木星の衛星「エウロパ」は暗闇でも輝く!?

エウロパが太陽に背を向けた裏側でどのように光っているかを示した画像。
エウロパが太陽に背を向けた裏側でどのように光っているかを示した画像。 / Credits: NASA/JPL-Caltech
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木星を周回する衛星エウロパは、木星の強力な磁気圏によって絶えず強力な放射線を浴びています。

11月9日に科学雑誌『Nature Astronomy』で発表された新しい研究は、そんなエウロパ表面の氷が放射線を浴びると、組成によってそれぞれ異なった煌めきを放つという発見を報告しています。

木星の衛星は、新月の夜でも光り輝いてみることができるようです。

>参照元はこちら(英文)

エウロパ表面の謎

エウロパの表面画像。
エウロパの表面画像。 / Credit: NASA/JPL/University of Arizona/University of Colorado

木星には約80もの既知の衛星が存在していて、エウロパはそのうちの1つです。

このエウロパの興味深い点は、その内部にあります。エウロパの表面は氷で覆われていて、その氷の地殻の下には巨大な液体の海が隠されていると科学者たちは予想しているのです。

広大な海の存在は、地球以外で太陽系から生命を発見できる大きな可能性を示すものです。

この可能性を調査するために重要になるのが、エウロパの表面はどういう組成をしているのか? ということです。

エウロパの表面と地下に隠された海の想像図。
エウロパの表面と地下に隠された海の想像図。 / Credit: NASA/JPL-Caltech

エウロパの表面は氷で覆われていますが、その化学的な性質などについてはまだよくわかっていません。塩分を含んだ塩水の氷であるという予想はされていますが、それを明らかにする証拠はまだ見つかっていないのです。

強い放射線(高エネルギーの荷電粒子)が塩分の豊富な氷の表面に衝突した場合、相互作用によってそこでなんらかの物理的、化学的プロセスが発生するだろうという予測はあります。

そのため、ここから表面の組成を明らかにできるかもしれないと考えられていますが、そのプロセスがどういうものなのかはまだ明確ではありません。

また、ハッブル宇宙望遠鏡などの世界の優秀な望遠鏡たちも、まだその手がかりとなるようなデータは記録できていないのです。

実験室で偶然発見された放射線を浴びた氷の輝き

木星衛星エウロパの探査機「エウロパ・クリッパー」のイメージ画像。
木星衛星エウロパの探査機「エウロパ・クリッパー」のイメージ画像。 / Credit: NASA/JPL-Caltech

強い放射線があたった際のエウロパ表面の反応は、今後打ち上げが予定されているNASA探査機「エウロパ・クリッパー」によって間近で観測できる可能性があります。

エウロパ・クリッパーは木星を周回しながらエウロパ上空をフライバイして、氷の組成や内部の様子を詳細に調査し、生命の生存できる可能性を模索することを目的にしています。

打ち上げは今後10年間のうちのいつかという計画。

なので、今のところ研究者たちにできるのは、エウロパ・クリッパーが調査に行ったとき、木星の強力な磁気圏から高エネルギー電子放射を受けたエウロパ表面が、どのように見えるのか実験室でシミュレーションしておくことです。

そこで、今回の研究チームは、実験室でエウロパ表面を模倣した水氷のコアに、木星の電子放射を模したMeV(メガエレクトロンボルト)の電子を衝突させるという実験を行いました。

エウロパの表面は、氷と硫酸マグネシウムや塩化ナトリウムなど、地球上でも一般的に知られている塩との混合物だと推測されています。

最初チームは単純なH2O の氷に電子ビームを照射しました。すると電子ビームのあたった氷は可視で輝きを放ちました。

これはそれほど驚くことではありません。強い放射線を浴びた分子内では電子が高いエネルギーを獲得しますが、すぐに安定した低エネルギーの状態へ戻ろうとします。その際、過剰なエネルギーを可視光として放出するのです。

実験の様子。MeVの電子をエウロパ表面氷に似せたサンプルに当てている。このとき氷はくらい中でも輝きを放つ。
実験の様子。MeVの電子をエウロパ表面氷に似せたサンプルに当てている。このとき氷はくらい中でも輝きを放つ。 / Credit:Gudipati et al., Nature Astronomy,(2020),Nature Research Astronomy Community

次に研究者たちは、NaCl:H2O(食塩と水)を50:50の割合で混ぜた塩水を100K(約-173℃)で凍結した氷に電子ビームを照射してみました。 ここで予想外のことが起こりました。

氷は最初の電子ビーム照射より鈍い輝きを放っていたのです。組成によって高エネルギーの電子放射による氷の輝きが変わることは、今まで知られていませんでした。

研究者たちは鈍く光る氷を凝視して、「これ絶対さっきと違うよね? 新発見だよね?」と声を掛け合ったそうです。

エウロパは夜の面で光り輝く

エウロパが太陽に背を向けた裏側でどのように光っているかを示した画像。
エウロパが太陽に背を向けた裏側でどのように光っているかを示した画像。 / Credits: NASA/JPL-Caltech

夜空に輝くは、私たちにとって珍しいものではありません。それは太陽の光を反射して輝いています。しかし、エウロパの輝きはまったく異なるメカニズムによって引き起こされています。

太陽の光が陰った三日月や新月の暗い面が、常に光り輝いている月を想像してみてください。エウロパはそんな風に見えると予想されるのです。

さらに今回の実験はその輝きが、表面の氷の組成によって異なっていることも明らかにしました。エウロパは、氷の組成によってわずかに緑になったり、または青や白い光を放ち、明るさの程度も変わってくるのです。

こうした違いが見分けられることは、今回の研究者たちも実験をするまで期待してはいませんでした。

実験から偶然発見されたこの事実を利用すれば、エウロパ・クリッパーの調査によって、エウロパ表面の組成を分析することができ、生命の可能性についても模索できるだろうといいます。

いずれ、太陽光の反射ではないエウロパの不思議な輝きを撮影した画像が見られるかもしれません。

【編集注 2020.11.12 09:30】
記事内容の誤字について、修正して再送しております。
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