ミノにプラスチックを消化できる微生物を発見!
ウシは「反芻(はんすう、rumination)」という一風変わった摂食方法をとります。
これはまず、口の中でよく噛んだ食物を飲み込んでミノに送り、部分的に消化した後、再び口に戻して咀嚼を繰り返すというものです。
反芻はウシの他に、ヤギやヒツジ、キリンなどの哺乳類が行います。
![反芻のルート(紫〜赤〜青〜黒)](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/07/06361e1c439feca129e81797739bcead.jpg)
研究チームは、ウシのミノに潜む微生物の中に、ポリエステルの消化能力を持つものがいるのではないかと考えました。
というのも、草食動物であるウシは、植物がつくる天然のポリエステル「クチン」を多量に摂取しているからです。
クチンは合成ポリエステルであり、ペットボトルや合成繊維に使われる「ポリエチレンテレフタレート(PET)」と化学構造が似ています。
クチンは、植物の表皮を覆うクチクラという膜を構成しており、トマトやリンゴの皮に多く含まれています。
菌類がこうした植物に侵入するには、クチクラを切断する消化酵素(クチナーゼ)をつくり出さなければなりません。
このことから、ウシのミノがポリエステルを分解できる微生物の供給源になっている可能性が高いと予想されるのです。
![ミノ液で3種のプラスチックの分解に成功](https://nazology.net/wp-content/uploads/2021/07/Depositphotos_52940845_s-2019-2-900x600.jpg)
そこでチームは、ミノから採取した液体中の微生物を1〜3日間培養し、プラスチックをどの程度分解できるかを実験しました。
その結果、ミノ液の微生物叢は、PETだけでなく、レジ袋に使用される「ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)」と、植物由来の「ポリエチレンフラノエート(PEF)」を含む3種のプラスチックの分解に成功したのです。
チームは次に、プラスチックの分解に関与した微生物を特定するため、ミノ液からDNAを採取し分析。
すると、約98%はバクテリアの仲間で、最も多かったのはシュードモナス属でした。また、自然下に広く存在するアシネトバクターも多分に含まれていました。
両者は過去に、合成ポリエステルの分解能力を持つことが確認されています。
同チームのドリス・リビッチュ氏(ウィーン天然資源・生命科学大学、University of Natural Resources and Life Sciences, Vienna)は「今後、ミノ液中の微生物の種を完全に把握し、プラスチック分解にどのような酵素を使っているかを明らかにしたい」と述べています。
結果次第では、ウシのミノから直接採取しなくても、プラごみを効率的に分解できる酵素を大量生産できるようになるかもしれません。