あのコペルニクスも見たことがなかった!? 水星の面白ポイントをふまえて観測に挑戦しよう

science_technology 2020/02/13

先日の記事、「星のソムリエ®が選ぶ、今月の星の見どころベスト3」でご紹介したとおり、先週4日から今週16日にかけて水星が観測チャンスを迎えています。

星のソムリエ®の同期に話したところ、「初めて見て感動!!」という反応が次々にきました。水星って、ぞんな星好きですら「見たことがない」人が多いんです。

地動説を唱えたことで有名なコペルニクスですら、水星を一生見たことがなかった、なんて逸話があるほど。

高度が上がらず、夜明けか日没後のわずかな時間しか見えないので、あらかじめベストな日時を調べておいて狙わないと、到底見ることがかなわない惑星です。

金星と並ぶ水星を写真にとらえた

今回は、空気が澄んでいて星が見えやすく、日の沈むのが早くて観測にのぞめる時間が長い冬の時期と、高度がもっとも高くなる東方最大離角のタイミングがあわさりました。今年度ではもっとも観察しやすいかも。

こちらは筆者が2020年2月9日に撮影した、金星と並ぶ水星です。

Credit: ofugutan(2020年2月8日撮影)上にある明るい星が金星で、中央のビルの右斜め上にあるのが水星

今回の水星の明るさはマイナス0.4等級なので、観測には十分に思えます。しかし、太陽の明るさが残っているのと、空の低い位置に見える星は地球の大気の影響で、実際の明るさよりも暗く見えてしまいます。

徐々に空は暗くなり、星は高度を下げるので、一番見えやすいときを見逃さないようにしましょう。双眼鏡がなくても肉眼で見えますよ!

中心にはさっき沈んだ太陽、太陽の周りをまわる、水星、金星、今立っている地球、と順番に公転軌道を円周でイメージしていくと、太陽系の一員として地球があって、その上に自分はいるのだなあと感慨深く感じられるはず。

Credit: Pixaby

今回は、そんな地球と近距離にあるのにイマイチ注目されにくい「近くて遠い星」、水星にスポットをあてて面白いエピソードをご紹介します。

水星ってどんな星?

Credit: NASA

水星は太陽系でもっとも小さな惑星です。地球のおよそ5分の2ほどの大きさで、重力は約3分の1重さはたったの18分の1ほどしかありません。

いっぽう、太陽系の惑星のなかで地球の次に密度が高く、直径の3分の2から4分の3にもなる巨大な核があると考えられています。

英語名は「Mercury」。ギリシャ神話の世界を飛び回って情報を伝達する神々の使者、ヘルメス(Hermes)からきています。ローマ神話ではメルクリウス(Mercurius)で、英語だとMercuryになるわけです。

ヘルメスは神々のなかでもっとも賢く、すばしっこい神。水星は公転周期が短く、明け方や夕方のわずかな時間にしか見えない素早い動きから、その名を与えられました。

実は地球の1番近くにある惑星

太陽系の惑星の順番といえば、「水、金、地、火、木、土、天、海」。地球の隣は金星と火星です。金星のほうが火星よりも地球に近い軌道をまわっているので、一番地球に近いのは金星だと思ってしまいますよね。

ところが、それぞれの星はたえず公転しており、スピードもさまざま。一定の距離間をキープしているわけではありません。

水星は公転周期が短いので、頻繁に地球と近づきます。こちらの動画をご覧ください。各惑星の公転軌道の平均を見ると、水星は地球から一番近い星、といえるわけですね(1分28秒頃から見るとよくわかります)。

Credit: Tomment Section / YouTube

水星の生活は1日が2年で、四季はない

以前の金星の記事で、「金星の1日は1年より長い」という話をしましたね。まだ今日が終わってないのに、1つ年を取ってしまった…な金星の生活ですが、水星もなかなかのもの。

