地球を襲う小惑星の軌道をそらせ! 強力イオンエンジンが準備完了

technology 2020/03/30
Credits: NASA/Bridget Caswell

もし地球に小惑星が落下することになったらどうしましょう?

コロナどころではなく人類は終了です。

そんなわけで、NASAを含む世界の研究機関は共同で、もしものときに備えて危険な小惑星の地球衝突を防止するテクノロジーの研究を進めています。

そして、実際に小惑星まで行って、小惑星の運動を変化させるという実演ミッションが現在計画中なのです。

それがDouble Asteroid Redirection Test (DART)ミッションです。

DARTミッションとは?

連星小惑星に向かい小さい方の小惑星を偏向させる。/Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory

このミッションでは、地球に近い連星小惑星Didymos(ディディモス:ギリシャ語で「双子」)に向かい、小さい方の小惑星の軌道をそらすというものです。

ディディモス連星小惑星には、直径約780メートルの大きいディディモスAと、直径約160メートルの小さなディディモスBがあり、DARTミッションがターゲットにしているのは小さいディディモスBです。

このミッションでは、「キネティック・インパクター・テクニック」と呼ばれる手法をテストします。これは目標の小惑星に探査機をぶつけて軌道を偏向させるという方法です。

Credit:Dart Moon Collision/NASA Video

計画では2021年7月に探査機を打ち上げ、地球から1100万キロメートルの範囲内にいるディディモスへ、9月22日には到達することを目標にしています。

もし小惑星が地球にぶつかるコースを飛んでいる場合、その軌道上には重力キーホールと呼ばれる領域が存在します。ここを超えると、小惑星の地球衝突を回避することは不可能です。

そのため、小惑星の軌道をそらす計画では、小惑星発見後、重力キーホールに到達される前に速やかにミッションを完了させる必要があります。

つまり、このミッションで鍵を握るのは、1100万キロメートルという距離を数ヶ月間で航行可能で、小惑星にぶつけて軌道をそらすこともできる、強力な推進力を持ったエンジンの存在なのです。

次世代の強力なイオンエンジン「NEXT-C」

Credits: NASA

今回報告されているのは、そんなミッションの要となる次世代イオンエンジン「NEXT-C」がテストも完了し搭載準備が整ったという話題です。

探査機「はやぶさ」の推進システムもイオンエンジンを使っていますが、「NEXT-C」はNASAのNSTARイオンドライブなど従来のものよりも、3倍強力な推進システムだといいます。

イオン推進の概念図。/Credit:Wikipedia Commons,朝彦

イオンエンジンでは、推進力を得るために、静電力(クーロン力)を利用しています。

電気的に中性なガスだと静電力が働かないため、エンジン内ではガスをプラズマ化させています。そこに電界を与えるとイオンが加速され、推進力となるイオンビームが放出されるのです。

こうしたエンジンの燃費効率には比推力(単位は秒)という値が使われます。これは単位質量の推進剤に対して、単位速度を持続させられる時間を表していて、要はそのエンジンがどれだけ効率よく長く飛行できるかという目安になります。

通常人工衛星や探査機に搭載されている化学推進では、比推力はおよそ300秒が限界とされています。

しかし、イオンエンジンでは、この比推力が3,000秒と一桁上の領域にあります。

さらに今回話題の「NEXT-C」の比推力は4,190秒と、さらに高い領域にあるのです。

「NEXT-C」テスト成功後に、スラスタから電源処理ユニットを取り外している様子。/Credits: NASA/Bridget Caswell

小惑星はそらせるのか?

ディディモスBにこの「インパクター(衝突装置)」が衝突した場合、小惑星の軌道速度を毎秒約0.5ミリメートル変化させると予想されています。

これにより、ディディモスBの自転周期が変化し、それは地球上の望遠鏡からも検出可能になります。

また、小惑星の表面には幅約20メートルのクレーターを残すことになるそうです。

Credits: NASA/Johns Hopkins Applied Physics Lab

この科学の粋を尽くしたDART宇宙船は、衝突時に破壊されてなくなってしまいますが、ESAはこの実験に伴って、2024年にはヘラと呼ばれる探査機で、小惑星に与えられた影響を調査しに向かい、この一連の装置が果たした成果を確認するといいます。

これでもう、いつ小惑星が地球を襲っても安心ですね。

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