実の物理法則と異なって見えるという問題から生まれたものだ。

この場合、我々の世界とは鏡合わせに左右が反転した鏡像の粒子が存在することになる。それを物理学ではミラーマターと仮定している。

そんなものがあるとして、どうやって証明するんだ? という感じだが、実は今、鏡の並行世界の存在を証明しようという物理実験が計画されているのだ。

この研究について理解するためには、「ミラーマター」と「中性子の寿命の謎」について理解する必要があるだろう。この記事では、この2つの問題について解説していく。

この研究に関する論文は、現在コーネル大学arXivに掲載されており、一連の実験を今年の夏オークリッジで実行することが計画されている。

New Search for Mirror Neutrons at HFIR
https://arxiv.org/abs/1710.00767

鏡合わせの並行世界を作る「ミラーマター」とは?

鏡像物質(ミラー・マター、またはアリス・マター)とは、物理学における対称性の問題から生まれた理論上の物質だ。

物理学の対称性とは、ある変換をしても現象や法則に変化が無いということを意味する。

例えば、バスケットボールをドリブルしている映像を逆再生した場合を考えてみよう。ボールの運動だけに着目した場合、通常再生と見分けることは難しいだろう。これは時間に対して物理法則が対称性を保っているためだ。

同じことを今度は鏡に映してやってみよう。鏡に映るドリブルと実際にドリブルしているボールの運動に違いはあるだろうか? やはり無いように見える。この場合、鏡像の関係でも物理法則は対象性を保っていると言えるのだ。

だが、本当に鏡に映る世界は、我々の現実と物理法則が一致しているのだろうか?

実はこれが違っていた。鏡の世界では電磁石の磁極が逆になってしまうのだ。

これはコバルトの核分裂から発見された問題である。

コバルトが核分裂を起こすとき、極低温だと原子核からは電子がN極に向かって揃って放出される。この現象は鏡に写すと鏡像として成立しなくなってしまうというのだ。

Credit:いきいき物理 マンガで実験

こうした問題はパリティ対称性の破れと呼ばれる。この問題は、世界の粒子全てがパリティの反転した鏡像のパートナーを持っていると仮定して理論の拡張をすると解決できる。こうして登場したのが鏡像物質という新しい素粒子だ。

釈然としない部分もあるかもしれないが、物理学には計算する都合上、どうしても必要となってくる粒子というものがある。ほとんどの粒子はそうした計算の都合で予言され、最終的には予想通りに発見されている。

鏡像物質はまだ発見されてはいない。もし見つかれば、現実世界に存在する粒子・反粒子全てに対して反転して存在することになるので、世界を構成する粒子の種類は一気に2倍に膨れ上がってしまう。物理学者たちにとっても、できれば事実であってほしくない物質かもしれない。

重力以外とは相互作用を持たない鏡像物質

また、この鏡像物質は理論上では物理学の4つの力のうち、重力以外とは相互作用を持たないと考えられている。

素粒子には、物質を構成する元となるフェルミオンと、力を伝えるボソンが存在している。このボソンについても鏡像世界では全て反転したミラー粒子になってしまうというのがその理由だ。

Creedit: 信州大学

私たちが物を見るために必要な光は、光子という電磁力を伝えるボソンだ。これも鏡像物質には、ミラー光子しか作用しないため、光子の反射で物を見ている我々の目には観測することができない。

重力にもグラビトンというボソンがあるはずだが、これはまだ見つかっておらず、しかも重力はちょっと別格の存在のようだ。そのため、ミラーグラビトンは存在しないようだ。

こうなると鏡像物質は、目には見えず電磁波などの観測も一切できないけれど、重力の影響だけは現実の世界に与えている物質ということになる。

おっと、なにかそんな物質に心当たりがないだろうか?

そう、宇宙の質量の大半を占めると言われている暗黒物質だ。

実は暗黒物質の正体は鏡像物質ではないかという予想がある。確かにこの考え方ならば辻褄が合うため、もし鏡像物質を発見できたならば、暗黒物質の謎も解明されることになるかもしれない。

中性子の寿命に関する謎

物理学の謎は色々あるのだが、一般的にはあまり知られていない。

その内の1つが、中性子の寿命の謎だ。

中性子、お前死ぬのか? と思うかもしれないが、中性子は原子核内では安定しているが、原子核の外に出され、自由中性子になると15分程度で崩壊して電子や反ニュートリノを放出しながら陽子に変換されてしまう。

これをβ崩壊という。

Credit: astro-dic

自由中性子がβ崩壊を起こして陽子に変わるまでの時間がいわゆる中性子の寿命だ。

現在、中性子寿命は二つの実験手法によって、非常に高い精度で測定されている。

一つは中性子を磁場中に閉じ込めて崩壊する頻度を測るもので、その寿命は879.4±0.6秒(大体14分39秒)だ。

そしてもう一つの実験は、中性子をビームにしてパイプ中を飛行させ、その崩壊頻度を測る方法で、寿命は888.0±2.0秒(大体14分48秒)とされている。

これらの実験結果はどちらも精度が高く、複数の研究チームによりそれぞれ何度か測定が個別に行われているのだが、なぜか約9秒近い差が出てしまっている。

物理学の話題となると、普段はナノ(10億分の1)秒単位で時間がずれても大問題と言われることが多い。9秒なんて、素粒子どころか小学生が50メートル走れる時間だ。

いくらなんでもずれ過ぎだ。

物理学者たちはどちらの実験についても信頼性は高いと考えており、これは非常に不思議な問題となっている。

なぜ、中性子の寿命は、測定方法によってこんなにもずれが出てしまうのだろうか?

鏡像世界に取り込まれた中性子

Credit: depositphotos

なんだか世にも奇妙な物語のネタみたいだが、実は中性子の寿命の問題は、中性子が鏡像世界に取り込まれミラー中性子に変異してしまったためではないかという説が浮上している。

寿命で消えたのではなく、ミラー中性子に変わったのを勘違いしてカウントしているために、結果がずれるというわけだ。

実際こういった現象は別の実験で確認されており、中性子が忽然と実験装置の中から消えてしまうことがあるというのだ。

中性子実験の不思議な誤差は、気づかぬうちに物理学者たちが見えない鏡の世界のポータルを開いてしまったために起こっているのかもしれない。

ミラーワールド「鏡像世界」を証明せよ

そこで今回提案されているのが、原子以下の粒子が通過できない電磁力の壁で仕切られたトンネルに大量の中性子を放って衝突させるという実験だ。

十分な数の中性子を用意すれば、この実験によって一部はミラー中性子に変わり、その後また元の中性子に戻ってくると考えられている。

その場合、現実世界の電磁力とは相互作用を持たないミラー中性子は、鏡像世界を介して電磁力の壁を通り抜け、存在するはずのないその向こう側で検出される可能性がある。

この実験は2019年の夏に実行される予定だ。

果たして本当に予想通りの結果が得られるのだろうか?

しかし、ミラー粒子を証明できれば、長年の宇宙の謎である暗黒物質も説明をつけることが可能になる。それどころか、この宇宙には目には見えない鏡像世界が存在しており、そこにはミラー粒子で作られた銀河や惑星まで存在している可能性があるというのだ。

場合によっては、そんな鏡の世界には暗黒物質だけでなく、暗黒生命と呼べるものさえ存在するかもしれない。そう語る物理学者までいる。

さすがに暗黒生命は言い過ぎかもしれないが、見えない世界が隣りにあるというのは、なかなかのロマンだ。いや、恐怖かな。

【2019.7.11】
記事の内容に一部誤りがあったため、修正して再送いたします。

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