水星の公転周期は約88日、自転周期は約59日で、太陽の周囲を2回公転する間に3回自転します。

水星で生活するとして、1日を「太陽日」で考えましょう。太陽が1番高い位置に達して、次に高い位置に達するまでを1日とすると、水星での1日は、約176日になります。

太陽のまわりを1回転する公転周期(1年)は88日なので、水星の1日=水星の2年という計算ですね。

しかも、88日間は昼間で太陽が照りっぱなし、次の88日間は夜で日が差さない日が続く(昼間88日+夜88日でまる1日=176日)のを繰り返します。

このことと、重力が小さいので大気がわずかしかないことが、水星の昼間の温度は最高で約430度、逆に夜はマイナス160度という、昼夜で大きな温度差を生み出しています。

なお、昼間は非常に暑くなるにもかかわらず、地軸の傾きが0度なので四季はありません。極に近いあるクレーターには1年中太陽光があたらないので、氷の存在が確認されています。

日の出がフェイントをかける?場所がある

また、水星での生活といえば、特定の場所で日の出の途中で太陽が逆行して一度沈み、その後再びのぼる現象が見られるのだそう。公転軌道が楕円形のため、太陽にもっとも近づく前後4日間は水星の軌道速度と自転速度が等しくなるために起こるとのこと。

Credit: depositphotos

直径の4分の1以上に相当するクレーター

水星の表面はクレーターでいっぱいです。彗星や隕石の衝突を軽減する大気がほとんど無いですしね。

そんななかで水星の直径の4分の1を占める「平原」が目に付きます。カロリス盆地と呼ばれ、直径1,300kmもあります。およそ36億年前に、直径100キロメートル程度の天体の衝突によって作られたというのが一説。水星を観光するなら、1番の見どころですね。

Credit: NASA カロリス盆地

ほかに水星特有の地形として、リンクルリッジと呼ばれる高さ約2km、距離は最長クラスで約500kmになる断崖がいくつもあります。水星ができたばかりのときは熱かった核が、冷えて収縮したときに星の表面とともに縮んでシワのようになったのではと考えられています。

小さい星なのに、固有の磁場がある謎

自転速度が遅いのに、水星は地球の1.1%にあたる比較的強い磁気圏を持っています

地球や木星に磁場があるのは、硬い金属の核のまわりに液体金属が存在する外核があって、それらが流動して電流が生じ、磁場が形成されるからです。

水星は小さいので、形成後急速に冷えて中心の核も早く固まったため、核に液体部分を持たないと考えられ、つまり磁場はないと思われていました。

それが1970年代、探査機マリナーによって磁場があることが発見され、2002年からの電波望遠鏡による複数の観測や、探査機メッセンジャーの探査を経て、内部に液体部分があって固有の磁場があることがわかりました。また、地球ではほぼ中心にある「棒磁石」が中心から北にずれている新たな謎が見つかりました。

Credit: 九州大学(プレスリリース)

この謎の解明は、昨年九州大学が行ったばかり。中心核内部の磁場が自己調整機構によって対流をコントロールすることで、自発的に生成・維持されていると考えられるそう。地球と比較することで、両方の星の起源や進化について研究が促進しそうで楽しみですね。

水星の隕石が買える?

水星について知ると興味がわいてくるもの。「アポロの月の石」みたいに、水星の石が入手できたらロマンじゃないですか?

地球に飛来する隕石を通して、月の石や火星の石は一般の人でも買うことができ、筆者も所持しています。

そして、NWA7325という、水星から飛来した可能性があるという隕石が市販されていますよ。

実際のところ、母天体ははっきりわからないけれど、水星よりも小惑星由来の可能性が高そうという報告が2018年にありますし、聖徳学園大学のレポートでは、太陽系の初期にできた母天体からきたもので、水星由来ではないと明言しています。

それでも、「水星の石かもしれないなら欲しい」という方はチェックしてみてはいかがでしょうか?

Credit: meteoritestudies.com NWA7325隕石

水星は、今月の16日までは観測に挑戦するチャンス。ぜひ、自分の目で見てみてください。「コペルニクスも見ていないって言われる水星を見られた!」なんて自慢できるかもしれませんよ。

 

reference: Tomment Section / YouTube, 国立科学博物館, 九州大学, ギャラリーメイスン, 聖徳学園大学/ written by ofugutan

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